停滞するミランの身売り交渉とチーム編成。本田圭佑は揺れる名門に残るべきなのか?
残り1年で切れる本田の現行契約については「ミランのガッリアーニ副会長が2020年までの契約延長オファーを用意した」というイタリア現地メディアの報道が、6月上旬までに相次いだ。
加えて『コリエレ・デッロ・スポルト』紙は「ガッリアーニは本田の代理人(兄・弘幸氏)に、プレミアリーグからのオファーがあるのならそれを断るよう要請した」とも報じ、『Calciomercato.com』など移籍情報サイト等も「中国資本へのクラブ身売りが成立すれば、本田はアジア圏でのマーケティングの鍵になるだろう」と続けた。
「低迷した今季のミランにあって、本田は数少ない“売れる”選手」、「もともとトランスファー・フリーで獲得した本田が700万ユーロで売れれば御の字」、「仮に買い手が見つかるのなら、契約延長だけでもしておけば、その分移籍金額を上乗せできる」……といった具合だ。
契約期間は残り少ないが、高値売却が見込める選手の契約をあえて延長し、移籍金額を引き上げるのはメルカートでの常套手段だ。実際、英紙『デイリーエキスプレス』は「トッテナムとウェストハムの本田への関心は依然として高い」としている。
ミランの来季チーム編成はどうなっているのか。
オーナーであるベルルスコーニ元首相の心臓疾患とその手術によって、クラブの身売り交渉に遅れが生じていることは確かだ。2、3か月先と見られているオーナーの完全回復を待っていたら、新シーズンが始まってしまう。
少しずつ漏れ出てくる交渉の中身によれば、中国側はなによりまず来季の監督人事に介入する意向を持っており、一方のベルルスコーニは、中国側へ少なくとも買収成立後5年間の巨大補強を約束することを過半数株式譲渡の条件としているらしい。
中国側もベルルスコーニも、買収成立後のチーム大改造を望んでいることは明らかなのだ。
補強を司るガッリアーニ副会長は、国際トーナメント目白押しの今夏、活発化する移籍市場ですでにいくつかの動きを見せ始めている。
本田の天職であるはずのトップ下には、獲得候補としてMFコバチッチ(レアル・マドリー)とMFバスケス(パレルモ)の名前が挙がっている。ユベントスやローマらとの争奪戦は免れず、獲得資金を捻出するには、本田を含む飽和状態の攻撃陣から誰かを放出するしかない。
エースFWバッカには、セビージャ時代の恩師エメリが新監督へ就任濃厚なパリSGから引き抜きの声があり、若手FWニアングにはエバートンが強い関心を示している。
上記のふたりの去就如何を問わず、本田の放出は、ミランにとって今夏市場での資金捻出のための有効な手段であることは覚えておくべきだろう。
『SKY SPORT』の最近のインタビューに応えた本田のコメントも移籍説に拍車をかけている。
「ミランが来季も自分を必要としているか確実ではないし、自分自身も残ることに確信がない。来季、自分がどこでプレーしているか、今の段階で言うことはできない」
今月6日に中国・蘇寧グループに売却の決まったライバルのインテルは、中国マネー投入を見越し、すでに着々とチーム改造と新クラブ構想を進めている。一方で、ミランは未だ正式な監督も決まっておらず、誰が残るのかも不透明なままだ。
今から奇跡的にクラブの身売り交渉が早急にまとまり、7月までの売却が決まったとしても、ミランのチーム作りの遅れは確定的だ。なにを目標にイタリアでの4シーズン目を戦えばいいのか、本田自身が戸惑う部分も少なからず出てくるだろう。
残留か、新天地を模索か。
来季のミランには、あまりにも不確かなことが多すぎる。迷走する名門の10番であり続ける選択は、リスクが高いと言わざるをえないだろう。
文:弓削高志(スポーツライター)

