美里工vs未来沖縄
■神山vs神谷!名将対決
中部地区高校野球選手権大会を制し意気上がる美里工と、夏の選手権沖縄大会初勝利を挙げた未来沖縄(昨年創部)との戦いはまた、名将対決でもあった。
1984年、甲子園初出場となった沖縄水産。この年、監督として登録し沖縄水産初の聖地1勝を挙げたのが神山昇氏。その10年後の1994年には那覇商を率いて春夏連続で甲子園出場。天下の横浜高校を4対2で下した。方や神谷嘉宗氏は2008年、浦添商を率いて甲子園初出場を果たすだけでなく、準々決勝で慶應義塾を破ってベスト4入り。2014年には美里工を選抜へと導いた。そんな名将の教えと闘志を受け継ぐ両軍ナインもまた、随所で素晴らしいプレーを見せてくれた。
■1イニングで6点を奪った美里工打線
1回、未来沖縄は制球に苦しむ美里工先発の辺土名海を攻め立て一死満塁とチャンスを得る。ここで5番下地晃之介が初球を右中間へ運び二者が生還。続く知念誠がスクイズを決めて3点。未来沖縄の見事な速攻に湧き立つ未来沖縄のスタンドだったが、美里工はその声を一瞬で黙らせた。
その裏、エラーと四球で一・二塁とすると4番大田 浩二にタイムリーが生まれる。続く新垣嗣人がスクイズを決めて1点差とすると、屋我 翔也もタイムリーで続き同点へ。相手エラーでついに逆転すると、9番宮城那行にも2点適時三塁打が飛び出して大量6点を奪ったのだった。
■突き放されまいと粘る未来沖縄
美里工は2回にも二死満塁として屋我が2点タイムリーを放ち8対3とリードを広げる。一方的な試合になりかねなかったが3回、未来沖縄は非凡な才能を見せる4番神谷優斐が二塁打でナインを鼓舞すると、先ほどしっかりとスクイズを決めた知念誠がサード前へ絶妙なバント(記録はバントヒット)。これが悪送球を誘い神谷優斐が生還。さらに新垣豪哉のレフト超え二塁打で2点目を刻んだ。昨年誕生した未来沖縄野球部には3年生部員がまだ存在しないが、それを思わせないほど力のある攻撃力を見せた。
■敗れたものの10安打をマークした未来沖縄の秋の陣が楽しみ
それでも。宮城那行にこの日4打点目となるタイムリーが生まれるなど、中盤以降も美里工打線は止まることを知らない。5回を終えて毎回得点となる12点を挙げた。野球部訪問で「打線は選抜出場チームよりもこっちが上」と話してくれた神谷嘉宗監督だったが、それを改めて感じさせる怒涛の攻撃だった。
中盤以降、得点することが叶わない未来沖縄だったが7回、神谷優斐のライトフェンスを直撃三塁打をきっかけに1点を返す。9回にも、神谷優斐にこの日自身3本目のヒットが生まれたがここまで。経験に勝る美里工が2年振りのベスト16へとコマを進めた。
敗れた未来沖縄だったが、スタメン9人中6人が2年生、3人が1年生。この若さで美里工を苦しめた戦い振りは僕らの脳裏に強烈に焼きついた。新人大会と秋の大会が非常に楽しみなチームの一つだろう。
(文=當山 雅通)