大谷翔平の二刀流を阻むメジャーのライバルたち〜投手編

 二刀流としてメジャーに挑むエンゼルス大谷翔平。1月5日配信の記事(返り討ちだ! 大谷翔平の二刀流に立ちはだかるメジャーの強打者たち)で大谷のライバルとなりうる打者を紹介したが、今回は打者・大谷の前に立ちはだかるメジャーの投手を紹介したい。

ダラス・カイケル(ヒューストン・アストロズ)

 2015年に20勝を挙げ、サイ・ヤング賞に輝いた左腕のダラス・カイケルは、昨シーズンも2年ぶりの2ケタ勝利となる14勝をマークし、球団初のワールドシリーズ制覇を支えた。

 カイケルが面白いのは、ここ数年の間に技巧派から速球派へとピッチングスタイルを変えたことだ。それまではカーブ、チェンジアップなど変化球中心のピッチングだったが、昨年のカイケルはフォーシーム、ツーシームといったストレート系のボールが目立ち、その割合は投球全体の57.8%を占めた。ヤンキースの田中将大が27.6%だったことを考えると、カイケルがいかにストレート中心の配球で攻めていたかがわかる。

 ちなみに、カイケルのストレート系の平均球速は142.7キロと決して速いわけではない。メジャーのなかではむしろ遅い部類に入るだろう。しかし、そのボールを丁寧に低めに集めてゴロの山を築いていく。

 また、対左打者にはめっぽう強く、昨シーズンの被打率は.145。左打者の大谷も、カイケルとの対戦では苦戦を強いられるだろうが、同地区ということもあり、必然的に対戦機会も増える。そのなかで難攻不落の左腕をどう攻略していくのか注目だ。


昨シーズン、ア・リーグ最多となる308奪三振を記録したクリス・セール

クリス・セール(ボストン・レッドソックス)

 打たせて取るピッチングスタイルのカイケルとは対照的に、真っ向から三振を奪っていくのがレッドソックスのクリス・セールだ。昨シーズン、ア・リーグ最多の308個の三振を奪い、17勝をマークするなど、メジャーを代表する左腕といえる。

 セールの最大の特長は、サイドスローに近いスリークォーターから放たれる横に滑るように動くスライダーだ。左打者にとっては、背中越しからボールが来るような球筋であり、これを芯でとらえるのは至難の業だ。かつてメジャー最強左腕と呼ばれた通算303勝のランディ・ジョンソンのスライダーの軌道に近い。

 また、ストレート系の平均球速も150キロを超えており、速球とスライダーのコンビネーションで三振の山を築いていく。

 このメジャー屈指の左腕に対して、大谷はどう攻略すべきか。まずは、独特の軌道を持つセールのボールに対して、どこまで踏み込んでスイングできるかがポイントになるだろう。

コーリー・クルーバー(クリーブランド・インディアンス)

 安定感抜群のピッチングで、昨シーズン最多勝(18勝)と最優秀防御率(2.25)のタイトルを獲得したインディアンスのコーリー・クルーバー。彼の安定感を示すのがWHIPである。

 WHIPとは、1投球回あたり何人の走者を出したかを示す数値で、与四球と被安打を足し、それをイニング数で割ることで求められる。一般的に先発投手の場合、1.00未満なら球界を代表する投手と言われているが、昨シーズンのクルーバーのWHIPは0.87。この数字もア・リーグトップで、いかにランナーを出さなかったかがわかる。

 かつては150キロ近いストレートが武器の本格派だったが、現在はスライダー、シンカー、チェンジアップと多彩な変化球を駆使して打者を翻弄する技巧派。なかでもクルーバーの代名詞となっているのがスライダーだ。

 横に曲がりながら最後は縦に落ちる独特の軌道で、クルーバー自身はスライダーでもカーブでもないという、まさに”魔球”である。アメリカのメディアからは、「ここ数年をさかのぼってもメジャーで最高の球のひとつ」という評価を受けた。

 はたして、これまで見たこともない”魔球”に大谷がどう対応していくのか。クルーバーとの対決は要注目である。

ジェームズ・パクストン(シアトル・マリナーズ)

 これまで紹介した3人ほどの知名度はないが、エンゼルスと同地区のライバルであるマリナーズのジェームズ・パクストンの得意球についても触れておきたい。

 昨シーズン、自身キャリアハイとなる12勝、防御率2.98を記録したパクストン。この大躍進を支えたのが、球界屈指の呼び声が高いナックルカーブだ。左のスリークォーターから放たれるボールは本塁手前でストンと急激に落ちる。

 パクストンのストレート系の平均球速は約155キロだが、このナックルカーブの球速はおおむね130キロ前後。緩急差が大きく、打者はタイミングを合わせるのが難しい。

 ただ、ナックルカーブは制球が難しく、カウントが悪くなるとストレート一辺倒の配球になり、打たれるケースが多い。事実、昨年のパクストンは、ストライク先行時の被打率は.165だったのに対し、ボールが先行したときの被打率は.326というデータが残っている。大谷としてみれば、ボールをしっかりと見極め、バッティングカウントになったところでストレートを狙いたい。

アロルディス・チャップマン(ニューヨーク・ヤンキース)

 シンシナティ・レッズ時代の2010年にメジャー最速となる169.1キロをマークしたアロルディス・チャップマン。昨シーズンもメジャー年間1位となる167.9キロを叩き出した。ちなみに、昨年のメジャーの球速ランキングは1位から23位までがチャップマンだった。

 この自慢のストレートのほかにスライダーとチェンジアップを投げるが、投球の8割以上はストレート。それでも高い奪三振率を誇り、打者はストレートとわかっていても容易にとらえることができない。

 大谷はこの世界最高峰のストレートに対し、どうアプローチしていくのか。力と力の対戦を想像しただけでも胸がワクワクする。

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