「拝啓、PL学園の球児たちへ」 PL学園出身のバトルスタディーズ作者・なきぼくろ先生を直撃!

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PL学園の球児たちにメッセージ

 今年2月、今夏限りで野球部の休部を発表したPL学園。すでに新入部員の募集も停止となり、7月9日に開催された第98回全国高校野球選手権大阪大会開会式では、12名の3年生部員だけでの入場行進となった。過去に春夏7度の優勝を誇るPL学園にとっての最後の夏。そして、その初戦を7月15日に、ついに迎えることとなる。

「なんで12人しかいないのに、こんなすごい試合するんや!って周りの人々に勇気を与えるようなプレーをみせてほしいです」そう語るのは、自身も同校野球部OBで、さらに、2003年の第85回記念全国高校野球選手権大会に9番ライトで出場していたなきぼくろさん。なきぼくろさんはPL学園を卒業後、漫画家デビューを果たした。なきぼくろさんが描く高校野球マンガ『バトルスタディーズ』は現在、講談社・週刊モーニングで絶賛連載中である。単行本は現在6巻まで発売中だ!

 実は、このバトルスタディーズ。母校・PL学園をモチーフに描かれている。主人公たちのユニフォームを見れば、すぐに気付く人も多いだろう。なぜ、なきぼくろさんは、PL学園野球部をモデルに描こうと思ったのだろうか?

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 勝負の厳しさを知り尽くした高校3年間

なきぼくろさん

「僕がそもそもPL学園のユニフォームに憧れて入部したというのもありますし、世の中の人々に、PL学園というチームはかっこいいだろ!面白いだろ!ということを伝えたいという思いがありました。それから、バトルスタディーズのテーマが決まっていて、『強いものには強い訳がある。弱いものには弱い訳がある』そういったメッセージ性を込めています」

 強いチームってどんな取り組みをしているのかな?どんな雰囲気で練習してるのかな?そんな野球少年たちや中学生球児、そして高校球児たちの疑問に答えられるマンガを描きたかった。

「強いチームには、それなりの理由が絶対あるんです。弱いチームにも、あかん理由が絶対にある」そう言い切れるのは、自身が高校3年間、その強いものたちが集まった集団の中で高校野球を経験してきたからだ。

 しかし、中学時代のエリート選手が集まってくる中で、なきぼくろさんは最初はすぐにレギュラーを取れるような選手ではなかった。それでも、自分の強みを見出し、それを磨きながら、最終学年ではレギュラーの座を掴んでいく。そして、子どもの頃からの夢だった「甲子園出場」の夢を見事に叶えるのだ。

 だが、卒業して10年以上が経った今でも、悔いていることがある。「当時、僕の目標は低かったんです。周りの選手たちはみんなプロに行きたい!甲子園で優勝したい!って考えている中で、僕はレギュラーになること以上の目標を持つことができなかった。レギュラーになって甲子園に行けたけど、チームには迷惑をかけましたね。だから、それだけは今でも申し訳ないっていう気持ちがあります。もし、もう一度、あの夏をやり直すチャンスが訪れたとしても、僕の目標が低い限りは、それ以上の結果は残せなかったと思うんです」

 勝負の難しさ。それを散々知り尽くしたものだからこそ、そこまで自分に対して厳しく評価できるのだ。

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PL学園で学んだことを全て伝えていきたい

「PL学園は、自主練習が練習。練習が発表会。試合はもっと大きな舞台です。個人で自主練習して、練習で発表して、成績が良かったやつが試合に出られる。練習では、個々の役割分担とは何かを考えていく。だから聞かれるんです。お前はどうしたらいい?って。それで、僕は守備が守れる、小技が得意だからそれが武器です!って答える。すると、『それなら、どうしたらいいか考えろ』ってまた言われるんです」

 それはつまり、自主練習で何を目的に練習すれば良いかを考えるということだ。小技が得意なら、進塁打を打つ、バントを自分が思ったところに転がす、一発でバントを決める。そういった自分の役割を明確にし、自主練習で取り組んで、練習で披露する。すると、『よっしゃ!お前使う!』と評価されていく。

 チームワークを高めることより、まずは一人一人の能力を磨くことがPL学園では求められてきた。それは、バトルスタディーズ第2巻でも、そのセリフは登場する。

『ええか?チームワークっちゅうのは!それぞれが役割を果たすことで生まれる。仲良しこよしがチームワークじゃない』

 この他にも、バトルスタディーズには、強豪・PL学園野球部の強さの秘訣が惜しみなく盛り込まれている。『強いものには強い訳がある。弱いものには弱い訳がある』そんななきぼくろさんからの熱いメッセージが受け取れるマンガだ。 

「それと今は、もう一回、PL学園を復活させたいと思ってマンガを描いています。再燃というか、こんな高校に行きたい!という人が増えるように、PL学園のユニフォームかっこいいなと、子どもたちにも思ってもらえるように。卒業した今でも思いますよ。PL学園のユニフォームはかっこいいって」

 過去に錚々たる野球人を輩出してきたPL学園。その誇りと伝統が詰まった「PL GAKUEN」のユニフォームを着て、2016年夏、12人の選手たちは、勝負の夏へと挑む。

■公式Twitter:『バトルスタディーズ公式ツイッター』(@BATTLESTUDIES01)

(取材・文=安田 未由)

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