83歳筆者の「Windows 10アップグレード」一部始終(前編)...パソコン歴40年近くの自分も悪戦苦闘
画像はイメージです(Global Panoramaさん作成、Flickrより)
マイクロソフトの最新OS「Windows 10」。そのアップグレードをめぐって、ちょっとした混乱が世界各国で発生したことは記憶に新しい。
1970年代末からパソコンを愛用する、現在83歳のぶらいおんさんも、そのアップグレードをめぐり悪戦苦闘した一人だ。その一部始終を、全2回で語ってもらう。
悪漢Mの誘惑には乗らないよう気を付けていたが...
このテーマについて書こうとすれば、色々な立場から、色々な書き方があるだろう。しかし、ここでは専ら筆者の実体験を、それも筆者の実際のPC利用法に即して述べることにする。
筆者はPC技術者という訳では無い。かと言って、高齢者の単なる趣味や暇つぶしで、PCに触れているわけでも無い。
ところで、本コラムの連載も、この原稿を書いている時点で既に20回は超えたようだ。それで、このコラムを前から続けて読んで下さっている読者なら筆者がPCとどんな関わり合い方をして来たか?そして今、どんな活用をしているか、大凡ご存知だろう。
しかし、そうではなく偶々この回のコラムを目にされた方は、83歳の高齢者というだけでは、そんな人間がWindows 10のトラブルについて、何を書こうとしているのか?そもそもWindows 10がどんなものか、理解さえしているのだろうか?仮に多少知っているにしてもPCについてのキャリアはどれほどのものか?さっぱり見当も付かぬであろうから、筆者のPCバックグラウンドについて、ここで簡単に説明して置く。
現在、筆者が略常時使用しているPCは、タブレット(OSはAndoroidとiOS)とスマートホン(OSはAndoroid)を除き、デスクトップパソコン2台(OSはWindows 8.1とWindows 7)およびノートパソコン(OSはWindows 10)(これは、通常のラップトップとタブレット利用が切り替え可能で、プレゼンテーションの際は両面ディスプレイ機能も利用出来る)の3台ということになる。
トラブル発生PCは、機能では最上位機種で、日常、PCにまつわる全てを処理する(現時点でのOS Windows 8.1)搭載デスクトップPCである。実は、このPCには、これまで2回Windows 10をインストールし、そして2回Windows 8.1にダウングレードしている。その挙げ句、現時点ではWindows 8.1で作動させている。
何故、そんな面倒なことをしているのか?については、これから少しずつ述べることにするが、その前に、そもそもWindows 10の、取りようによっては「強制的」とも思えるMicrosoft社のインストール拡大方針や、それに伴う煩わしさや鬱陶しを、筆者はかねがね苦々しく思って来た。取り敢えず、順調に動き、使い勝手にも格別問題の無いPCのOSをわざわざ未知の(もしかすると、使い勝手も逆に悪くなるかも知れない)ものに変更する必要があるのか?少なくとも筆者は現時点で、今のOS、Windows 8.1に何か問題点を感じているわけでは無い。
それにも拘わらず、ノートPCには、既にWindows 10をインストールしたのは、また何故なのか?についても、説明しよう。
実は筆者ぶらいおんは、現在地元の生涯学習活動の一環として設けられているパソコン教室の講師をボランティアで引き受け、みんな自分より年下の高齢者である受講者の面倒を少し見ている。
それらの受講者たちは、受講条件が、「各自パソコン持参のこと」となっているため、夫々異なったバージョンのOSをインストールした自分のPCを持ち込んでいる。講座に登録している人達の内、常時15人程度の方が教室に見えるが、PCのOSとしては、現時点では矢張りWindows 10が一番多く、次が8.1、そして7の方も居られる。
こういった状況を踏まえて、講師として筆者は一応どのバージョンのOSにも対応できるようにして置こう、と考えた上、講師として自分が会場に持ち込むノートPCのバージョンはWindows 10にしてある。
殆どのPCユーザーは、パソコンの電源を投入し、立ち上がった状態で先ず、一番利用する機会が多いのはスタートメニューか、(あるいはブラウザー)では無いだろうか?これについてはWindows 8で、使い勝手は最悪となり、余りにも評判が悪かったため、さすがにMicrosoft社も放って置くわけにも行かず、Windows 8.1、10では改良されたので、これに対応するような設定にさえしておけば、Windows 7以前と略同じようにスタートメニューが利用出来るようになったのは、誠にご同慶の至りである。
スタートメニューの問題は一応解決したとしても、実際には、教室で各自個々のOSやPCの設定の相違も有って、ある事項について説明しようとする場合、講師が「皆さんのPC画面の右側上の××をクリックして、とか開いてなど」と一概には言えぬことが、多々あったりするので、この辺りは矢張り不便だ。
