献花台に手向けられた花束には珠生ちゃんあての手紙が添えられていた

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「ほかの友達とも“まさかあいつが”って話をして、みんなびっくりしていました」(高校の同級生)

【写真】容疑者の顔と騒然とする現場

「もう、ちょっと信じられない……ですね。あの子が……という感じですね」(容疑者の勤務先社長)

「弟は顔面蒼白で“動揺が隠せない”って言っていました。やんちゃでもないし、いい子。本当にいい子」(弟が容疑者と小・中の同級生だった女性)

容疑者と被害者宅は徒歩2分

 新潟県新潟市で小学2年生の女児、大桃珠生ちゃん(7)が殺害された事件。JR越後線の線路に遺体を放置し、列車にひかせた死体遺棄、死体損壊容疑で市内の電気工事会社に勤務する会社員、小林遼容疑者(23)が逮捕されたが、容疑者を知る人物は一様に、冒頭のような反応を示した。

 小林容疑者の運転する黒の軽乗用車が下校途中の珠生ちゃんとぶつかったのは7日午後3時過ぎ。その後、珠生ちゃんを車内に連れ込み、首を絞めるなどして殺害した。

 その翌8日午前、警察から勤務先に電話が入ったという。

「“小林遼君はおたくの社員ですか? 出社していますか?”という内容で、総務が“出社していません”と対応しました」(前出・勤務先社長)

 県警幹部は「捜査上、コメントは控えます」と容疑者に目星をつけた時期について口をつぐむが、勤務先には連日、出社確認の電話をかけ続けた。会社側が電話の意図を質すと、

「“事件があったから現場近くの人、ひとりひとりすべての人を調査しておりますので”ということでした」(同社長)

 容疑者と珠生ちゃんの自宅は直線距離で約80メートル、2分も歩けば到着できる近さにある。

 容疑者の両親、姉、弟の一家がそこに引っ越してきたのは今から約20年前のこと。

「あそこは容疑者の母親の実家のあった場所です。おばあさんもおじいさんも亡くなっていますが、生前、孫たちが一緒に住んでくれると、うれしそうでした」(古参の住民)

 別の住民は、

「容疑者も姉弟もまじめで、あそこの家はみんなまじめ」

 とトラブル臭のない家であることを強調する。

 容疑者は、珠生ちゃんの通っていた小針小の卒業生。地元の小針中に進んだ。

 娘が小・中学校の同級生だったという母親は、容疑者の雰囲気をよく覚えている。

「おとなしくてかわいい感じ。女の子みたいにおしとやかな印象でしたね。普段はわりとボソボソっとしゃべるタイプでしたが、会えばちゃんとあいさつもしてくれましたよ。

 女子生徒からは“はるはる”って呼ばれて親しまれていました。ほんわかするというか、ゆるキャラみたいな感じですかね」

 小・中学校の同級生だった娘を持つ別の母親は、

「おっとりした子っていう印象しか覚えてないですね。中学のときは、ロボコン部(科学技術部の通称)で活躍したことは聞いています」

 と振り返る。

“まじめで普通” ではない一面を見た

 実は小針中の人気は高く、

「進学率がよくて、県下でトップの進学校の新潟高校に、1クラス分くらいの生徒が進学します。珠生さんの家族も、もともとは別の地域に住んでいたのですが、子どもの将来のことを考えて小針に引っ越してきたと聞きました」(孫が小針小に通う60代の女性)

