経営戦略構文100選(仮)/構文17:JTBD/伊藤 達夫
JTBDはクリステンセンが提唱する新しい商品企画、開発の枠組みである。「顧客はジョブを片づけるために、商品・サービスを一時的に雇っているに過ぎない」という表現に端的であるが、ジョブという概念に対して商品・サービスがぴったり当てはまるわけではないことを示しており、示唆深い。戦略の基底としての顧客のセグメンテーションを否定していることや、ジャーニーの体験構築、体験提供業務の固有性、イノベーション概念の説明までを踏まえると、事業戦略のパラダイム転換を意味している側面もある
おはようございます。伊藤です。前の記事からそれほど日は空いていないでしょうか。今日は夕方まで稼働してはいけない日です。そして、今は午前中。カフェでミルクティーを飲んでいます。クリステンセンですがミルクシェークではありません。ごめんなさい。気晴らしでこの文章を書いています。
今日のお写真はプロ雀士の米崎奈棋さんです・・・。私は麻雀は弱いので、強い女子には憧れますね・・・。下記、ぱくたそより紹介文です。
日本プロ麻雀協会所属の米崎奈棋(よねさき なぎ)です。SEGA MJや雀ナビオンラインへの参戦、ニコ生番組『ハイステ!』『りんしゃん!』企画・出演、雀荘ゲストなど幅広く活動中しています!
プロ雀士ってすごいジョブですね。年収いくらなんでしょう。協会に雇用されているのか自営業者なのか、よくわかりませんが、すごいジョブですね。求人広告とか出ているんでしょうか?応募資格とか「麻雀が強いこと」とか書いてあるんでしょうか・・・。そうです、今日は「Jobs to be done」ですからね。ジョブという言葉がたくさん出てきます。
商品を買って使うというのを、人を雇って使うことに見立てている点がクリエイティブなところですね。ジョブ理論という本も出たので、基本的なところはさらっと抑えた上で、なぜ人を雇って使うことに見立てるといいのか?それが意味することは?といったことについて書いてみましょう。
クリステンセンはもう20年以上もこの考え方を主張していますが、今一つ、日本では普及しません。ただ、そろそろ普及してもいいかな、と思っています。理由としてはそれなりに「モノの製造」というインフラが整い、体験の提供という人間の感覚により自然な方向への転換が始まっているからですね。
ただ、似たようなことはハーバート・サイモンも言っているし、ボードリヤールも言っていました。言い方や、良しとすることは違いますが似たようなことは言っています。彼らが言っていたのは1960年代とかですからね・・・。50年前ですか・・・。なかなかせつないですね。
そもそもね、体験として欲するから、何かしら買うということになるわけですよ。体験として欲するということと、それを「モノ」や「サービス」で企業が実現することには乖離がある。ここを忘れるとうまくいかない。しかし、人はそれを忘れ、既存の商品機能をグレードアップする方向に向かってしまう。それが体験を満たすということを忘れるんです。
ピントのズレた方向へのグレードアップが後を絶たないのは、商品機能にフォーカスして考えているからですね。そして、体験にフォーカスして考えることがアカデミックな教育というか、科学的な教育を受けた人には難しいんですね。現象学的なんです。どちらかというと、現象学的に考えるには、古典力学的モデルと言いますか、そういう枠組みは有害ですから。
そして、もう1つの間違いは、人にフォーカスすることです。人の属性にフォーカスして、セグメンテーションを行うことの誤りをクリステンセンは厳しく批判しています。
人にフォーカスするからセグメンテーションで間違えるし「意外と一人の顧客にフォーカスした方が、売れる商品ができる」という話が出てきてしまうんですね。状況にフォーカスすればセグメンテーションは有害ではないし、素直に発生頻度の高い状況にフォーカスしてたくさん売れるだけです。
クリステンセンは状況にフォーカスしろ!と言っています。そのジョブが発生する状況にフォーカスして、その状況に対して解決策としての商品、サービスを提供するわけです。ただ、人はあくまで一時的に商品、サービスを雇用するだけですから、代替品があれば、すぐにそっちに行ってしまう。
だから、この枠組みで考えれば、ジョブが発生する状況についてフォーカスして商品の企画・開発を行うことができますね。既存の商品、サービスにフォーカスしないでいられる。だから、破壊的イノベーションを起こすことができる。
そうです。破壊的イノベーションの種は、状況に発生しているジョブと、その解決に一時的に雇われている商品の提供する解決策のズレにあるわけです。商品がジョブにぴったりはまることなんてありえませんからね。ズレは必ずある。そのズレを見付けられれば、イノベーションを考えるきっかけになるわけです。
これはエクスペリエンスへのフォーカス、商品やサービスのパッケージ化、ジャーニーの提供という枠組みが正しいことも意味しています。ただ、このあたりは書いてもほとんどの人がわからないのでやめておきましょう。
それとね、人にフォーカスせずに状況にフォーカスするというのは、いわゆるSTPのフォーカス対象の転換も意味しています。
コンサルタントは市場規模を出しますが、たいていは人と単価の掛け算で出していきますよね。しかし、状況と単価の掛け算が正しいわけです。これって、事業戦略のベースとなる単位が変わるっていうことですよね。すごいパラダイムシフトが起こるわけですが、興奮してしゃべってもほとんどの人はわかりません・・・。まあ、戦略なんてほとんどの人には要らんのですよ。悲しい現実ですね。
クリステンセンが20年言っても分かってもらえないことです。私が言っても誰もわかってくれないのは仕方ないことでしょうね。
さて、サイモンはこれを別角度から説明しています。サイモンは50年前から説明していますけどね。気が遠くなります。人が求める効用とその実現手段の探索という考え方で説明しているわけです。
何か求める効用があっても、それを満たす商品が見つからなければ既存にある何かで代替しますよね。その代替した何かで満足するわけです。だから、満足度をいくら図っても意味がないことになります。これは原理的なことなので、この説明でわからなければ絶対に分からないでしょう。
ただ、いわゆるCS指標、「満足度」が成果と相関せず、NPS指標が相関する現実を見ても、正しさは明らかですね。
また、ボードリヤールは、商品を製造する「労働生産過程」と消費が完全に別であることを指摘し、それを嘆いています。ボードリヤールはマルクスにかぶれていますからね。モノはモノとして扱って欲しいし、その作るという尊い作業から離れるべきでないと考えているわけです。これ、「モノ作り」に近い信仰ですよね。
エクスペリエンスへの移行において、「モノ作り」信仰はむしろ害悪だと言えるでしょうね・・・。こういうことを言うから嫌われるんでしょうね・・・。まあ、仕方のないことです。
と、意味不明なことを書いてみましたが、伝わりますでしょうか?分かれば有用なんですけどね。さすがに一般に普及しなさすぎだろうと思うので、書いてみました。
それでは今日はこのあたりで。次回をお楽しみに。