日本電産は車載向け事業の拡大を鮮明にする。今後3年間で5000億円の設備投資を計画するが、そのうち約2000億円は車載向けに割り振る考えだ。19年には電動自動車(EV)の車輪を駆動させる「トラクションモーター」を中国で量産する。環境規制の強化などでEV向け製品の主戦場になると見られる中国市場を攻略し、将来は同モーターで世界首位を狙う。永守重信会長兼社長は「車載向けは受注高が伸び、収益性も改善している」と、成長のけん引役として大きな期待を寄せる。
両にらみの投資
 スマホ生産台数の鈍化が聞こえるなか、スマホと車載の“両にらみ”で増産投資を進めるのは村田製作所だ。同社は電気を蓄えたり、雑音を抑制したりする電子部品「積層セラミックコンデンサー(MLCC)」を生産する。電装化が進む車に対するMLCCの搭載数は飛躍的に増大している。EV向けの大きな受注は「まだ先」(村田恒夫会長兼社長)と見ているが、足元では先進運転支援システム(ADAS)への採用で需要が伸びている。京セラやTDK、ロームなどもこぞってEV向け製品を拡充し、今後は全体の売り上げに占める車載向けの比率を高めていく考えだ。
 アルプス電気はナビゲーションシステムを手がける子会社のアルパインと19年に経営統合を図ることで、車内空間を演出するコックピットビジネスにつなげる。運転者と車を結ぶ部品やセンサー、ソフトウエアを保有しており、今後も研究開発などを進める。

新規参入に時間
 ただ車向け新ビジネスの立ち上がりや収益貢献は19年度や20年度以降を見据える企業が多い。車のビジネスは手堅い反面、新規参入に時間がかかる。そのためスマホ市場の成長鈍化や縮小が急進すれば、車の事業が育つ前に、窮地に立たされる可能性がある。
 各社にとって18年度は投資や研究開発を積極化するなどスマホから車への種をまくことができる節目となりそうだ。