成田vs千葉日大一
これが2回戦のレベルなのか...。準々決勝といわれても違和感がないぐらい両チームの選手のレベルは高かった。 1回表、千葉日大一は3番北田章仁(2年)、4番柳澤佳佑(3年)、5番佐竹直仁(3年)の3連打でチャンスを作ると二死満塁から押し出しで1点を先制。だが1回裏、成田は2番大矢が安打で出塁すると、3番花嶋 悠吏(3年)がストレートを捉え左越え二塁打で1対1の同点に追いつく。3回表、二死二、三塁から6番中村の適時打で逆転に成功。
だが4回表には千葉日大一が再び二死二、三塁のチャンスを作り、バッテリーミスで1点を勝ち越すと3番北田がこの日3安打目となる中前適時打を放ち、5対3と突き放す。これでエースの鈴木は降板。
驚くべきは千葉日大一の打撃である。成田の鈴木は決して悪い出来ではなかった。コンスタントに135キロ前後・最速138キロを計測。手元にキレるスライダーの切れも良く、簡単に打ち崩せる投手ではない。だが千葉日大一打線は鈴木がストライクに取りにいく配球を見逃さず、ボールの軌道に合わせるレベルスイングで、快音を響かせる。特に素晴らしかったのは3番の北田。まだ2年生だが、千葉日大一でこれほど楽しみな左打者を見たのは初めてかもしれない。太ももの太さが強打者と思わせるもので、スクエアスタンスで構える姿はじつにどっしりさがあり、見ていて怖さを感じさせる。この選手、ボールをコンタクトするのが実に上手い。鈴木の135キロ以上のストレートになんなく対応し、さらにしっかりと押し込んで打てる技術の高さがある。
この日、一発はなかったとはいえ、今後は本塁打量産も期待できる強打者だった。そしてエースの吉崎 圭亮(2年)もかなりの好投手だ。まず目についたのは強気な性格が伺える顔だちだ。そして思った以上に体つきががっしりしている。入学からここまでしっかりと追い込んで体を鍛えてきたのだろう。ノーワインドアップから始動し、左足をしっかりと上げていきながら、バランス良く立ち、開きを抑えた投球フォームから繰り出す直球はコンスタントに130キロ前半〜138キロを計測。スライダー、カーブ、チェンジアップのキレとともにレベルが高く、少々、甘い球があるが、それを勢いで抑えに行こうとする気概が見えた。
千葉日大一は伝統的に好投手を育成ができるチームだが、総合力という点ならばここ数年でも一番かもしれない。彼よりも上背があったり、スピードボールを投げる投手はいた。だが試合をまとめる能力、気持ちの強さ、速球、変化球を投げる能力が誰よりも優れているのだ。1年生からマウンドを経験している投手だが、今秋以降、県内を代表する投手として見ていい逸材だ。
だが5回裏、二死から7番大川が同点となる2ランホームランを放ち、5対5で折り返す。その後、なかなか1点を奪えない両チーム。後半以降は成田の2番手・尾身 健太朗のピッチングが光った。長身で、馬力の大きさがウリの尾身。小さい動作からピュッとキレのあるストレートを投げる鈴木とは対照的に、尾身は大きな動きから鋭く腕を振ってくる本格派。まだストレートは常時130キロ前半〜136キロで、最速は138キロなのだが、手元でぐっと伸びてくる球質は、鈴木にはない長所。だが、このストレートに対しても千葉日大一はしっかりと捉える。安打を何度も打たれるが要所で締めて点を与えないところは春から成長した点といえるだろう。これで140キロ〜145キロ。いずれは150キロ…となってくれば、ドラフト候補となりうる選手だが、その成長は次のステージになってからだろう。
そして試合は9回裏に入った。一死から2番大矢が安打で出塁すると、3番花嶋が左中間へ安打で一死一、三塁とチャンスを広げた。花嶋は春から攻守両面で成長を見せ、県内屈指のショートに推せるレベルまでに成長したのではないだろうか。まず春から成長を感じたのは守備だ。守備範囲が広くなり、さらに捕球から送球に移行するまでが速くなり、さらに遠い位置からダイレクトスローできるまでの肩の強さになり、さらに無理せずダイレクトで投げようとせず、状況に応じてはワンバウンドスローを試みるなど、一歩先のプレーができるようになっている。
一死一、三塁のチャンスで、4番酒巻 翔(3年)に打席が回った。酒巻はストレートを打って三塁線を抜くサヨナラ打。成田が辛勝で3回戦進出を果たした。
初戦はどの学校も厳しい。その中で成田はミスもあり、反省も残る試合内容だっただろう。だが千葉日大一の気迫に負けじとしっかりと勝てたのは次につながるだろう。
お互いの気持ちがぶつかったこの試合。今年の千葉大会では最もハイレベルな2回戦だったといっても過言ではない素晴らしいゲームだった。
(文=河嶋 宗一)
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