 容疑者は新潟高校には進まず、ロボコン部に入部するほどメカ好きだったこともあり、県立の工業高校に進学した。

 容疑者宅の近隣に住む60代の主婦が、その理由を話す。

「容疑者は3人姉弟の2番目で、お姉ちゃんが大学に進学し、下にも弟がいるので進学はあきらめて、手に職をつけるために資格の取れる工業高校に進学したと聞きました」

 卒業後、1度も会っていないという高校の同級生は、

「逮捕されたときに映像を見ましたが、見た目も雰囲気も、高校のころの遼のままでした」

 と、あまりにも変化のない様子をまずは指摘する。

「髪型も服装もあまり気にかけるようなタイプではないですね。上履きのかかとも踏まずにはいていたし、いつもきっちり制服を着ていました」

 とまじめな外見だったことをつけ加える。

 さらに学力と性格について、

「あまりいいほうではなく、追試を受けた科目もあったと思う。まじめだけど勉強はできないっていうやつです。なので卒業後の進路で進学はないな、と思っていました」

 とまずは学力診断。続けて、

「しゃべるほうだけど、言葉につっかえる感じがありましたね。でもクラスメートとは仲よかったので、いじめとかはなかったです。ただ強めにいじられることはありましたね。ほかにもいじられるメンバーはいましたし、遼もやられっぱなしではなく、いじる側に回ることがありました」

 まじめで普通。周囲がそんなふうに見ていた小林容疑者の別の一面を見たという人物がいる。電気科の同級生だ。

「部活は確かロボット部で、僕とは部活も趣味も違うので遊んだりすることはありませんでした。お弁当を一緒に食べたり、教室を移動するときに話すくらいの付き合い」

 と関係性を前置きし続ける。

「結構熱く、ゲームやアニメの話をされたことがあります。『ワンピース』や『ドラゴンボール』のような有名な作品ではなく、僕の知らないマニアックなものでした」

 ある日、小林容疑者が「これ好きなんだ」と、この同級生に携帯電話で見せた画像は中学生くらいのかわいい女の子のキャラクター。

「大人の女性や高校生ではなく、萌えキャラだったので“こいつロリコンかな”って思いました。当時、AKB48が人気だったんですが、遼は話には加わらずゲームやアニメキャラクターの女の子に夢中でした」(前出・電気科同級生)

 理想のタイプは「美少女アニメキャラ」といわんばかりに容疑者が関心を示したのは2次元の女子。いわゆる“2D女子”で、リアルな女子に関心は示さなかった。ただ、同級生の女子生徒が相手にすることもなかった。

幼い女の子に傾倒していった

 クラスメートは容疑者を名前で呼んでいたそうで、中学時代のように“はるはる”と呼ばれることはなかった。

「奥手なのかなと思いました。好きな人とか彼女の話は聞いたことがありません。下ネタをふっても本人は絶対に話しませんでしたね」(同)

 卒業後は、電気工事の腕が発揮できる会社に就職。容疑者はそつなくやっていた。

「あいさつもできますし、働きぶりは至ってまじめでおとなしい。会社での行事は必ず出てきていますし、先輩ともよくしゃべっていました」(前出・勤務先社長)

 しかし、前出の電気科同級生は卒業後、心配していたことがあったと明かす。

「工事関係は体育会系の仕事だし、おとなしいあいつがそんな現場でやっていけるのか、大丈夫かなと思っていました」

 前出・勤務先社長も「仕事ができない」という悩みがあったとも話しており、社会人生活にストレスがあったのだろう。そこから逃れる癒しを家族や友人、恋人に求めることはなく、“幼い女の子”に傾倒していったのだろうか。

 入社6年目、勤務態度もまじめと評価されている一方、今年4月には別の少女を連れ回した疑いで書類送検されていたことが明らかに。まじめの仮面がはがれ「ロリコン」の地金が露呈した。1度も無断欠勤をしたことがなかった容疑者が初めて会社に連絡もせずに出勤しなかった5月7日の午後、少女を殺めた。

 下校途中の珠生さんを車に連れ込むまでどこで何をしていたのか、殺害後、遺体を遺棄する同日午後10時20分ごろまでの足取りや動機は? 車のトランクから見つかったという練炭と七輪は、いつ準備したのか? 本当に自殺を考えていたのか? などなど事件の謎はまだ何ひとつ明らかになっていない。

 捜査本部は殺人容疑などでの再逮捕についても視野に入れ捜査を続けている。