iPhoneバッテリーを長持ちさせる3つの方法
iPhoneのパフォーマンスが落ちているかどうかは、アプリで確認できる(編集部撮影)
バッテリーの劣化した一部iPhoneに対し、パフォーマンスを抑止する処理を加えていたことが、世界各国で波紋を広げている。対象となるiPhoneは、iOS 10.2.1以降のiPhone 6、iPhone 6 Plus、iPhone 6s、iPhone 6s Plus、iPhone SEと、iOS 11.2以降のiPhone 7、7 Plus。これに対し、アップルは謝罪文を発表。対象となるiPhoneのバッテリー交換費用を減額する措置も、同時に明かしている。
アップルの声明文によると、パフォーマンスを抑止していたのは、劣化したバッテリーでiPhoneが突然シャットダウンしてしまう問題を防ぐためだという。
意図せずシステム全体がダウンしてしまうと、データの消失などの2次被害にもつながる。こうしたトラブルを防ぐための措置として、パフォーマンスを抑止する機能を導入したようだ。
ただ、ユーザーに対して明確な説明がないまま、自動的にカタログ値よりもパフォーマンスを下げてしまうのは、ほめられた行動とはいえない。アップルは否定しているものの、フランスのように、「計画的陳腐化」(買い替えを促すため、意図的に製品の性能を落とす行為)を疑い、捜査当局が調査に入るケースも出てきている。iOSには、今後、このパフォーマンス抑制をオフにする機能が導入されるという。
では、それまでユーザーは自分のiPhoneのパフォーマンスが落ちているかどうかを、どのような方法で判断すればいいのか。そもそも、バッテリーを劣化させないようにするには、どうすればいいのか。今回はパフォーマンスを確認する方法や、バッテリー寿命を延ばす使い方をまとめた。
1.パフォーマンスの低下を判断するには?
iPhoneを使っていると、アプリの起動が遅くなったり、スクロールに引っかかりが起きたりすることがあると感じることがあるかもしれないが、これだけでは、パフォーマンスが抑制されているかどうかまではわからない。アプリが最新機種に合わせてパフォーマンスを必要とするよう仕様を変更していたり、使い続けてメモリがいっぱいになってしまっていたりと、原因はさまざまだ。いったん、フルリセットすれば、買ったときのような軽快感が戻るケースもある。
また、iOSには、バッテリーの劣化を知らせる機能が搭載されているが、これだけだとパフォーマンスが低下しているかどうかはわからない。この機能は、あくまでバッテリーの交換時期を知らせる、目安になるものでしかない。実際にパフォーマンスが落ちているかどうかは、どう判断すればいいのか。
Geekbench 4で測定したiPhone 7のスコア(編集部撮影)
簡単なのは、ベンチマークアプリを使う方法だ。オススメは「Geekbench 4」(120円)というアプリ。このアプリは元々、iPhoneの性能をスコアとして表示するためのものだが、過去に蓄積されたデータを元に、スコアの分布がアプリ開発元のサイト上で公開されている。グラフを見ると一目瞭然だが、大体のiPhoneはピーク性能のままで、iPhone 6sであれば2500、iPhone 7であれば3500前後のスコアが出ている。
Geekbench 4をインストールし、実際にベンチマークテストを行い、上記のサイトにあるグラフと比較してみれば、自分のiPhoneのパフォーマンスが低下しているかどうかがわかるというわけだ。利用方法はシンプルで、Geekbench 4を起動して、トップ画面の「SELECT BENCHMARK」から「CPU」を選択。「Run Benchmark」というボタンを押すと、パフォーマンスの計測が始まる。
Geekbench 4のスコアは、シングルコアスコアとマルチコアスコアに分かれるが、今回の場合は、シングルコアスコアの数値をチェックし、表と比較すればよい。スコアが最頻値よりも極端に落ちているようなときは、パフォーマンスの制限がかかっていることを疑ってもいいだろう。また、ベンチマークはなるべく、iPhoneがほかのアプリを使っていない状態で計測することをオススメしたい。特に、低電力モードは、パフォーマンスにも影響を与えるため、解除してから計測しよう。
2.バッテリーを長持ちさせる使い方とは?
