横浜創学館vs横浜商大高
神奈川県下ではシード校の常連として知られている横浜商大高と横浜創学館の2校が夏の神奈川大会の初戦で顔を合わせた。1回戦屈指の好カードは戦前から白熱したゲームが期待され、サーティーフォー保土ヶ谷球場には平日の1回戦とは思えない数の観衆が押し寄せたが、試合はスタンドの予想を上回るほどの大熱戦となった。
横浜商大高の先発はエースの大浦 慎吾(3年)。最速140キロを超えるストレートと、スライダーやチェンジアップなど多彩な変化球を操る好投手だ。初回は先頭の伊藤 秀和(3年)からスライダーでいきなり三振を奪うなど素晴らしい立ち上がりを見せている。
一方、横浜創学館は左腕の川井 啓徳(2年)が先発。初回はボールが高めに浮いていたものの、2回からはストレートが走り出し2奪三振。調子を上げていくかに思われたが、3回表に捕まってしまう。横浜商大高は一死から1番・望月 海成(3年)がレフト前ヒット。盗塁と四球で一二塁とすると、3番・山田 大雅(3年)が左中間を深々と破る2点適時三塁打で先制。さらに、4番・横手 雄大(3年)もレフトへクリーンヒットを放ち3点を奪った。
横浜創学館もすぐに反撃。3回裏は二死から伊藤のピッチャー強襲安打と四球で一二塁のチャンスを作ると、3番・城ヶ峰 智也(3年)の右前適時打で1点。4回裏は6番・佐藤 裕大(3年)の二塁打などで一死一二塁とし、8番・川井はセカンドゴロ。二塁封殺で一塁送球を諦めた遊撃手が三塁へボールを送るが、これが悪送球となり、もう1点。5回裏もエラーと4番・佐藤 優斗(2年)のヒットで一三塁と攻めると、5番・佐藤 未来人(2年)がセンターへ犠牲フライを打ち上げ、小刻みな得点で同点に追いついた。
7回はどちらも1番からの好打順。横浜商大高は一死から2番・丹 俊介(3年)がライト線へヒット。ここで横浜創学館の右翼手・新倉 稜磨(3年)がうまく回り込んでフェンスに到達する前にボールを処理し打者走者の二塁進塁を阻むと、次打者の場面で左腕・川井が巧みな牽制球で一塁走者を刺しピンチを未然に防ぐことに成功した。
その裏の横浜創学館はヒットで出塁した伊藤が盗塁。横浜商大高バッテリーはタイミング良くボールを外していたが、キャッチャーの送球がセンターへ抜け、伊藤は三塁へ。そして2番・松岡 侑佑(3年)がセンター前へ弾き返し4対3と逆転した。その後も一死一二塁とチャンスは続いたが、ここは横浜商大高の大浦が踏ん張って佐藤未をチェンジアップで空振り三振。佐藤裕はサードゴロに打ち取り、なんとか最少失点に抑えて望みをつないだ。
しかし、9回表の横浜商大高は簡単に2アウトを取られ、いよいよ崖っぷちに追い込まれるが、望月がライト前ヒットを放つと代打・宮尾 吉貴(3年)は三遊間の深い位置へ転がる内野安打で二死一二塁。続く山田の打球もショート左へ。遊撃手が踏ん張って一塁へ送球するがボールが逸れ(記録は内野安打)、この間に二塁走者が生還し4対4の同点とする。なおも二死二三塁から、この日2安打の横手は歩かされ、横浜創学館バッテリーは5番・松田との勝負を選択。その松田は追い込まれながらもファウルで粘ると、フルカウントから8球目のストレートをセンター前へ2点適時打。土壇場で試合をひっくり返した。
9回裏、横浜商大高はピッチャーの大浦に代打を出していたため、古野 伊織(2年)をマウンドに送るが、この2年生左腕に横浜創学館打線が襲いかかる。この回先頭の松岡が四球で出塁すると、城ヶ峰がライトへツーベースヒット。一死後、一打同点のチャンスで打席に立ったのは佐藤未。2ボール1ストライクからの高めに浮いた変化球を捉えた一打はレフト芝生席へ。これが劇的な逆転サヨナラ3ランとなり、横浜創学館が7対6で横浜商大高を下した。
ドラマチックな展開で強豪対決を制した横浜創学館。トーナメントを勝ち上がるには勢いが必要だが、この勝利はチームに推進力を与えてくれるだろう。立役者となった佐藤未は4打点を挙げる活躍。城ヶ峰も勝負どころでシュアな打撃が光った。完投した川井はストレートの切れが良く、スライダー、カーブ、チェンジアップといった変化球とのコンビネーションも上々だった。
横浜商大高はジグザグ打線が相手を上回る13安打を放ち、9回には気迫のこもった攻撃で逆転してみせたが、エラー絡みで失った4、5、7回の失点が最後に響いた形となった。
(文=大平 明)
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