ブランドに学ぶ「売れない時代」に商品を売るワザ
「売らずに売る」という言葉に矛盾を感じる人は少なくないだろう。
しかし、現代のプロモーション戦略を考えたときに、この「売らずに売る」というのは一つの解をもたらす。小山田裕哉氏の『売らずに売る技術 高級ブランドに学ぶ安売りせずに売る秘密』(集英社/刊)は、買わせることに注力してしまいがちなプロモーションを異なるアプローチから捉え、ケーススタディとしてに提示する一冊だ。
では、その内容とはどのようなものなのか? 著者の小山田氏に聞いた。
(新刊JP編集部)
――世はまさに企業にとって「モノが売れない、広告も効かない、ネット口コミの悪評は広がる」という時代です。こうした背景になってしまった要因について教えていただけますか?
小山田:ソーシャルメディアとスマートフォンの普及です。スマホによってソーシャルメディアにいつでもどこでもアクセスできるようになった結果、商品の評判が広告ではなく、ネット上の口コミに左右されやすくなりました。しかも、ソーシャルメディアにあふれる口コミは企業にはコントロール不可能です。それなのに、人々ははっきりと「広告よりネット口コミを信用している」と答えています。つまり、広告によるイメージコントロールがどんどん効きにくくなり、企業が「売ろうとして売れない」状況が広まってしまったのです。
――では、その一方で、マス(テレビ、雑誌、新聞)の影響力は、どのような状態になっているのでしょうか。
小山田:CMなどの広告ではなく、メディアの影響力という意味であれば、未だに日本でもっとも影響力があるのはテレビです。ネットでPVを稼ぐニュースも、多くはテレビ番組がネタ元になっています。
ただ、先ほども指摘したように、ソーシャルメディア社会の到来で「広告より口コミを信用する」という人々が増えた結果、テレビ番組は話題にされても、そこで流れる広告は影響力を失ってしまっています。
雑誌や新聞については、そもそも購読者が減少しています。しかし一方で、女性ファッション誌『VERY』のような、読者層を明確に絞った媒体が部数を伸ばすということも起こっています。
ここから考えられるのは、単純に「広告が効きにくい」というよりも、「大衆」を想定した「広く、浅い」訴求が効きにくくなっている。「広く、浅い」情報はネット検索で山ほど見つかるので、検索でもわからない情報、ユーザー像を明確に絞り込んだ「狭く、深い」訴求を考えなければならないということでしょう。
――コミュケーションの方法がスマートフォンに移行する中で、企業のプロモーションの方法として最も変わった点はなんだとお考えですか?
小山田:マスメディアを介さなくても、消費者に直接アプローチできるようになった点です。YouTubeに動画を載せ、自社のSNSで宣伝する。それだけでユーザーに企業の情報を届けることができるようになりました。
しかしこの状況は、消費者の側も企業に直接クレームを届けることができるということも意味します。何か不祥事があって、企業のSNSアカウントが炎上するなんてことは、すっかり珍しくなくなりました。ソーシャルメディアにおいて消費者と企業の関係はあくまで対等なのです。
そのことを忘れて、企業がマス広告のような、一方的に商品の宣伝を押し付けるような宣伝をソーシャルメディアでしても、端的に無視されるか、最悪の場合は炎上することがあります。
――本書は「ラグジュアリーブランド」、つまりバーバリーやヴィトンなどの高級ブランドの事例が中心となっていますが、そういったテーマを設けたのはどうしてですか?