パフォーマンスの制限は、iOSのアップデートで解除できるようになる見込みだが、仮に解除すると、新たな問題が起こる可能性が高い。冒頭で解説したように、パフォーマンス制限は、バッテリーが劣化した際にフルパワーでiPhoneを動かそうとすると、突然シャットダウンしてしまうのを防ぐために導入されたものだからだ。つまり、パフォーマンス制限を解除してしまうと、かえって使い勝手が悪くなってしまうおそれもある。
先に挙げたベンチマークアプリでのチェック結果で、もし問題がなかったとしたら、なるべくその状態が長持ちするようにしておきたい。iPhoneには、ほかのスマートフォンと同様、リチウムイオンバッテリーが採用されている。この特性を踏まえ、使い方に気を付ければ、劣化を遅らせることができる。
なんとなく耳にしたことがあるかもしれないが、継ぎ足し充電を頻繁に行うとバッテリーが劣化しやすくなるというのは、大きな間違い。完全に放電したあと充電しなければいけないというのも、過去の話だ。リチウムイオンは、こうした問題を解決した方式で、単純な充電回数ではなく、合計で100%ぶん充電すると、1回充電したとカウントされる。たとえば、50%まで使ったあと満タンまで充電して、その後再び50%まで使って80%まで充電、さらに70%まで減った状態で90%まで充電した場合、これでちょうど1回分の100%になる計算だ。
では、どういう使い方を防げばいいのか。バッテリーの劣化につながるのは、通常の温度を超えた状態で充電するようなケースだ。ありがちなのが、充電しながらパフォーマンスを必要とするアプリを使う場合。このようなときは、本体に熱がこもってしまうため、無理に充電すると、バッテリーに負荷がかかってしまう。ゲームのように、長時間使う可能性のあるアプリは、特に注意が必要だ。
充電時に本体の温度を適切に保つという意味では、スマホケースもなるべくなら、充電時は外しておいたほうがいい。素材にもよるが、中には熱がこもってしまい、充電時にバッテリーの温度が必要以上に上がってしまうおそれもある。逆に、10度を下回るような、寒すぎる場所での充電もなるべくであれば控えておきたい。冬に暖房をつけていない部屋で充電しようとすると、バッテリーの劣化を早めてしまうことになりかねないのだ。
iPhoneを機種変更して、使わなくなった端末を後々家族に渡すために長期間保管するような場合も、バッテリーの劣化には気をつけたい。このようなときは、50%まで充電した状態で保管しておくことがアップルから推奨されている。このような対策を講じて、なるべくバッテリー寿命を延ばすように使えば、パフォーマンス低下の心配は少なくなる。
3.パフォーマンスが低下したらバッテリーを交換
長期間使った結果、パフォーマンスが低下してしまったようなときは、そのまま使い続けるのは得策とはいえない。バッテリーが劣化するほど使い込んだのであれば、最新の端末に機種変更してもいいし、同じ端末を使い続けたいときは、バッテリーそのものを交換してしまうという手もある。
パフォーマンス抑止を無断で行っていたことを受け、アップルは対象となるiPhoneのバッテリー交換費用を値下げしている。日本でのバッテリー交換費用は8800円だったが、12月28日の発表では、それを3200円にするという。割引価格はなんと5600円。2018年12月31日まで割引は継続する。
iPhoneの機種が該当しているだけで一律に値下げされるため、実際にパフォーマンスが抑制されているかどうかや、バッテリーが劣化しているかどうかに関係なく、この値段でバッテリーを交換することができる。AppleCare+に入っている場合は、無料だ。
バッテリーの交換は、アップルストアのジーニアスバーか、正規サービスプロバイダーで行える。店頭に持ち込めば、基本的にはすぐにバッテリーを新品に変えてもらえるため、買ってからある程度時間が経っている人は、これを機に、バッテリー交換をしておくといいだろう。
ただし、アップルの発表を受け、現状ではジーニアスバーや正規サービスプロバイダーが非常に混雑しており、予約も取りづらい状況が続いている。そのため、ここで挙げた方法でパフォーマンスをチェックし、問題がなければ、年末までバッテリーの交換を待ってもいい。
あまり年末に近づくと、最後の駆け込み需要が発生するおそれもあるが、アップル発表直後の今よりは、徐々に混雑も解消されているだろう。パフォーマンスが抑制されても、使えなくなるわけではない。実際に問題が起こってから交換しても、遅くはないはずだ。