日曜日に行われたJ1リーグ鹿島対柏戦(@カシスタ)は、鹿島が勝てばJ1優勝が決まる一戦とあり、現地には多くの記者が訪れた。その中には、前日アジアチャンピオンズリーグ(ACL)決勝、浦和対アルヒラル(@埼スタ)の一戦を取材観戦した記者も多くいた。ACL決勝が終了したのは21時半で、鹿島で行われたこの試合の開始時間は13時。さらに言えば、埼スタ、カシスタはそれぞれ交通アクセスの悪いロケーションにある。取材者は強行軍を強いられたのだ。

 この日に行われたJ1リーグ8試合の中には、降格に絡む試合も3つ含まれていた。見どころ満載の1日だった。しかし、行き先に悩む理由はこれ以外にも存在した。J2の昇格プレーオフ準決勝、福岡対東京V、名古屋対千葉の試合も、この日に行われたのである。

 過密日程は、取材者のエネルギーを分散させることに繋がる。例えば、スポーツニュース。優勝争いと降格争いは伝えることができても、昇格プレーオフ準決勝まで細かく報じる時間的余裕がない。サッカーにそこまで時間を割くわけにはいかないのだ。

 というわけで、問題のシーンはスルーされた。名古屋対千葉。0−1で迎えた後半15分、田口の手にボールが当たったにもかかわらず、主審のホイッスルは鳴らず終い。田口はそのままドリブルで前進。同点ゴールを蹴り込み、試合を1−1としたシーンだ。

 0−1なら名古屋の負け。一方1−1では、リーグ戦の順位で下回る千葉の負けになる。引き分けがない試合。田口のゴールは、野球で言えば逆転の2ランホームランに値した。

 しかも、昇格を懸けた大一番だ。リーグ戦の試合とは重みが違う。そこで誰の目にも分かる誤審が発生した。大きく報じられなければならない、これはまさに事件である。それが知る人ぞ知るニュースに終わってしまった。それもそれでまた大きな問題だ。過密日程のおかげで。

 もともとこの手の問題を避ける傾向がある日本のメディアだが、この日行われた試合が、プレーオフ準決勝だけなら、さすがに重い腰を上げただろう。

 ルヴァン・カップと天皇杯。この2つのカップ戦はどちらか1つでいいと思う。前者を残したいのなら、U−23の大会にするとか、天皇杯との差別化を図るべきではないか。過密日程を促すばかりか、それぞれの大会のステータスを下げることになる。実際、J1勢でそれぞれのカップ戦にベストメンバーを送り込むチームは少ないのだ。

 それはさておき、誤審問題に話を戻せば、日本サッカー協会の審判委員会は、メディアに対しオープンな姿勢を見せている。2ヶ月に1度程度の割合で、レフリーブリーフィングなる催しを開催。メディアを招き、その間に起きた微妙なジャッジについて、審判委員長、審判副委員長自ら詳細に踏み込もうとする試みだ。

 これがかなり面白い。大きなモニター画面に、問題のシーンの映像が次々に流れるのだが、そのつど映像を止め、反則か否か、イエローか否か、レッドなのかイエローなのかを出席者であるメディアに、クイズ形式で投げかける娯楽性の高い趣向になっている。

 その中には、誤審も含まれている。隠し立てをしないフェアな精神をそこに見て取ることができるが、いずれも、クイズへの参加者であるメディア側を悩ませる難解な設問ばかり。10数問ある中で、かく言うこちらも、半分強しか正解することができなかった。

 判定に迷うシーンが、頻繁に発生することが、このクイズを通してよく分かるのだ。てっきりイエローだと思っていた反則行為が、ルール上の解釈に従えば、そうでなかったり、時代と共に変化していることを学ぶ機会でもある。

 判定について、メディアの皆さんも一緒に考えて下さい。これが、この催しを企画する審判委員会の意図だとすれば、世の中と結びついているメディアは、尻を叩かれたようなものだ。ジャッジについて、もっと積極的に報道しろと、言われているような気分になる。