イラスト/スヤマ・ミヅホ

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 警視庁の発表によると、2016年の特殊詐欺の検挙人員は552人。そのうち、10〜30代が87%を占める。役割別では、詐欺で現金を受け取る、いわゆる「受け子」役が48%。わが子が詐欺加害者になる可能性は、少なからずある。

「友達や先輩から“日当5万円のいいバイトがあるよ”などと声をかけられ、軽い気持ちで引き受けると、実は受け子だったというケースは多い。受け子は“カモ”のもとへ出向いての現金・カードの受け渡しや“〇〇駅のロッカーに入っている物を取ってこい”といった指示を受けて、遂行するのが主な役割です」

 と詐欺問題に詳しい堀井準弁護士。受け子は“バイト”の紹介者か、紹介者の背後にいる誰かから電話やLINEで指示を受けるが、大もとの依頼者を知らずに働かされていることがほとんど。

「途中で“何かおかしい”と気づいたものの、報復が怖くて引き返せないケースも多いです」(堀井弁護士、以下同)

 取り返しがつかなくなる前に、怪しいと思った時点で足を洗うことが重要だ。

「警察に捕まった場合、無罪か有罪かの争点となるのは、詐欺だと知っていて加担したかどうか。鍵を渡されたときやロッカーを開けたとき、怪しいと思わなかったか? と必ず追及される。言い逃れはできません。

 そうなってしまう前に、必要以上に怖がらず、わかった時点ですぐに警察に相談すること。詐欺組織の末端である受け子が逃げたとしても、組織は痛手でないこともあるし、捕まるリスクを恐れ、まず手を出してきません」

 また最近では、受け子とともに、ATMなどから振り込まれた現金を引き出す「出し子」の低年齢化が目立つ。今年4月、警視庁滝野川署が振り込め詐欺の容疑者として公開した画像が、本人の出頭により14歳の女子中学生と判明、すぐに削除された。

 詐欺・悪徳商法評論家の多田文明さんによると、

「ここ数年、中・高校生の未成年者を受け子として仲間に引き入れる手口が広がっています。小遣いが欲しい世代で犯罪情報や社会的な知識が乏しく、素直に指示を聞くために誘いやすいから、というのがひとつ。それに画像公開の捜査においても、相手が未成年者となると、警察も慎重にならざるをえないからです」

 子どもを詐欺犯罪に利用する手口は、家にいながらにして、親の目に見えないネットワークで誘い込んでいるため、大人は気づきにくい。

「対策としては月並みですが、普段から親子の会話を多くして、子どものちょっとした変化や悩みに気づけるようにしたり、万一の場合、子どもがすぐに相談できる関係でいることが大事です」(多田さん)

<教えてくれたひと>
多田文明さん◎詐欺・悪徳商法評論家。キャッチセールスやあらゆる詐欺商法に精通。近著に『迷惑メール、返事をしたらこうなった。詐欺&悪徳商法「実体験」ルポ』 (文庫ぎんが堂)

堀井準さん◎市民目線で法的問題を解決することを目指す「弁護士法人シトワイヤン」代表、弁護士。悪徳商法、詐欺被害の救済に豊富な経験と実績を持つ