「グレートウォール」が万里の長城っていうか「進撃の巨人」だった

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万里の長城が作られたのは、怪獣の大群と戦うためだった!

そんなクレイジー極まる思いつきそのままに突っ走る怪作、『グレートウォール』が4月14日から公開中だ。監督はチャン・イーモウ。『初恋のきた道』とかのころは文芸映画の人っぽかったけど、今やボンクラ中国歴史大作の第一人者である(偏見か?)。加えて製作はこの手のSFX特盛歴史ネタの実績も多いレジェンダリー・ピクチャーズと盤石の布陣。主演はマット・デイモンだが、先日公開された「キングコング 髑髏島の巨神」にも出演していたものすごい美人のジン・ティエン、顔が面白い悪役をやらせたら世界一のウィレム・デフォー、香港の至宝アンディ・ラウらが脇を固めている。


ていうか『進撃の巨人』だ!


舞台は宗王朝時代の中国(ちなみにこの時代設定には大して意味はないです)。火薬を求めてヨーロッパから東方へとたどり着いた傭兵ウイリアム(マット・デイモン)らは、万里の長城を守備する中国兵たちに捕まってしまう。彼らに刑が執行されそうになったその時、長城に向けて不気味な怪物の群れが襲来! 4本足で高速移動し人間を食らう4〜5メートルほどの緑色の怪物に対し、長城の様々な兵器で対抗する中国兵。長城は怪物との戦闘の最前線だったのだ! 

いきなり始まった戦いで武功を挙げたことで長城の将軍であるリン・メイ(ジン・ティエン)らに歓迎されるウイリアム。しかし、長城には彼の求める火薬が山ほどあった。これを奪って逃げるか、はたまた止まって怪物と戦うか。どうするウイリアム! というお話。

といっても、ストーリーは割とガバガバ。ご都合主義じゃん、と言っちゃえばそれまでという内容である。なんだけど、とにかくこの映画はとにかく絵面が魅力的。霧がたなびくなかに文字通り万里の彼方まで続く長城が浮かび上がるショット。長城の上を色鮮やかな甲冑に身を包んだ兵士たちの大群(ものすごく人数が多い)がずらーっと並んでいる様。いざ戦闘となれば城内の巨大な投石機から爆弾がビュンビュン放たれ、数千本の矢が乱れ飛び、怪物の群れにブスブス刺さる! スケールの大きな絵面は「デザインにも撮影にもお金かかってます!」という感じでとても楽しい。

巨大な壁である長城に向かって、群れをなして襲いかかる人食いの怪物、饕餮(とうてつ。中国神話の怪物です)。そして長城を防衛する兵士たちによる集団戦の雰囲気はかなり『進撃の巨人』っぽい。壁からヒモでぶら下がって肉弾戦やったりするし。本当に見たかった実写版はここにあったんですよ! あの前後編2本に疑問のある人には是非ご覧いただきたい。

気分はワールド・ウォーZ・イン・チャイナ


おや、と思ったのはエンドロールを見てる時。そこには「STORY:MAX BROOKS」の文字が。マックス・ブルックスといえば傑作ゾンビ小説『ワールド・ウォーZ」の作者のあの人しかいない。

実はこの『グレートウォール』、元々の構想は製作のレジェンダリー・ピクチャーズのCEOであるトーマス・タルとマックス・ブルックスが考えたものだとか。言われてみれば、「人を食う上に話の通じない怪物の大群と、壁を築いて戦う人類」って構図には既視感がある。ていうか『グレート・ウォール』は映画『ワールド・ウォーZ』のイスラエルのくだりにかなり近い。いわば『グレート・ウォール』は変則的なチャイニーズ・ゾンビ・ホラーなのである。

そう思って見れば、脳が処理しきれないほどの量の饕餮が大集合して渦を巻く絵面も納得がいく。あれは高速でガシガシ走り回るモダンなゾンビに、幾分のアレンジを加えたものだったのだ。

歴史大作のフリをしたハイカロリーなゾンビ映画×進撃の巨人、それが『グレート・ウォール』だったのである。筋金入りのホラーマニアもそうじゃない人も、想像以上にいろんな人が楽しめる内容になっているので、是非とも見てほしい一本だ。
(しげる)