一度身についてしまった悪い習慣を断ち切るには?
喫煙や深夜の食事など、習慣化してしまった行動を止めるのは難しく、一度は断ち切ったはずの習慣が数日で元に戻ってしまったことがある人も多いはず。YouTubeチャンネルAsapSCIENCEでは、一度身についてしまった悪い習慣を改める方法が紹介されています。
How To Break Your Bad Habit - YouTube
爪をかんだり、喫煙したり、深夜に食事をするなど、悪い習慣をなくすにはどうしたらよいでしょうか?
デューク大学の研究によると、人が行う動作の45%は毎日同じ場所で行われている傾向があるそうです。つまり、人が生活している時間の約半分は習慣化されていて、ルーチンワークに徹しているともいえます。
マサチューセッツ工科大学(MIT)では習慣化された脳を調べる実験を行っています。この実験では、T字型の迷路を作り、T字路を左に曲がった先にチョコレートを置いています。そして、入口の前にマウスを1匹待機させたあと、ゲート開くとマウスがどのようなルートを通ってチョコレートにたどり着くかを調べたとのことです。
すると、マウスは迷路をウロウロしながら直進し、一度右に曲がって何もないことを確認した後、左側のチョコレートにたどり着いていたそうです。この時の脳波を調べると、常に活動している状態であったとのこと。
その後、マウスに何度も同じことを行って、チョコレートの位置を学習させたところ、ウロウロすることなく、スムーズにチョコレートまでたどり着けるようになったそうです。このときの脳波を調べると、ゲートを開けた時と、チョコレートにたどり着いた時の2回しか活動しなくなっていたとのことです。
この実験結果から、脳は新しい行動をする時、多くの情報をかき集めて常に活発に働いている状態になると考えられます。
そして、行動パターンが定まり、脳の中でこれまでの行動を1つの塊として処理できるようになると……
新しい習慣として脳に保存されます。
このおかげで、「歯を磨きながら車をバックで移動させる」などの難易度の高いスキルであっても、パターン化されることで簡単にできるようになります。
この学習プロセスは「きっかけ」「ルーチン」「報酬」の3つのステップの繰り返しで成り立っているとのことです。マウスの実験で例えると、「きっかけ」はゲートを開ける合図で、「ルーチン」はT字型の迷路、「報酬」はチョコレートです。そして、行動が習慣化されると「きっかけ」に対して行ったアクションに対し、「報酬」だけが返ってくるだけの工程に省略されるため、脳はこの2ステップのタイミングしか物事を考えなくなるというわけです。
しかし、習慣は必ずしも良い報酬につながるとは限りません。例えば、腐りかけの食べ物を食べて、おなかを下すことのなかった人は、虫のたかっているポップコーンを見ても「まだ食べられる」と感じる悪い習慣が身につくかもしれません。
実際にあった例として挙げられているのが、アメリカ国民にバランスの良い食事を取らせるために実施されたキャンペーン「TAKE 5」です。この中では、リンゴ、ブロッコリー、バナナ、オレンジ、ニンジンの5つの食材を習慣的に食べることが推奨されました。しかし、実際にこの習慣が身についた人は全体のわずか11%だったとのことで、習慣化させるのは難しいことがわかっています。
では悪い習慣を改めるには、どうしたら良いでしょうか?「THE POWER OF HABIT」の著者であるチャールズ・デュヒッグ氏は、クッキーを例に出して説明しています。
デュヒッグ氏は、毎日午後3時15分になると、カフェテリアに移動しクッキーを食べる習慣がありました。そして、毎日のように体重が増えていくので、「やめなきゃな……」と感じていたそうですが、習慣化されてしまった行動は止められなかったそうです。
あるとき、デュヒッグ氏は「なぜカフェテリアに行くのか?」と考えてみたところ、友だちとうわさ話をすることが楽しみにしていたことに気づいたとのこと。つまり、3時15分に移動する目的はクッキーを食べることではなく、誰かとおしゃべりすることだったのです。
そこで、デュヒッグ氏は午後3時を過ぎると、カフェテリアに行くのではなく、誰かのデスクまで移動し、おしゃべりすることにしました。この行動が習慣化されたことにより、デュヒッグ氏はクッキーを食べることがなくなったそうです。つまり、「きっかけ」を変更せずに「報酬」の中身を「クッキー」から「おしゃべり」に入れ替えることで悪い習慣を絶つことができたと話しています。
ここで、ある人に爪をかむ習慣があったとします。この習慣を止めたいと考えたとき、どうするか考えてみましょう。まず「きっかけ」は何かを考えてみます。この人が爪をかんでしまうときは、「緊張している時」でしょうか?それとも「退屈な時」でしょうか?
仮に「退屈な時」に爪をかむ人を考えてみましょう。この人は「退屈な時」に身体的な刺激を欲していると考えられます。
そこで、1日のうち退屈な時間ができたのであれば、「爪をかむ」代わりに「ポケットに手を入れたり」「腕を曲げたり」「拳で机を軽くたたいたり」するなど、異なる刺激を与えることで代用できると考えられます。すると、「きっかけ」を変えずに報酬を変えることができるので、デュヒッグ氏と同じように悪い習慣を改めることができるはずです。
同様に喫煙が習慣化してしまっている人は、どんな時にタバコを吸うのか「きっかけ」を考えて、自分に与える報酬を「変えてみる」方法を試してみるのもアリだということがわかります。