話は変わるが、長く生きているだけあって、筆者のPC歴は結構長い。
そこで改めて、本稿を書くに当たり、自分が専用のPCを導入した際の最初のOSは一体何だったのだろう?と考えて、ざっと調べてみた。ひょっとすると、勘違いもあるかも知れないことを予めお断りした上で、筆を進める。
筆者がPCを本格的に(言い換えれば、飯を食うために)利用し始めたのは、それまで勤務していた東京丸の内の大手特許法律事務所を退所して、フリーランスの技術翻訳者として独立した時期と略一致している。それは1978年(昭和53年)のことで、翻訳業はワープロ専用機でスタートした。その後、直ぐに日本でも普及し始めたIBMパソコンのOS、MS-DOSを搭載したPCを入手して仕事に活用した。その後、国内では大いに普及したNECのPC-9800シリーズなども利用したが、いずれにしても、これらはMicrosoft社が一枚噛んでいるとは言え、現在のWindowsシリーズとは別物である。
いわゆるOS、Windowsシリーズが登場するのは、1990年代に入ってからのことで、Windows 95、98などと聞けばお馴染みの方もあるだろう。従って、筆者がMicrosoft社のWindowsシリーズと関わって来たのは、この時以来である。
率直に言って、筆者も含めた一般人は、Apple社のMacシリーズは別として、パーソナルコンピュータ(PC)を使う以上Microsoft社のOS、Windowsシリーズを利用しないわけには行かなくなった、というのが現実である。
これに関し、日本人、坂村 健の手になるTRONも、こうしたOSとして、ワールドワイドに大飛躍する余地が十分あったことを思い起こすと、誠に残念でならない。
(PCを日常的に利用する、筆者個人の感覚としては)時に横暴とさえ感じるMicrosoft社の対応を苦々しく、また腹立たしく感じる度に、この日本発のTRONを思い起こす。同時に筆者には(些か飛躍の謗りを免れぬかも知れぬが)敗戦以来、実質的に米軍に占領された状態のまま、未だに米軍基地の7割を押しつけられている沖縄の窮状(現在の辺野古沖埋め立ての反対闘争)がオーバーラップしてならない。
筆者のPCも、OSはずっと米国Microsoft社に占領されたまま、Windows 3.xからWindows 95、98を経て、XPとか皆さんもお馴染みのシリーズを経過して今のWindows 10に至っているわけだ。
勿論、それなりにサービスも受けて来たわけだが、その間、Microsoft社に唯々諾々と上納させられて来た負担金も、個人の事業者にとって決して軽いものでは無かった。毎年の長者番付でビル・ゲイツの名前と顔写真を見る度に、正直なところ複雑な気持ちを抱かずには居られなかった。バットマンのような坂村 健さんが現れて余りにも横暴な悪漢Mに一泡吹かせてくれないだろうか?と密かに夢見たものだが、現実はご存知の通りだ。
筆者は、この最上位機種PC(当初Windows 8搭載)を、自分でパーツを選択し、大手PCメーカー(日本ヒューレット・パッカード株式会社)からネット経由で購入したのだが、ご存知のスタートメニュー関連の不具合で、使い勝手の悪さを呪っていたところ、どうやらこの欠点を改良した8.1で、ようやく使えるようになったかな?と感じ始めていた。ところが、今年の春頃?だったろうか?「あなたのPCは、条件を満たしているので、Windows 10に無償でアップグレードするように」という趣旨のメッセージが、電源を投入する度にしつこく表示されるようになった。
元々、筆者は長い間のWindowsシリーズの利用経験からして、バグを解消するためのアップデートをこまめに行って、該当バージョンのサポート終了まで、使い続ける、という方針で、これまでやって来た。従って、たとえ無償であろうが、無かろうが、未だ購入して余り日も経っていない上、サポートも継続されているOSを、専らMicrosoft社サイドの都合で、どうこう言われたから、と言って、これまで続けて来た我が方針を直ちに変更する気など、さらさら無かった。
ユーザーの方にその気が無いのに、しつこくアップグレードを迫るメッセージを頻繁に表示させるMicrosoft社の手法には先ず、腹が立った。
元々、筆者はOS Windowsアップデートの設定も、「更新プログラムを自動的にダウンロードしたり、インストールしたりすることはせず、単に通知のみを受け取る」という設定にしてあるくらいだ。それは、何かデリケートな処理をしている最中に、Microsoft社の都合で、更新プログラムのダウンロードやインストールを勝手に始められて、こちらの大事な処理が、中断されたりしては困るからだ。その結果、当方の作業が失敗に終わったりすることを回避する目的で、意識的に、そのように設定してある。
