「努力しても成績が伸びない子」の残念な習慣
コツコツと勉強を頑張っていても成果が出ないのはなぜでしょうか(写真:sasaki106 / PIXTA)
※石田勝紀先生へのご相談はこちらから
小5の女の子がいる母親です。中学受験を考えているため、塾に通っています。うちの子は、勉強が好きなほうではないですが、比較的努力家でコツコツと勉強するほうです。しかし、コツコツと勉強して頑張っているにもかかわらず、なかなか結果に表れません。結果に表れるどころか、下がっているようにさえ思います。そのうち結果が出るから大丈夫だよと言っているのですが、本人も心配しているようです。私もだんだん心配になりご相談と思い、ご連絡しました。努力をしても報われないなんて考えたくありませんが、どのように子どもに対応したらよろしいでしょうか。よろしくお願いします。
(仮名:藤森さん)
なぜコツコツ努力をしても報われないのか
この連載の記事一覧はこちら
努力をされるお子さんのようですね。それはとてもすばらしいことです。通常、勉強は嫌々ながらやるか、言われないとやらないという子が多い中で、コツコツと努力をする子ということは、今後が楽しみですね。
しかし、藤森さんがご心配になっているとおり、実は、コツコツ努力をしても成果が出ないことがあるのです。筆者はこれを「努力逆転の法則」と呼んでいます。つまり、努力すればするほど、成果・成功から遠ざかっていくという恐ろしい法則なのです。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。通常は、コツコツと努力をすれば成果が出ると思いますよね。というより、「そう思いたい」というのが正しいように思いますが。しかし、現実はそうは甘くはないのです。
今回はこのメカニズムについてお話ししましょう。
まずは一般的に考えられる「コツコツ努力をしても報われない」理由を3つ掲げましょう。
1)努力する部分を間違えている
たとえば、勉強でいえば、テストによく出る問題(Aランク)とたまに出る問題(Bランク)、あまり出ない問題(Cランク)と大きく3種類に分けたとして、テストにあまり出ない問題(Cランク)を勉強しても、点数にはつながりませんよね。つまり、点数に直結する部分から勉強していかないと、点数にはつながらないということなのです。コツコツと努力する子の典型として、勉強時間数が多いことに満足して、内容面では、Aランク、Bランク、Cランクの区別がついていないということがよくあります。もし、これに該当するのであれば、1度、頻出順に整理して、勉強の強弱部分を明確にするといいでしょう。
2)実は大して勉強していない
親から見て机に座って勉強していると感じていても、実際は、60分のうち、半分ぐらいの時間は、ぼーっとしていたり、携帯をいじっていたりすることがあります。このような場合は、集中できる時間を計測して、その時間内で仕上げるように勉強内容を組み立てていくといいでしょう。15分しか集中できないのであれば、タイマーをかけて15分で休憩を5分入れるというようにします。30分は集中できるのなら、30分でタイマーをセットします。このように終わりの時間を明確にすることで、子どもはその時間内はやろうという気持ちになります。
3)勉強方法を間違えている
勉強方法を間違えていると、いくら努力しても成果につながりませんね。当たり前のことです。勉強方法については、1度、先生に確認してみる必要があるでしょう。
以上、典型的な3つの理由についてお話ししました。もし、この3つのいずれかに該当する可能性があれば、その該当部分を1度チェックするといいでしょう。しかし、これら3つがクリアされているのに伸びないということがあるのです。今回はこの点についてお話ししましょう。このことについては一般に知られていません。
「頑張る」には2つの種類がある
それは「頑張っているうちは、成績は大して上がらない」ということなのです。つまり「成績を上げたいなら頑張ってはいけない」ということなのです。
頑張ることで報われると思っている人が多いのですが、頑張ってもうまくいくとは限りません。もし頑張っていて報われるのであれば、頑張っている人は皆、成功していないとおかしいですからね。
