共謀罪の導入で、警察の「情報能力」が格段にアップすることが懸念されている。その先には、日本の監視社会化が待っているのか?

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まだ起きていない犯罪を「計画段階」でも処罰できるようになる「共謀罪」については、これまで多くの問題点が指摘されてきた。

なかでも最も懸念されている問題のひとつが警察の捜査、情報収集、情報蓄積の権限が大幅に強化され「日本の監視社会化が避けられない」という点だ。

仮に共謀罪が導入されれば、警察は「まだ起きてない犯罪」の「共謀」や「計画」の捜査を理由にした監視や情報収集を今よりも公然と行なうことが可能になる。

そうして集めた情報が警察内部に蓄積されれば「警察の情報能力」は飛躍的に向上し、それは情報という「武器」を介した警察権力の大幅な強化につながることになる。

だが、それが本当に意味するものは何か? 情報の力が「人」や「政治」を、そして「国家」を支配する時代が「共謀罪」の向こうに見える!

■スノーデンが警告するハイテク「監視社会」

「共謀罪が導入されれば、『監視社会』の波が確実に押し寄せます。その先に待っているのは、ひと言でいえば警察がすべてを支配する世界です」

こう語るのは、日弁連で共謀罪法案対策本部事務局長を務める弁護士の山下幸夫氏だ。

「政府は共謀罪の対象が『組織的犯罪集団』に限られるから乱用の心配はないと説明していますが、『組織的犯罪集団』の定義は極めて曖昧(あいまい)です。そこを曖昧なままにして、犯罪の計画段階や準備段階で取り締まろうとすれば『任意捜査』という形で、より広い範囲に網をかけて日常的に監視することが必要になる。その対象には、いわゆるテロや組織犯罪と無縁な一般市民も含まれるでしょう。

共謀罪の恐ろしさはこうした警察による情報の収集や蓄積と、それがもたらす『監視社会化』に法的な裏づけを与えてしまうことです」(山下弁護士)

では、日本の「監視社会化」が進むと、具体的にどんなことが行なわれるのだろうか?

そのヒントとなるのが、アメリカ国家安全保障局(NSA)の機密文書を公開した元CIA職員、エドワード・スノーデン氏が明らかにした「ハイテク監視大国」アメリカの実態だ。アメリカでは最新のテクノロジーを駆使した、次のような「諜報(ちょうほう)プログラム」が存在するという。

まず、アメリカ国内のすべての電話通話に関するメタデータ(通話内容以外の発着信電話番号、日時、場所、通話時間などの情報)を毎日、アメリカの電話会社に提出させるプログラム「バルク・コレクション」。そしてグーグル、フェイスブック、アップルなどのアメリカにあるIT企業から電子メールやSNSなどの内容などを秘密裏に提出させる「プリズム」。

他にも、アメリカの通信用海底ケーブルから目当ての情報を直接入手する「アップ・ストリーム」。携帯電話基地局を装いながら、携帯の通話情報を監視する「スティングレイ」などだ。

スノーデン氏によれば、こうしたシステムを使って日常的に市民のプライバシーの監視は行なわれていて、集められた膨大な情報は“スパイのグーグル”とも呼ばれ、情報機関専用に開発された高性能検索プログラム「XKEYSCORE」(エックスキースコア)によって分析されているという。

ちなみに先月、新たに公開された日本に関する「スノーデンファイル」の中には、NSAが日本側に対して、この「XKEYSCORE」を提供したという記述が確認されている!

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(取材・文/川喜田 研)