この点に関し、Windows 10へのアップグレードを誘導するケースで、そのやり方は、更に質(たち)が悪くなった、と感じていた。それこそ、その辺りは消費者生活センターでも取り上げられるほどの社会問題となったわけだから読者諸氏もよくご存知であろう。
これだけ注意して、悪漢Mの誘惑には乗らないようにして来た筈の筆者ぶらいおんも、或る時つい、うっかり先方の策略にはまってしまった。それは、筆者がこれまで使用していた、どのバージョンのWindowsにおいても、更新プログラムのアップデート通知を確認すると、間を置かずに、Microsoft社の推奨するアップデートには応じることを習慣として来たことに起因する。
こちらサイドの想像であるが、Microsoft社は正面からWindows 10へのアップグレードを薦めても、応じないユーザーに対し、別な紛らわしい表現によって、その方向に誘導する作戦を立てたらしい。それは通知の内容を「ご利用のPCに、強く推奨する更新プログラムのアップデートがあります。」という趣旨の表現であった、と記憶する。
従来の感覚から、筆者のようなユーザーサイドでは「アップグレード」と「アップデート」という単語は、これまで明らかに区別して使用され、また、して来た、と信じていたのだが、この度の「更新プログラムのアップデート」は、随分大容量の空きを要する「アップデート」だな!?と訝しく感じたものの、まんまと、この策略に引っ掛ってしまった。
「同意」のクリック後、延々と続く処理に、さすがにおかしいな?とは感じたし、多分、途中で、はっきりしないが「このまま続けると、Windows 10にアップグレードされますよ」という趣旨の確認は求められたかも知れない。
しかし、一旦進行し始めた処理を途中で中断させるのは、些か抵抗を感じるものだし、確か1ヶ月(?)以内だったら、元のバージョンに戻せる旨のコメントを何処かで読んだ記憶がある。「まあ、いざとなれば、そうすりゃいいさ!」で、優柔不断状態のままダウンロード、インストールされてしまった。
再起動させてみて、驚いた。全くお呼びで無いPC内のアプリが大きなアイコンで沢山表示されていて、こちらが作業をスタートさせるために参照したいコントロールパネルやPC内のパーティションしたEドライブのDataやDocumentsのフォルダーもどこから参照したらよいのか?全く分からず、うろうろした結果、取り敢えず、キーボード上のWindowsキーを押して、見慣れた壁紙のページに戻り、ホッとする有様で、初体験のWindows 10は散々であり、早々に元のWindows 8.1に戻してしまった。
筆者は、そのままWindows 8.1を使い続けていたが、パソコン教室で、Windows 10を最初からインストールしているPCを購入した受講者の画面を見ると、例の沢山のアプリが大きなアイコンで表示される使い勝手の悪い状態では無く、これまで見慣れたWindows 7や8.1と同じようにディスプレイされているようだった。
また、別な受講者はWindows 10へのアップグレードを試みたが、途中でトラブル発生。PCメーカーにサポートを求めたところ、「そのPCにはWindows 10をインストールしない方がよい」と言われ、「このまま、今までのOS(Windows 7)を使い続けます。」と言っていた。
筆者による第2回目のインストールは、はっきり自分の意志で行ったものである。それは、無償インストール最終期限とされた7月末(実際には、7月30日)に決断し、実行した。
その経緯は、「セキュリティ面は、Windows 10により大幅に強化された」という入手情報に心が動かされたことと、また、どうせ最終的にはWindows 10への流れに従わざるを得ないだろうという諦めの境地の両者によるものである。
そんな訳で、2回目のダウンロードとインストールを行ったが、最終期限日だった故もあったのか?ダウンロードに思わぬ時間が掛かり、更に引き続くインストールの完了、PCの再起動の全てまで立ち合うだけの時間を確保することが実際には出来なかった。それは、その日、果たすべき所用があったためで、止むを得ず、処理途中の電源を落とさず、「ままよ」とばかり、外出してしまった。
可成りの時間経過後、帰宅したので、当然PCはスリープ状態となっていたが、マウスを動かすと、中断されていた再起動が何度か繰り返され、どうにか「終了状態」に到達することが出来た。
それで、兎に角、このWindows 10を使いこなそう、という意気込みを持ってやってみると、「まあ、どうにかなるかな?」という感触を得た。ところが、その後、どうしても看過出来ないトラブルが発生し出した。
それは、PCが立ち上がった際のディスプレイ解像度が極端に粗く、その結果、表示されるアイコンも不自然に大きくなり、更にその配置位置まで、その都度変わってしまうので、先ず、PCに装着されたディスプレイアダプターの解像度を変更しようと試みた。しかし、全く言うことを聞いて呉れない。それで、このアダプターのドライバーを更新してみたが、上手く行かず、結局、業を煮やした挙げ句に、このアダプターを無効にしてみた。すると、Microsoft社の規定のアダプターが作動し、解像度は希望の数値に変更出来るようになった。
