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 昨今、ささやかれている“ドラマ離れ”を食い止める施策として、テレビ局が動画配信サービスと手を組むことも。ドラマ本編では見られない“オリジナルドラマ”コンテンツの制作・配信を行うという新戦略を打ち出している。

スピンオフやオリジナル作品が好調

 日本テレビ傘下の会社であり、同局のドラマとコラボしてきた『Hulu』のコンテンツ制作部部長・毛利忍氏によると、

「オリジナル作品を作ることになってまだ3年ほどの歴史しかないので、どういった作品がお客さまのニーズに合致しているかということを毎回試行錯誤しています。

 昨年放送された『東京タラレバ娘』では、シチュエーションは同じなのですが、主演が本編の3人(吉高由里子、榮倉奈々、大島優子)とは全く違うキャスト(佐藤仁美、小沢真珠、小林きな子)で放送した『東京ダラダラ娘』を配信しましたね」

 テレビドラマの放送と連動してスピンオフやオリジナルのドラマを作ることで、物語の世界観をさらに深く楽しむことができる仕組みだ。

 “キスすることで死んでしまうが7日前に遡って生き返る”主人公を山崎賢人が演じた、1月期放送の『トドメの接吻』とコラボした『トドメのパラレル』の配信は特に大きなプロジェクトになった。

「ドラマの制作が始まる前からコラボすることが決まっていたので、どういう内容にしようかというゼロの状態から、ドラマのプロデューサーと入念に話し合いを重ねました。

 最終的に、キスをされることで死んでしまった後の世界を描くストーリーにするということで話がまとまりましたね。これは本編全10話に対し、オリジナルドラマも10話用意するといった、コラボの集大成となっています。

 今をときめく若手俳優が集結したこともあって、ネット世代を中心にSNSでの反響が大きかったです」(毛利氏)

 無料動画サービス『GYAO!』では関西テレビ制作のドラマと連携し、各話ごとをつなぐ0.5話という方式で本編では描ききれなかったドラマを“チェインストーリー”として配信を展開している。

 コンテンツビジネス本部 テレビ番組ビジネス部の林田健二氏に話を聞いてみると、

「だいたい毎話5分〜10分ほどの物語になっていて、テレビ放送の45分では描ききれない裏設定や脚本の背景の部分を描くことも多いです。

 本編の1話を見た後に“チェインストーリー”で1.5話。ドラマの2話の次に2.5話を見ていただくというふうに“本編を見た後にさらに深く物語を知るためにチェインストーリーを見る。そしてまた本編が見たくなる”といった効果を狙っています」

本作で明かされなかった謎が明らかに

 亀梨和也演じる、メディアによって母親を自殺に追い込まれた過去をもつ主人公・中村慶介が、メディアに復讐するストーリーを描いた『FINAL CUT』(フジテレビ系)のチェインストーリーではこんな話が。

「ネットで評判がよかったのは、ドラマで中村と一緒に復讐していくHey! Say! JUMPの高木雄也さん演じる野田大地というキャラクターの少年時代を描いた回。なぜ彼が復讐を手伝うのか、その理由が明らかになるんですね。

 もともと野田というキャラクターは、SNS上では“彼が真犯人なんじゃないか”とか“手伝うふりをしてハメようとしているんじゃないか”といったような憶測を呼ぶキャラクターでした。

 しかし、チェインストーリーの7・5話でその理由が発覚してからは、“何度見ても泣ける”といった真逆の感想をいただいたりと、反響は大きかったです」(林田氏)

 本編では描かれなかった要素が見れるのもオリジナルドラマならでは。しかし、制作とキャスト陣がともに同じだと現場の苦労も大きいようで、『明日の約束』(フジテレビ系)の現場からはこんな声も聞こえてきたという。

「本編と並行しての撮影だったのですが、制作の方にお話を伺ったら“本当に大変だった”とおっしゃっていました。チェインストーリーの時間をすべて合わせると、単純計算で約1話分になるわけですから、かなりエネルギーを注いでいただいたと思います。そういった意味では、関西テレビさんには頭が上がらないですね(笑)」(林田氏)