大波乱の沖縄!明日準決勝に突入!!嘉手納・那覇西・小禄・美里工、優勝はどこだ?!【前編】

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【準決勝前展望:嘉手納&那覇西編】

 高校野球選手権沖縄大会はベスト4が決定し、来る土曜日に準決勝が翌日決勝戦が行われる予定だ。春の優勝校糸満、準優勝豊見城、3位沖縄尚学、4位美来工科が敗れただけでなく、秋の優勝校八重山、準優勝興南、4強那覇商までもが敗れ去ってしまったことで、県外では「大波乱の沖縄県」と騒がれている。

 しかし、(大会前に選手権沖縄大会の展望を書いた者が言うセリフではないのは重々承知の上で述べさせて頂けるなら)僕ら沖縄の野球を見てきた者にとっては、何ら波乱でも何でもなく、可能性があったたくさんの中から、この4校が残ったのだなという印象でもあるのだ。それでは、今夏の大会を少し紐解きつつ、ベスト4に残ったチームを見ていこう。

沖縄の野球ファンには想定内?!嘉手納の準決勝進出劇

仲地 玖礼(嘉手納)

【嘉手納】※過去の選手権沖縄大会最高位:ベスト8

1回戦 7-0 具志川商2回戦 11-2 北中城3回戦 2-1 興南準々決勝 2-1 八重山商工

 スコアが示す通り、嘉手納と興南、八重山商工の差は無いに等しい。むしろ嘉手納はこの世代の旗手として常に県内をリードしてきた。仲地 玖礼を始め、1年生ながら夏の選手権沖縄大会の舞台を踏んだメンバーが本領発揮したのが一年生中央大会。那覇、知念と延長の末に下すと決勝では沖縄尚学を7対2で下して見事優勝した。そんな彼らが2年生になり、チームの頭として動いた新人中央大会で豊見城南に1点差で敗れてしまう。

 彼らの中では「負けるはずのない試合」だった。しかしこれが糧となる。秋の県大会では再び勝ち上がると準決勝で興南と対戦。1対0とリードしたまま終盤へ移行したものの、逆転されてしまった。何が足りないのか?それを考えるものの、心にストンと落ちる答えは、無かったのかも知れない。春の県大会でも準々決勝で豊見城に大敗。優勝→ベスト4→ベスト8。王座にいたはずの自分たちの場所が、気付けば随分と遠ざっている。だが一つの可能性があることを彼らは知っていた。

 枢軸である仲地 玖礼、大石 哲汰、大城 堅斗のケガが癒える夏にこれまでのリベンジを果たして頂点を極める!それが自信としてあったからこそ、興南や八重山商工との痺れるゲームも我慢することが出来、集中力が途切れることなく勝つことが出来たのだろう。さらに最後の夏ということで、仲間意識もこれ以上なく高まってきた。嘉手納のベスト4進出は、沖縄の野球ファンの中では想定内のことなのだ。

 その他Aブロックでは糸満が最右翼だと思ってはいたが、正直なところ八重山商工、八重山の山の内、どちらが来ても全くおかしくないとの認識が県内にはあったことを述べておく。

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赤嶺 由生郎(那覇西)

【那覇西】※過去の選手権沖縄大会最高位:ベスト16

1回戦 5-2 沖縄工2回戦 5-1 コザ3回戦 4×-3 宜野湾準々決勝 1-0 前原

 僕ら沖縄の野球ファンの中でも、驚きの声が上がったのが那覇西のベスト4だ。1989年に夏の選手権沖縄大会に初参戦した那覇西は昨年創立30周年を迎えたばかり。夏の大会ではベスト16が最高位であった。だが宜野湾との延長13回を制すると、前原との10回をも制した。その原動力は主戦赤嶺 由生郎(あかみね・ゆきろう)だ。

 赤嶺は2年生の春の県大会で早くも登板を果たす。昨年の夏にはエースとしてマウンドを預かり1、2回戦連続完封。沖縄尚学には力の差を見せつけられたものの、防御率2.25は彼に自信を植え付けたことだろう。そして迎えた秋の県大会。6回途中で4失点を喫する不調で途中降板。チームもそのまま大敗してしまった。だが、この敗退が彼を奮い立たせたことは想像に難くない。

 年が明けた春の県大会で赤嶺は沖縄水産との延長15回を投げ抜き、翌再試合でも終盤を迎えたが、チームは敗れてしまう。しかし赤嶺個人の成績は、沖縄尚学諸見里俊や糸満・平安 常輝、豊見城・翁長 宏和らと比べても遜色ないほど輝いていた。防御率は0.69をマーク。本格派投手の指標の一つであるK/BBの数値は6.00と非常に高かった。加えて延長15回を投げ切るスタミナもある。四球を出さず三振を奪える赤嶺がいることでナインの安心感は想像以上だろう。それが相乗効果を呼び、自信が生まれたことで緊迫した展開でも我慢強くなった。それが宜野湾と前原の延長での勝利でもある。

 この夏の赤嶺は43イニングを投げて防御率1.29、K/BBは3.20と春に比べて下がったものの奪三振率は6.70。4試合で600球以上を投げているタフネス右腕なら、嘉手納・仲地との投げ合いを制してもなんら不思議はない。昨年夏のベスト16を経験した赤嶺が、、そう。巨人軍に指名された普天間の與那原 大剛(関連記事)のように成長を続けていたと仮定したならば、この夏の大躍進も何ら不思議はないのである。

 その他Bブロックでは美来工科、前原、那覇、名護の内という点でどこが来ても波乱ではなく。また那覇西、コザ、読谷、宜野湾も名前が挙がっていたところからの那覇西勝ち上がりということで、こちらも実は波乱ではなかった。

 そして、後編では、小禄と美里工の勝ち上がりにもふれていこう!

(文・當山 雅通)

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