【疑問】同じ排気量のエンジンでもパワーに大きな差があるのはなぜ?

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自然吸気エンジンは回転数に比例してパワーが上がる

良いエンジンとはどんなエンジンでしょうか? その答えはないんですね。ある目的があって、そこにピッタリとマッチするのが良いエンジンなんです。普遍的に万能なエンジンなど、存在しないのです。

パワーというのもエンジンの性能のひとつですが、それがすべてではありませんね。パワーを狙ったもの、燃費を狙ったもの、低回転でのドライバビリティを狙ったもの、いろいろな特性があって結果としてパワーを見れば差が出てしまっている、ということなんです。


ノンターボではパワーを上げるのに回転を高めるしか方法がありません。例えば20kg-mのトルクを4000rpmで出せば111.70馬力ですが、6000rpmで出せば167.55馬力になります。8000rpmなら223.40馬力です。

単純に回転数に比例するので、10%高回転化することができれば、10%パワーアップするのです。簡略化した式でいえば、(トルク)×(回転数)÷716.2でパワーが出ます。実際のエンジンの性能計測でもトルクを計測して、それに回転数を掛け合わせて計算でパワーが出ます。

ノンターボの場合、高回転に合わせると低回転でのトルクが細くなります。高回転化は吸排気ポートが太くなり、カムシャフトも高回転型になるので、低回転では空気の流速が低く、安定した燃焼が難しくなるので、トルクが細くなってしまうのです。

吸排気ポートを細くしてカムシャフトも低回転型にすれば、低回転のトルクはしっかりと出せますが、高回転の伸びは悪く、パワーが出ません。最適な特性を得るには、どこかを捨てて、性能を出す必要があるのです。

ターボの場合は過給圧分のかけ算でパワーが決まる

最近トレンドとなっている直噴ターボは、もっと自由度が高いエンジンです。高精度の燃焼制御が可能な直噴と、いわば可変排気量制御であるターボの組み合わせですから、当然ですね。

ただパワーに絞っていえば、それは過給圧(ブースト)によって決まってきます。4気筒で1300rpmから使いたい、逆に8000rpmまで回したい、というような特性はターボもノンターボも同じです。ただパワーはそこに過給圧を与えることで決まります。

150馬力/6500rpmのエンジンがあったとします。そこに過給圧0.5のターボを与えると1.5倍の225馬力/6500rpmになります。過給圧1.0なら300馬力、過給圧1.5なら375馬力になります。実際にはロスが出たり、過給圧を高めると圧縮比を低くするので、パワーは少し低めになります。ただ計算としては、単純に(NAでのエンジンパワー)×(過給圧+1)でパワーを概算することができます。ちなみに過給圧に加えた1は、大気圧分です。


2リッター4気筒直噴ターボは、世界中の自動車メーカーが持っているエンジンです。そして、その特性はさまざまです。スポーティに高回転までシュンと回るのはキャディラック用だったり、リニアにNAのようなフラットトルク感があるのはシビックタイプR用ですね。

VWグループの2リッターは低回転からトルクが出てくるダウンサイジング志向です。トヨタは、そういう意味では中間的で、どちらとも付かない印象です。

結局自動車メーカーが、どのようなキャラクターのクルマに搭載するのか?  に合わせてエンジンをチューニングすることになるのです。パワーはその性能のひとつであって、それ自体がクオリティや技術力を示しているわけではないんです。

(文:岡村神弥)