小山田:ここ数年のラグジュアリーブランドの事例が、「ソーシャルメディア時代」における、ブランド・マネジメントの参考例になるからです。広告よりもネット口コミが参考にされる状況で、企業はどのように消費者にアプローチしていくべきなのか。ブランドのイメージを何よりも大切にするラグジュアリーブランドは、そうした問題に真正面から向き合わざるを得ません。
彼らが試行錯誤してきた歴史は、ほかの分野の企業にとっても、ソーシャルメディアとスマートフォンを手にした「新しい消費者」へのアプローチ方法を考えるうえでのヒントになると考えています。
(後編に続く)
しかし、現代のプロモーション戦略を考えたときに、この「売らずに売る」というのは一つの解をもたらす。小山田裕哉氏の『売らずに売る技術 高級ブランドに学ぶ安売りせずに売る秘密』(集英社/刊)は、買わせることに注力してしまいがちなプロモーションを異なるアプローチから捉え、ケーススタディとしてに提示する一冊だ。
(新刊JP編集部)
――世はまさに企業にとって「モノが売れない、広告も効かない、ネット口コミの悪評は広がる」という時代です。こうした背景になってしまった要因について教えていただけますか?
小山田:ソーシャルメディアとスマートフォンの普及です。スマホによってソーシャルメディアにいつでもどこでもアクセスできるようになった結果、商品の評判が広告ではなく、ネット上の口コミに左右されやすくなりました。しかも、ソーシャルメディアにあふれる口コミは企業にはコントロール不可能です。それなのに、人々ははっきりと「広告よりネット口コミを信用している」と答えています。つまり、広告によるイメージコントロールがどんどん効きにくくなり、企業が「売ろうとして売れない」状況が広まってしまったのです。
――では、その一方で、マス(テレビ、雑誌、新聞)の影響力は、どのような状態になっているのでしょうか。
小山田:CMなどの広告ではなく、メディアの影響力という意味であれば、未だに日本でもっとも影響力があるのはテレビです。ネットでPVを稼ぐニュースも、多くはテレビ番組がネタ元になっています。
ただ、先ほども指摘したように、ソーシャルメディア社会の到来で「広告より口コミを信用する」という人々が増えた結果、テレビ番組は話題にされても、そこで流れる広告は影響力を失ってしまっています。
雑誌や新聞については、そもそも購読者が減少しています。しかし一方で、女性ファッション誌『VERY』のような、読者層を明確に絞った媒体が部数を伸ばすということも起こっています。
ここから考えられるのは、単純に「広告が効きにくい」というよりも、「大衆」を想定した「広く、浅い」訴求が効きにくくなっている。「広く、浅い」情報はネット検索で山ほど見つかるので、検索でもわからない情報、ユーザー像を明確に絞り込んだ「狭く、深い」訴求を考えなければならないということでしょう。
――コミュケーションの方法がスマートフォンに移行する中で、企業のプロモーションの方法として最も変わった点はなんだとお考えですか?
小山田:マスメディアを介さなくても、消費者に直接アプローチできるようになった点です。YouTubeに動画を載せ、自社のSNSで宣伝する。それだけでユーザーに企業の情報を届けることができるようになりました。
しかしこの状況は、消費者の側も企業に直接クレームを届けることができるということも意味します。何か不祥事があって、企業のSNSアカウントが炎上するなんてことは、すっかり珍しくなくなりました。ソーシャルメディアにおいて消費者と企業の関係はあくまで対等なのです。
そのことを忘れて、企業がマス広告のような、一方的に商品の宣伝を押し付けるような宣伝をソーシャルメディアでしても、端的に無視されるか、最悪の場合は炎上することがあります。
――本書は「ラグジュアリーブランド」、つまりバーバリーやヴィトンなどの高級ブランドの事例が中心となっていますが、そういったテーマを設けたのはどうしてですか?
小山田:ここ数年のラグジュアリーブランドの事例が、「ソーシャルメディア時代」における、ブランド・マネジメントの参考例になるからです。広告よりもネット口コミが参考にされる状況で、企業はどのように消費者にアプローチしていくべきなのか。ブランドのイメージを何よりも大切にするラグジュアリーブランドは、そうした問題に真正面から向き合わざるを得ません。
彼らが試行錯誤してきた歴史は、ほかの分野の企業にとっても、ソーシャルメディアとスマートフォンを手にした「新しい消費者」へのアプローチ方法を考えるうえでのヒントになると考えています。
(後編に続く)