毎年報じられる正月のおめでたくないニュースといえば、「餅をのどに詰まらせて救急搬送」というもの。東京消防庁によると、2011年から2015年までの5年間に、餅などをのどに詰まらせて562人が救急搬送されている。特に65歳以上の高齢者の事故が多く、約9割を占めている。

お餅(Jun OHWADAさん撮影、Flickrより)

事故を防ぐポイントと応急手当ての方法

東京消防庁の「広報テーマ 2016年12月号」によると、餅などによる事故を防ぐポイントは4つ。

1.餅は小さく切って、食べやすい大きさにする
2.急いで飲み込まず、ゆっくりと噛んでから飲み込む
3.乳幼児や高齢者と一緒に食事をする際は、適時食事の様子を見るなど注意を払うよう心がける
4.いざという時に備え、応急手当ての方法をよく理解しておく

東京消防庁報道係の方に話を聞くと、一番大事なのは「ゆっくりと噛むこと」だと繰り返した。

万が一、餅などを詰まらせてしまった場合は大きな声で助けを呼び、119番通報とAEDの搬送を依頼、直ちに気道異物除去を始める。

軌道が塞がれていることが疑われる症状は、チョークサイン(窒息を起こし、呼吸ができなくなったことを他の人に知らせる世界共通のサイン)を出しているとき、声を出せないとき、顔色が急に真っ青になったときなどが挙げられる。


チョークサイン(Jタウンネット編集部撮影)

傷病者に呼びかけて反応がある場合、咳をすることが可能であれば、できる限り咳をさせる。咳もできずに窒息しているときは、年齢・性別に関係なく背部叩打法(はいぶこうだほう)を行う。

実施手順は簡単。

1.傷病者が立っているか座っている場合は、やや後方から片手で傷病者の胸もしくは下あごを支えて、うつむかせる
(傷病者が倒れている場合は、傷病者を手前に引き起こして横向きにし、自分の足で傷病者の胸を支え、片手で傷病者の顔を支える)
2.もう片方の手のひらの付け根で、傷病者の肩甲骨と肩甲骨の間を強く4〜5回、迅速に叩く
3.回数にとらわれず、異物が取れるか、反応がなくなるまで続ける

呼びかけに反応がない場合または反応がなくなった場合は、直ちに心肺蘇生を開始すること、としている。

ほかにも異物を除去する方法として「ハイムリック法」が知られるが、東京消防庁報道係の方によると

「腹部を圧迫して負担をかけるため妊婦などには向かない」

という。人の命を左右する応急手当は一瞬ためらわれるかもしれないが、

「背部叩打法は誰でも簡単にできるので、応急手当ての方法として周知を進めている」

とのことだった。

備えあれば憂いなし。いざという時に備えて、頭に入れておこう。