池袋にある東武百貨店の北海道物産展。旬の食材やスイーツを求めていつも多くの客が押し寄せている

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 『北海道生キャラメル』ブームの仕掛け人で、東武百貨店『北海道物産展』では2001年秋に売り上げ約4億円を達成。

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 ’04 年には、同社で年間売り上げ13億円をたたき出し日本一の物産展に育て上げた伝説のバイヤー、内田勝規さん。ヒットを呼ぶ秘訣とは? 舞台裏の話を聞いた。

売れるための努力は決して惜しまない

「物産展は、前年踏襲型のことをやればそれほど難しくない。物産協会というのが各県にありますから、そこに丸投げすると取引先を全部集めてくれる。でも、数字は取れていなかった。そこで私は原因を徹底的にチェックしました。

 まず、催事屋さんという物産展に出店する専門業者を排除しました。彼らは、販売は上手ですが、売りやすい商品だけを売っていて、例えば北海道展でも本当に北海道の旬のものを売っているわけじゃない。

 そこで私は、現地に行って“自分で欲しい、家族が欲しい、お客さんが欲しがる”という商品を集めてきたんです」

 各出店者に販売力をつけてもらうのが大原則だが、生産者は販売のプロではない。

「そこで登場するのが、マネキンと呼ばれる専門の販売員。私は都内の百貨店を回っていいマネキンをチェックし、販売員を派遣する会社と目いっぱい話し合って、販売力のある人を1年前から押さえておくようにしました」

 販売員には、カリスマと呼ばれるような人もいる。

「例えば、どの百貨店に行ってもたった1台のケースで、1日100万円のケーキを売るすごい販売員が実際にいるんです。その人は試食をさせる達人なんです。試食の効果は味をわかってもらうこと。

 そしてもうひとつ狙いがある。それは“負い目を作る”ことなんです。タダで食べてしまった負い目を利用して販売につなげる。どうやってそのやさしい“負い目”を作るかがプロの腕なんです」

 いまや各地で目にするゴールデンウイークの北海道展も、内田さんが始めた。

「最初、社内は大反対。“その時期はみんなディズニーランドなどへ旅行に行く”と思い込んでいた。ところが、ふたを開けてみたら大盛況でした」

 集客のため富良野のビニールハウスで4000鉢のラベンダーを作ってもらい、会場にラベンダー畑を再現。その鉢をお客さんにプレゼントしたのだ。

「そしたら翌年、物産展にいらしたお客様が富良野に行かれたみたいで。“私のラベンダーはちゃんと咲いているわよ”と言いに来てくれたんですね。そのときに、物産展は自分が考えている以上に波及効果があるんだなとわかったんです」

 現在、内田さんは地方の生産者と一緒になってモノづくりをしている。

「同じものを大量に売る時代から、百貨店らしく“いいもの”を数少なく売っていく時代に移行してきているなと思うんです。1本1万円のぶどうジュースとか、『飲む羊羹』なども手がけましたが、反響は大きかった。

 今は『花昆布』といって昆布をコサージュ状にして、お湯を入れると花が咲いたように見えるものを作っています。そういう付加価値のあるものが、百貨店らしさにつながる」

 現在、物産展を開く百貨店は少なくなっている。しかし、内田さんは、駅のスペースを活用して地域の特産品を販売するプランに取り組んでいる。

「その駅の中に入っているレストランも連動して、同じ地域の食材で料理を作る。それをこの夏、あちこちでやります。百貨店が足踏みしている間に、どんどんほかのところが試みを実現させていますよ」

《PROFILE》内田勝規さん 1957年生まれ。大学卒業後、東武百貨店に入社。「北海道物産展といえば東武」と言われるまでに育て上げ、’10年に東武百貨店を退社。地域のためにともに考え、地域を元気にするために全国、海外を飛び回っている