アップル公式動画より

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 電子部品各社が岐路に立たされている。これまで最重要顧客としてきた米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)X(テン)」の販売が鈍化するなど、スマホの新機能がユーザーの大きな期待に応え切れていないためだ。市場も成長が鈍化しているため、電子部品各社は次の成長市場として自動車に狙いを定めているが、想定より時間がかかりそうだ。スマホの進化に貢献することで急成長してきた電子部品各社は2018年度に踊り場を迎える。(渡辺光太、京都・日下宗大)
減産の報告があった
 アップルが2日(米国時間1日)に発表した18年1―3月期決算の売上高は前年同期比16%増の611億ドル(約6兆7105億円)となった。ティム・クック最高経営責任者(CEO)は「アイフォーンXの販売が好調だった」と振り返った。ただ、サプライヤー関係者によると「年末と2月に2段階で減産の報告があった」としており、販売鈍化の影響を警戒する必要もありそうだ。
 有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)ディスプレーを採用したアイフォーンXは一部で「高価過ぎる」との声があり、次期モデルについて再考が迫られている。アナリストらから「新機能の付与が限界に達している」という指摘もある。
 アップルの旗艦機種の不調はサプライヤーへの求心力の低下を招く可能性がある。アルプス電気の気賀洋一郎取締役は「18年以降は市場の鈍化だけでなく、メーカーの旗艦機種が注目されなくなり、減速感が顕著になっている」と分析。スマホ向けリチウムイオン二次電池が好調なTDKの石黒成直社長は「このまま収益を拡大するためには(18年度は)岐路だと感じている。単純にスマホの高機能化がこのまま続くわけではない」と懸念を隠さない。

高機能化が止まればコスト競争
 旗艦機種が進化し続けなければ、技術や性能を付加価値として提供する電子部品メーカーは単純なコスト競争に陥る。注目されるのは18年の最新機種の動向だ。有機ELを採用したことで高価格となったアイフォーンXだが、すでに今年は従来タイプの液晶モデルの割合を増やすとの報道もある。アップルの朝令暮改に「記念モデルの壮大な実験に付き合わされた気分だ」(有機EL向け部材メーカー幹部)と不満の声が漏れている。
 また、アップルの旗艦機種の反応は競合の中国のOPPO(オッポ)や華為技術(ファーウェイ)なども注視する。ユーザーのニーズの変化や高価な有機ELが振るわないことを背景に、中国メーカーなどの次期モデルは液晶タイプに回帰するとされる。液晶向けバックライトを手がけるミネベアミツミの貝沼由久会長兼社長も「まだまだ(有機ELへの移行は)分からない状況だ」と語り、有機ELへのシフトに対する熱は一服している。
新機能に手詰まり感
 そのほか、スマホの新機能として期待されるのが仮想現実(VR)や拡張現実(AR)の分野だ。アップルはアイフォーン向けでそれらの技術の応用を模索している。ただVR・AR機器向けの触覚部品やセンサーを保有するアルプス電気は「コンテンツやアプリケーション(応用ソフト)に依存するため、カメラ部品などと比べて訴求しづらい」(栗山年弘社長)と新機能の普及が待たれる状態だ。
 アイフォーンXには史上初の機能は少なく、機能追加に手詰まり感が否めない。ユーザーを刺激し、部品メーカーの求心力を保てるか。アップルの18年の取り組みが注目される。

車にシフト 狙いはCASE
 一方、電子部品各社は、いつかはくるとしてきたスマホ市場の縮小に向けて、自動車市場へのシフトを進めてきた。特に力を注ぐのはCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に関わる新領域だ。異業種間の激戦は避けられないが、新規参入によって実現できる技術も多い。電子部品各社にとっては安全性などの課題はあるものの、自動車の電装化・電動化のトレンドは“走るスマホ”を意味する。スマホのような設計や通信、操作などは強みを発揮できる可能性がある。制御技術や小型化技術など製品開発のロードマップを描きやすく、CASEの領域で活躍が期待される。