今年1月、ロシアで開催されたヤリギン国際における女子58キロ級に出場した伊調馨は、その決勝でモンゴルのオホン・プレブドルジに完敗を喫した。五輪3連覇を成し遂げた伊調の敗戦は実に13年ぶり。吉田沙保里と並ぶレスリング界の女王に何が起こったのか――。

22日放送、TBS「NEWS23」では、「五輪4連覇へ 伊調馨(32)衝撃の敗北・・・新たな挑戦」と題し、伊調に行ったインタビューの模様を伝えている。

伊調の特徴は、鉄壁のディフェンスにある。相手にプレッシャーを掛け続け、相手が強引なタックルなどで攻めに転じた瞬間を狙い、得点を奪う――、タックルを駆使して攻め続ける吉田とは対象的ながら、伊調ならではの常勝スタイルを築いてきた。

ロシアでの敗戦について「確かに自分は情けない、不甲斐なさは感じますけど、この壁を乗り越えるともっともっと強くなると思う」と語っていた伊調だが、その一因は防御的なスタイルから脱却し、まさにスタイルチェンジを図る過程が故のことだったという。

「アテネ、北京、ロンドンもそうですけど、自分がいかに相手をバテさせるかとか、点数をやらないとか、1点差でもいいから勝つってことを一番意識していた」とこれまでの戦い方を振り返った伊調だが、「やっぱり自分のゴールはそこじゃない。やりたいことは攻めの部分。自分がなにより練習してきたことだしやりたいことで、レスリングの中で一番大好きな部分」と本音を明かした。

すると、6月のポーランド国際では苦戦を強いられながらも優勝。「1月のヤリギンで負けたことでゼロから見直して、その練習の成果は出せたんですけど、あとは攻めの動き」とまだまだ納得いかない様子の伊調だったが、五輪前哨戦と言われる大会でさっそく結果を残した。

2014年11月に永眠した最愛の母・トシさんのためにも、リオデジャネイロ五輪での4連覇を誓う伊調。金メダルを獲った後、母に何と伝えたいかと訊かれると、「何も言えない気がする。“獲ったぞー”とも言えないし。そしたらお母さんから話しかけてくれる気がします。私は金メダルを見せるだけ」と静かに語った。