1階・地下1階の2フロアからなる大丸東京店の食品街。旅行客や近隣で働いている人など幅広い客層で連日、大にぎわい

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 デパートは、1階を化粧品フロアにしていることが多い。玄関口である場所に、華やかで、多くの女性の必需品でもある化粧品を配置すれば、それをフックにほかのフロアへ誘導するなど販売促進が期待できるからだ。

【写真】デパ地下なのに厨房がある店舗も

 そんな中で、あえて1階をスイーツなどの売り場とし、2階以上に化粧品を配置しているのが東京駅直結の『大丸東京店』。何と1日の平均来場者数は11万人! 旅行客や近隣に勤めるビジネスマンに支持されていた食品をさらに強化するための試みだ。

「掟破りのフロア構成のため、当初は社内でもかなり議論があったのですが、結果的に来客数は急上昇。理由のひとつには、出入り口に化粧品を置かないことで、男性のお客様にも足を運んでもらいやすくなったという点があります」

 こう教えてくれたのは、『大丸松坂屋百貨店 大丸東京店』広報の宮川香織さん。東京店の場合は約3割が男性客。多くの人々が利用する東京駅だからこそ、あえてターゲットを絞らず顧客層を広げることで売り上げ増につながった。

 また、化粧品売り場を2階以上に配置したことで、意外にも若い女性客の取り込みに成功した。人通りの多い1階とは違い、メイクを試す際に“人の目があまり気にならなくなった”と評判だという。

 1階に入っているラグジュアリーブランドなどの売り場と同じゆったりとした天井で、お土産を選ぶことができるのもうれしいポイント。1階のスイーツ売り場と地下の食品売り場は、4機のエスカレーターで行き来しやすくなっている。

 2012年に増床し、お弁当や惣菜、銘店ギフトなどが並ぶ食品フロア面積は1・4倍に。目玉は、全長60メートルの通路に、通年のべ1000種類以上もの弁当をそろえた『お弁当ストリート』。弁当・惣菜の3分の2を地下2階の厨房で作るというこだわりは、同店ならではだ。

「人気が高いのは、やはり肉系のお弁当。男性客を意識したこともありますが、働く女性にアンケートをとったところ、デパ地下ではガッツリ系の弁当を買いたいというニーズが多かったため、この『お肉の細道』という売り場ができました」(宮川さん)

 売り場に厨房スペースがある店舗もあり、できたての弁当の購入も可能。目の前で肉が焼ける“シズル感”を演出することで、OLやサラリーマン、旅行客の胃袋をつかんでいる。

 焼き肉の名店『叙々苑』やステーキ・ハンバーグの『ミート矢澤』から、鳥料理の老舗の新業態であるから揚げ専門店『たまひで からっ鳥』など話題の店が集結。リッチな気分を味わおうと、単価の高い弁当も売れるそう。

 惣菜・弁当担当マネージャーの鈴木徹さんに、おすすめを聞いてみた。

「社員に人気なのは、『牛たん かねざき』の厚切り牛たんステーキ弁当。1頭から6枚しか取れない、牛たんのなかでもやわらかい芯の部分をぜいたくに使い、注文をいただいてから焼き上げます。米沢牛専門の『梅ばち』の、すきやき・ステーキ弁当もスペシャル感があります」