岡田武史新副会長が見る日本サッカーの「着実な進歩」と「停滞感」…「Jリーグを作った人の心が薄れてきている感覚」
 日本サッカー協会の副会長に就任した元日本代表監督の岡田武史氏が1日、JFAハウスで就任会見に臨んだ。

 2010年に日本代表監督退任後、JFA理事や中国の杭州緑城で指揮官を務め、2014年11月からはFC今治のオーナーとなった岡田氏。オーナー業と並行して副会長業務を行うことになるが、「私には捨てられない仕事が今治にありますので、ちょっと難しいというお話をしたのですが、常務理事会と理事会の月2回でもいいからということで」と、田嶋幸三新会長からの強い要望を受けてのものだったことを明かし、FC今治での活動が最優先であることを主張。「今治の市長さんをはじめ、地元のみなさんにご相談しましたが、みんなから『頑張れ』と言っていただいたので。僕が一番心配したことで、今治を捨てていくように思われるのであれば、やれないと思ったんですが、そういった後押しもあったので決めました」と、今治からの支援についても触れた。

 協会での業務については、「高円宮妃殿下へご挨拶にうかがいましたが、『ダイバーシティ、多様性が大事』だとおっしゃっていました。同じ意見ではなく思い切った意見を言ってほしいと会長からも言われました」「いろいろな案件に対して同じ意見ではなく違う意見があった方がいいので、自分の視点から、はっきりと、それが決まるかは別として言っていきたいと思います」と、自身の理念などを伝えていくことを強調している。

 U−23日本代表のリオデジャネイロ・オリンピックについて話が及ぶと「試合をするたびによくなっていますし、遠征でもメキシコに勝ったようで、スゴイなと。あのチームこそ本当にダイバーシティというか、選手がうまく融合してきているので。おそらくヨーロッパとか日程的にもベストメンバーが組めないと思うので、メダルのチャンスが十分あるのではないか」と、期待を寄せた。



 現在の日本サッカーについては、「この前の試合(シリア戦)も素晴らしいなと思いましたし、海外でやっている選手もこれだけいる。昔ほどの加速度はないにしろ、着実な進歩はしている」と話す一方、「確かにプラトー(停滞状態)に来ているのかなという感はあります。ここでだからこそ新たなイノベーションが必要なのかなと」とコメント。FC今治の経営者としての経験を踏まえ、「サッカー協会があってサッカーをさせているようなイメージがある。そうではなく、多くのサッカーを愛する人がいて、はじめてサッカーがあり、サッカー協会があるのだと。サッカーをやってきて気が付かなかった視点、そういうものを意見として言っていきたい。サッカー界全体が一つになって、戦う相手をはっきりと、明確に外へ求めていく、そういったお手伝いができたらいいかなと考えています」と続けた。

 岡田副会長は口にした停滞感について、「Jリーグができて20年が過ぎて、最初に作った人の心が薄れてきているような感覚がある。どんなに素晴らしい組織でも、どこかで変化をしていかなければいけない。これは企業でもそうですけど、素晴らしいシステムやモノを作れば、ずっとやっていけるような時代ではない。今が悪いからというよりも、時代の中でマンネリしてきているのではないかと。それをもう一回、作った人の心に戻って、見直してみる必要があるのではないか、という印象です」と、経営者としての視点なども踏まえ、今一度、初心に帰る必要性を説き、サッカー協会の職員にも積極的に伝えていく姿勢を見せた。

 国際経験も持っている岡田副会長は、「アジアの中で、日本のサッカーはまだまだリスペクトされています。指導者の養成は日本がアドバンテージを持っている。単独チームであれ、協会であれ、これだけグローバル化している社会の中で、ためらいなく外に出て行かなければいけないと思います」と、国外で活躍する指導者の増加に期待を寄せる。

 岡田副会長は、会長が業務をできなくなった際の代行にも選ばれたが、「万が一ということが会長にあった場合、僕も一緒に倒れます(笑)」と冗談を飛ばし、「緊急事態ということで、次が決まるまで早急に次の適任を決めるまでの間のかじ取りはわかりました」と話しつつ、「その後、僕が代わってやるということはあり得ませんと話しました」と、あくまでも代行業務だけ行うとしている。