「やれやれ、よかった。これで行けるか!」とホッとしたのも束の間、PCを再起動させたり、Shut down後に、新たに電源を投入すると、結局、元の、PCに装着したトラブル・アダプターの設定に戻ってしまい、解像度は見苦しく、粗い状態を再現する。何度やり直してみても駄目なので、インターネット上で検索してみると、Windows 10インストール時に、この特定メーカーのアダプターでは同様のトラブルの発生することを突き止めた。その対処法も出ていたので、早速やってみたが、やゝ面倒な処理を伴い、略完了直前に、PCの方が思い通りに処理できない状態となってしまった。
そもそも、この不具合は、2回目のダウンロードおよびインストールを正常に終了できなかったことが影響したのか、どうか?筆者には分からない。しかし、このままでは日常的利用には相応しくないので、再度ダウングレードすることにした。ところが、その際、筆者も可成り焦っていたのか?Windows 10のアンインストールに際し、やらない方がよい設定をしてしまった。それは、PCを工場出荷時の状態まで戻してしまったことだ。尤も、その条件を指定した際、PCに装着したディスプレイ・アダプターのドライバーも含めて工場出荷時まで戻さねば、同じことの繰り返しになるかも知れない?という危惧が筆者の頭をかすめたこともまた、事実であるが...。
しかし、結果的には、これが思わぬ労力と時間の浪費を筆者にもたらしたことは否めない。そして今、どうやらその問題をクリアして、全てが順調に進んでいた、以前の状態にまで戻せたものと考えて居る。
それなら、もう、このままWindows 8.1で使い続けるのか?と問われれば、「そうしたいのは山々だが、そうも行かないだろう」というのが、今の筆者の偽らざる心境である。
それは、たとえば、先刻届いた[Club Microsoft ニュース]というEメールのプロモーションによれば、 "Windows 10 Anniversary Update 提供開始"とあり、「Anniversary Update には、新たなユーザー体験をもたらす Windows Ink、Cortana、ゲーム エクスペリエンスをはじめとするさまざまな新機能が搭載されています。Windows 10ユーザーの皆様は、これらの新機能を無償でお使いいただけます。」とある。
そうとなれば、既にWindowsの船に乗ってしまい、簡単には下船できない身にしてみれば、置いてきぼりにされないためにも、Microsoft船長の方針に唯々諾々と従う他に道は無いではないか。
筆者は、ようよう整った我がPCの安定Windows 8.1状態を3度捨て、間もなく、絶対的権力を有するM占領軍司令官の仰有る通り3度目のWindows 10インストールを実施する次第となった。
「でも、そのためにお金払うの?もう無償ダウンロード期限は切れてるんでしょ。」「その筈なんだけど、実際はそうじゃないみたいなんだよね。前宣伝とは違って、今でも無償ダウンロード(いや、そうじゃなく更新プログラムの無償アップデート)は出来るみたいなんだよねぇ。M司令官サイドにしてみれば、目先の金より、ユーザーを未来永劫に取り込み、奴隷として支配し続けることの方がよっぽど大事なわけよ。それで、今でも相変わらず、"必要な更新プログラムをアップデート"しろ、しろ!としつこくメッセージを送り続けて来るよ。」「ふーん、よく分からない。」
「分からない?でも、昔からよく言うでしょ。泣く子と地頭には勝てないって!それが今の私の偽らざる心境なのよ。」
(実は、ここまで書いた、この原稿の公開で一件落着の筈であった。ところが、実際は、この原稿執筆後、Windows 8.1の大容量アップデートに従った上、「Anniversary Update」までゲットしようとした筆者の試みは失敗に終わった。「何故か?」結論から言えば、筆者の上記推測には誤りがあり、このルートではWindows 10へのアップグレードは(一応)不可能であった。
「一応」と書いたのは、可能かも知れない別ルートも見えたからだ。だが、筆者はそのルートはトライしなかった。
「それは何故か?」その理由も含め、その後の次第を、本コラムに続く(後編)として、急遽書いてみることにした。それは、その内容が、ややPCオタク的になるかも知れぬが、筆者のようにPCはそれなりに活用するものの、PC専門家では無い一般ユーザーの参考には、多分なるだろう、という考えに基づく。
最後に一つだけ、ここで明かしておこう。この原稿を執筆している筆者のメインPCの、現時点のエディションは"Windows 10 Pro"となっている。幸いなことに、今のところトラブルは殆ど無く、順調に作動している。無論、そのために新たなライセンスを購入したわけでも無いし、追加料金のようなものは一切発生していない。その経緯は引き続く(後編)で披露する。)