打者・大谷翔平を襲うメジャーの「魔球&ウルトラ速球」の持ち主たち
大谷翔平の二刀流を阻むメジャーのライバルたち〜投手編
二刀流としてメジャーに挑むエンゼルスの大谷翔平。1月5日配信の記事(返り討ちだ! 大谷翔平の二刀流に立ちはだかるメジャーの強打者たち)で大谷のライバルとなりうる打者を紹介したが、今回は打者・大谷の前に立ちはだかるメジャーの投手を紹介したい。
ダラス・カイケル(ヒューストン・アストロズ)
2015年に20勝を挙げ、サイ・ヤング賞に輝いた左腕のダラス・カイケルは、昨シーズンも2年ぶりの2ケタ勝利となる14勝をマークし、球団初のワールドシリーズ制覇を支えた。
ちなみに、カイケルのストレート系の平均球速は142.7キロと決して速いわけではない。メジャーのなかではむしろ遅い部類に入るだろう。しかし、そのボールを丁寧に低めに集めてゴロの山を築いていく。
また、対左打者にはめっぽう強く、昨シーズンの被打率は.145。左打者の大谷も、カイケルとの対戦では苦戦を強いられるだろうが、同地区ということもあり、必然的に対戦機会も増える。そのなかで難攻不落の左腕をどう攻略していくのか注目だ。
昨シーズン、ア・リーグ最多となる308奪三振を記録したクリス・セール
クリス・セール(ボストン・レッドソックス)
打たせて取るピッチングスタイルのカイケルとは対照的に、真っ向から三振を奪っていくのがレッドソックスのクリス・セールだ。昨シーズン、ア・リーグ最多の308個の三振を奪い、17勝をマークするなど、メジャーを代表する左腕といえる。
セールの最大の特長は、サイドスローに近いスリークォーターから放たれる横に滑るように動くスライダーだ。左打者にとっては、背中越しからボールが来るような球筋であり、これを芯でとらえるのは至難の業だ。かつてメジャー最強左腕と呼ばれた通算303勝のランディ・ジョンソンのスライダーの軌道に近い。
また、ストレート系の平均球速も150キロを超えており、速球とスライダーのコンビネーションで三振の山を築いていく。
このメジャー屈指の左腕に対して、大谷はどう攻略すべきか。まずは、独特の軌道を持つセールのボールに対して、どこまで踏み込んでスイングできるかがポイントになるだろう。
コーリー・クルーバー(クリーブランド・インディアンス)
安定感抜群のピッチングで、昨シーズン最多勝(18勝)と最優秀防御率(2.25)のタイトルを獲得したインディアンスのコーリー・クルーバー。彼の安定感を示すのがWHIPである。
WHIPとは、1投球回あたり何人の走者を出したかを示す数値で、与四球と被安打を足し、それをイニング数で割ることで求められる。一般的に先発投手の場合、1.00未満なら球界を代表する投手と言われているが、昨シーズンのクルーバーのWHIPは0.87。この数字もア・リーグトップで、いかにランナーを出さなかったかがわかる。
かつては150キロ近いストレートが武器の本格派だったが、現在はスライダー、シンカー、チェンジアップと多彩な変化球を駆使して打者を翻弄する技巧派。なかでもクルーバーの代名詞となっているのがスライダーだ。
横に曲がりながら最後は縦に落ちる独特の軌道で、クルーバー自身はスライダーでもカーブでもないという、まさに”魔球”である。アメリカのメディアからは、「ここ数年をさかのぼってもメジャーで最高の球のひとつ」という評価を受けた。
はたして、これまで見たこともない”魔球”に大谷がどう対応していくのか。クルーバーとの対決は要注目である。
ジェームズ・パクストン(シアトル・マリナーズ)
これまで紹介した3人ほどの知名度はないが、エンゼルスと同地区のライバルであるマリナーズのジェームズ・パクストンの得意球についても触れておきたい。
昨シーズン、自身キャリアハイとなる12勝、防御率2.98を記録したパクストン。この大躍進を支えたのが、球界屈指の呼び声が高いナックルカーブだ。左のスリークォーターから放たれるボールは本塁手前でストンと急激に落ちる。
パクストンのストレート系の平均球速は約155キロだが、このナックルカーブの球速はおおむね130キロ前後。緩急差が大きく、打者はタイミングを合わせるのが難しい。
ただ、ナックルカーブは制球が難しく、カウントが悪くなるとストレート一辺倒の配球になり、打たれるケースが多い。事実、昨年のパクストンは、ストライク先行時の被打率は.165だったのに対し、ボールが先行したときの被打率は.326というデータが残っている。大谷としてみれば、ボールをしっかりと見極め、バッティングカウントになったところでストレートを狙いたい。
アロルディス・チャップマン(ニューヨーク・ヤンキース)
シンシナティ・レッズ時代の2010年にメジャー最速となる169.1キロをマークしたアロルディス・チャップマン。昨シーズンもメジャー年間1位となる167.9キロを叩き出した。ちなみに、昨年のメジャーの球速ランキングは1位から23位までがチャップマンだった。
この自慢のストレートのほかにスライダーとチェンジアップを投げるが、投球の8割以上はストレート。それでも高い奪三振率を誇り、打者はストレートとわかっていても容易にとらえることができない。
大谷はこの世界最高峰のストレートに対し、どうアプローチしていくのか。力と力の対戦を想像しただけでも胸がワクワクする。
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