実は、この「頑張る」という言葉は非常に怪しい言葉で、「頑張ってはいけない」と言われると、では「怠ければいいのか」と性急に考えてしまうことがあります。そういうことではなく、「頑張る」には2つの種類あり、通常、イメージされるような「頑張る」ではうまくいかないという意味なのです。
通常イメージされる「頑張る」とは、「苦しみを伴った『頑張る』」です。
一般的に、「頑張る=つらいこと」ととらえることが多いのではないでしょうか。「受験勉強を頑張る」といった場合、おそらく「つらい孤独な戦いを忍耐で頑張る」という様子をイメージすることでしょう。もちろん、この方法でも、ある程度は成績は上昇します。しかし“ある程度”です。しかも、このタイプの頑張る道のりは、厳しくつらいものであり、できれば避けたい道を我慢して通っているため、ちょっと油断すると、すぐに下がっていきます。「頑張るとはそういうものであり、その道を避けるなどと、甘いことを言うなんて」という人もいます。このような精神論が間違っているとは言いませんが、本当にそのようなやり方が効果的なのでしょうか。
というのも、これまで非常にたくさんの子どもたちを見てきた中で、わかったことの中の1つに次のようなことがあるのです。
それは、上記のような「苦しみを伴った『頑張る』」で勉強が継続的にできるようになった子に出会ったことがない」ということなのです。“ほどほど”のレベルまで上がればいいと思っているのでしたら、「苦しみを伴った『頑張る』」でも、“そこそこ”上がりますから、それでもいいかもしれませんが、突き抜けた人、上位のゾーンに入る人、安定的に高い状態にある人になりたいのであれば、「苦しみを伴った『頑張る』」では到達しないのです。
楽しみを伴った「頑張る」
では、「苦しみを伴った『頑張る』」ではないのならば、どうすればいいのかということになりますね
それが、もう1つの種類の「頑張る」なのです。
それは「楽しみを伴った『頑張る』」なのです。換言すれば、「楽しんでいる心理状態にある『頑張る』」ということなのです。
勉強ができる子の頭の中は見えませんね。端から見ていると、「一生懸命勉強している」「努力している」「(苦しみを伴って)頑張っている」ように見えます。しかし、彼らの内面は外から見ているのとは真逆と言ってもいいぐらい、異なっていることはあまり知られていません。
例)小6の女の子の例
私がかつて指導していた小6の女子のお話をしましょう。彼女は、全教科抜群にできるのですが、特に国語がよくでき、難問でも解いてしまうのです。私は、その子に「どうやって国語の文章を読んでいるの?」と聞くと、「この文章に出てくる○○ちゃんは、私の友達の△△ちゃんに似ていて、でも××の部分はちょっと違うんだよね。△△ちゃんはこんなふうには考えないからね」と答えるのです。
さて、これが何を意味するかおわかりでしょうか。この子は問題を解くために文章を読んでいるのではなく、自分の知っている現象と文章を重ね合わせて、内容面に入り込んでいるのです。だから問題が解けるのです。
つまり、その子は「楽しんでいる」のです。
例)歴史ができる高校生の例
ある高校3年生がいました。彼は、高3から世界史を勉強し、たった1年でマスターして早稲田大学法学部に合格しました。彼に、なぜ世界史がそんな1年でできるようになったのか聞いたのです。すると彼は「世界史に出てくる人物を自分の知っている友人たちに置き換えている」というのです。「先生も出てきますよ」と言われたものです。家族や知人、友人を総動員していると言っていました。単なるカタカナで表記され会ったこともない世界史上の人物を、身近な人に置き換えることでリアル感を持って“楽しんだ”ようなのです。
どうすれば楽しめるのかを考える
この2つの例はほんの一例です。まだまだたくさんあります。できる子だから楽しめるのではなく、楽しめる子だから結果としてできるようになっていったのです。おそらく端から見ていれば、この2人の子は一生懸命勉強している、頑張っていると見えますが、内面が外から想像する姿とはまったく異なるのですね。
藤森さんにアドバイスしたいことは、一見つまらなさそうにみえる勉強を、いかにして楽しめるようにするかということが重要だということです。ただ頑張ればいいというものではありません。どうすれば楽しめるのかを考えて実行してしまう。この考え方が、将来にわたって、お子さんにとっての最大の財産にもなることでしょう。