【センバツ1回戦振り返り】大阪桐蔭、秀岳館、鹿児島実業...強打が光るチームを分析!
選抜といえば、投手が優位な大会。過去には大会本塁打が10本に達しないこともあった。また投手力、守備力が高いチームが制してきた。しかし今大会は打てるチームが多く、夏で見るような豪打を次々と見せてくれている。今回は強打を見せつけるチームをピックアップし、何が優れているのかに迫っていきたい。
大会屈指の左腕を攻略した鹿児島実業綿屋 樹(鹿児島実)
いきなり魅せたのが鹿児島実だ。相手は全国クラスの実戦派左腕・鈴木 昭汰(常総学院)。3回まで無得点。2点のリードを許し、常総学院のペースかと思われた試合展開だったが、4回表に追立 壮輝の適時打で同点に追いつき、さらに5回表には頼みの主砲・綿屋 樹(インタビュー)の勝ち越し適時打、とどめは6回表に追立のバックスクリーン弾で4対2と試合を決めた。鹿児島実は鈴木から9安打を放ち、周囲を驚かせた試合となった。
鹿児島実は食事トレーニングで、パワーをつけていることは野球部訪問で紹介したが、この試合では状況に応じて待ったり、初球からどんどん振っていったりと、攻撃パターンが相手投手からすれば嫌らしいものだった。鹿児島実は、ただパワーをつけるだけではなく、相手投手をしっかりと研究した打撃は見事だった。
そしてパワーで格の違いを見せつけたのが、龍谷大平安だ。名門・明徳義塾との対戦になったが、頼れる働きを見せてくれたのが、4番橋本 和樹だ。昨秋は3本塁打を放っており、強打の龍谷大平安の核となる選手だ。3回表、1対1の場面で、高めに浮いたカーブを見事に捉え、レフトスタンドへ持っていく本塁打。腰をキレイに回転させ、そしてしっかりと振り切ったスイングは実に鋭く、見事な本塁打だった。そして5番岡田 悠希が外角ストレートを捉え、バックスクリーン横へ飛び込む本塁打を放ち、二者連続本塁打となった。この本塁打もかなり速い速度でそのまま入っていった。まだ岡田は2年生。末恐ろしいスラッガーの登場だ。
龍谷大平安は、昨秋から打撃力がずば抜けていたが、一冬かけてさらにパワーが増している。選抜制覇した2014年の打線も強力だったが、今年は1人1人の選手としての素質は上であり、次の試合も楽しみといえよう。
次に紹介したいのが、八戸学院光星。東北大会2位で神宮大会は出ていない。情報が少ない分、やや不気味なところがあった。しかし開星の最速147キロ右腕・吉川 貴大の速球に振り負けることなく、快打を連発。コースに逆らわずに打ち返す打撃は見事だった。それでもまだ爆発する予感をさせる打線で、無安打に終わった田城 飛翔、適時打を放った4番益田 敦成など一発を打てる打者が揃っており、初戦で見せなかった一発長打を龍谷大平安戦で発揮できるか。
[page_break:東邦、大阪桐蔭、秀岳館も自慢の強打を発揮!]東邦、大阪桐蔭、秀岳館も自慢の強打を発揮!九鬼 隆平(秀岳館)
そして優勝候補に挙がる東邦も、この冬、振り込みの数を重視した強化練習を徹底的に行ったことで、全体的にパワーアップ。先制適時打を放った藤嶋 健人(インタビュー)、3打点の活躍をした松山 仁彦だけではなく、昨秋、思うような打撃ができなかった小西 慶治が豪快な本塁打を放ったことで、打線により厚みが出てきた。初戦で一発がなかった藤嶋、松山も、次戦で、豪打を披露してくれるかもしれない。
大阪桐蔭も、土佐の尾崎 玄唱を打ち崩した打撃は見事だった。尾崎は130キロ弱のストレート、スライダー、シュート、カーブ、チェンジアップを駆使する右投手。投球術が上手く、簡単には打ち崩せない投手だが、大阪桐蔭打線は一瞬だけ浮いた変化球を見逃さず、鋭い打球を飛ばす。
今年の大阪桐蔭は、本塁打を連発するような打線ではないが、低く強い打球を打つことを心掛けている。大阪桐蔭の打者の動きを見ると狙い球をしっかりと絞り、さらに自分の打撃フォームを崩さずに打ち返すことができるため、対応力がかなり広い。1人1人の選手の打撃フォームを見るととにかくシンプルで無駄がない。そしてヘッドスピードが速い。欠点が少なく、対応力が高い選手が多いので、相手投手からすれば、これほど嫌な打線はない。
大阪桐蔭の練習は普段から投手を投げさせる、シート打撃を行っている。それはレギュラーを巡ってのガチンコの戦いで、速球、変化球も投げる。その中で自分はどうアピールすればよいのか?確実性の低い打撃はできない。それが理解できているからこそ、確実性の高い打撃が実践できるのだろう。
最後は花咲徳栄の高橋 昂也を打ち崩した秀岳館。今回、長打力そのものよりも、高橋が得意とする縦の変化球を見極め、ファールにして粘って、球数を増やし、甘く入った球をヒットにする姿が目についた方も多いのではないだろうか。
長打力の源として、ポイント制ロングティー、筋力トレーニング、食育などを紹介してきたが、対応力を磨く取り組みをここで紹介したい。秀岳館の選手たちは朝練で逆方向へ打ち返す打撃練習を行う。マウンド上にマシンを置いて、球種は外角のスライダー。右打者ならば逆方向(ライト方向)に打ち返す。100本打って、どれだけヒットにできるか。鍛治舎 巧監督に以前話を聞いたところ、レギュラーは100本中、70本は安打にできるという。逆方向へ打つ練習とともに、普段のティーバッティングでも、内外角を打ち分ける練習を重ねたりと、実戦に即した練習ができている。
その積み重ねの結果、一冬越えて、秀岳館の選手たちの打撃は長打力に加えて、嫌らしさが加わった。甲子園に慣れた2回戦以降は、さらに打撃が期待できるかもしれない。この6チームは、今年の出場校の中でもハイレベルな打撃を実践できている。6チームの打撃のアプローチは大きく学べるものがあるといえるだろう。
(文・河嶋 宗一)
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