茨城ゴールデンゴールズ 片岡 安祐美監督兼選手  「今も変わらない、甲子園への熱い思い」

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 高校時代は、熊本商業硬式野球部で3年間プレーし、現在は茨城ゴールデンゴールズ監督兼選手として活躍する片岡 安祐美さんですが、今もまだ、「甲子園でプレーする」という夢を強く持っています。今回は、そんな片岡さんに、高校野球3年間の思い出や、茨城ゴールデンゴールズで監督としてもけん引するチームへの熱い思いもあわせて伺いました。

必死に甲子園を目指した熊本商時代

片岡 安祐美監督兼選手(茨城ゴールデンゴールズ)

――高校を卒業して、10年が過ぎましたが、いまもまだ、「野球が好き」という思いは高校の時と変わらないままですか?

片岡 そうですね。でも、ゴールデンゴールズに入団してからは、野球が好きという気持ちがどんどん強くなってきました。年々、野球ワールドから抜けられなくなっている感じです(笑)。高校の時も、女の子だから、どんなに練習をしても公式戦には出られませんでしたし、甲子園にも出られないというのは分かっていたんですけど、それでも、野球が嫌になったことは一度もなかったです。それよりも、自分が成長しているのかどうか分からなくて悩んでいることが多かったです。

――試合に出られないのであれば、男子部員と同じ練習をしても、自分の成長が確かめられる機会も少ないはず。なぜ、そこまで厳しい練習に毎日打ち込むことができたのでしょうか?

片岡 練習はきつかったですけど、私が頑張ることで、チーム全体が強くなってくれればという思いが一番でした。それでも、落ち込む日もありました。だけど、ある時、新聞記事で、他競技で頑張っている同級生の女の子がアジア大会に出るという記事を読んで、涙が出てきたんです。私は野球が上手になっているんだろうか?もっと練習できるんじゃないだろうか?まだ足りないんじゃないか?って。

 それを親に話した時に、『お前は毎日やるって決めた練習をきちんとしているだろ。サボったこともない。それはお前が野球を好きだからだ』って言ってくれたんです。その言葉に自分の野球に対する気持ちも再確認できて、次の日からまた練習で帰りが遅くなっていきました。

 ここまでのお話は片岡さんの高校時代のエピソードのほんの一部。泣いて、笑って、熱い青春時代を過ごした片岡さんが経験してきた高校3年間のお話は、今月発売された初の著作「甲子園を目指した少女」(竹書房)に記されています。今回はそんな片岡さんに、全国各地で頑張っている野球部の女子部員やマネージャーのみなさんへもアドバイスをいただきました。

[page_break:片岡 安祐美さんから全国の女子部員&マネージャーの皆さまへアドバイス!]片岡 安祐美さんから全国の女子部員&マネージャーの皆さまへアドバイス!

片岡 安祐美監督兼選手(茨城ゴールデンゴールズ)

――片岡さんは、当時から、男子部員に対して、チームにとってプラスだと思ったことはきちんと伝えられることができる部員でしたが、中には「女子の私が言ってもいいのだろか?」と遠慮してしまう女子部員やマネージャーも多いようです。

片岡 確かに中々言えないですよね。でも、言わなかったら彼らのためにならないんです。野球選手が一人の社会人であるのと同じく、高校球児も、球児である前に一人の高校生なんです。一人の人間としてやるべきことはちゃんとやらなきゃいけない。そこに男女の差はないです。だから、野球人同士の会話として言えばいいんです。言われた男子が「何だお前、女のくせに。マネージャーのくせに」ってなるのは図星だからです。言い返すのがそこしかないから、そうやって噛みついたような言葉しか返せないんです。それでも、言い方だけは気を付けた方が良いですね。それと、言った手前、自分はちゃんとやるということです。あと、褒めるのも忘れないことですね。

 高校野球って、勝っても負けても3年生の夏で終わりですよね。甲子園で優勝したチームだっていつかは終わる。その限られた2年半で強くなるということを考えたら、迷っていたらいけないなと思います。考えてもいいけど、迷っちゃダメです。

――今回、「甲子園を目指した少女」を出版されて、改めて、野球が好きな高校生のみなさんに伝えたいメッセージとは?

片岡 私も高校時代、ずっと悩んでやってきたし、たくさん泣いてきました。その時に助けてくれたのは、家族やチームメイト、仲間だったんです。自分が今、野球を出来ていることへの『ありがとう』の気持ちを思ってくれればいいなと。それに、野球がやりたくても出来てない人ってたくさんいると思うんです。その中で野球が出来ているという感謝の気持ちを持って、ずっと野球のことを好きでいてほしいです。

――最後に、片岡さんにとって「甲子園」とは?

片岡 私は、高校3年間を終えても、いまだに、甲子園への思いが消えない。30歳を前にしても、まだ甲子園に行きたい!って言っている。小さいころからずっと見ていた甲子園は、キラキラしていて、私はここに立ちたい、ここで野球をしたいという気持ちを持ちました。それをずっと言葉に出してきたことで、自分はそうするものだ、いつかこの夢は絶対叶える、と強く思うようになりました。

 本にも書きましだが、甲子園でプレーした日が、私の引退試合って思っているんです。それが、明日叶うかもしれないし、10年後かもしれない。それがいつ来ても最高のプレーができるようにしたいんです。急に『明日、試合が出来るよ』ってなっても『じゃあその前の最後の練習、精一杯やれたかな?もう悔いはないな』って思えるように。そういう人生を送りたいんです。

 毎日、今日が最後っていう思いでプレーをすれば妥協もしないし悔いも残らない。実際に甲子園でプレーできたらどうなっちゃうんだろう?という思いはありますけど、そこに立っている自分を見てみたいし、どんな感情を持つか、味わってみたいんです。こんな話をしているだけでウルッときちゃうくらい。それだけ、甲子園というのは私を野球にぞっこんにさせてくれた存在ですね。実際、叶ったらそれこそ一生ユニフォームは脱げないかもしれませんが(笑)私に限らず、全国の高校球児が、どんなに練習が辛くても辞めずに、打ち込めるのはそれだけの魅力があるものが、『甲子園』なんだと思います。

 片岡 安祐美さん、熱いお話をありがとうございました。野球に対して、そして甲子園に対して、ここまでの思いを持っている片岡さんの執筆された「甲子園を目指した少女」は絶賛発売中です!

(取材・文/編集部)

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