清原容疑者がハマった覚せい剤 その恐怖を知ることができるケータイ小説3選

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元プロ野球選手・清原和博容疑者の逮捕は日本中に衝撃を与えた。

以前は傲然としていた清原容疑者の表情からは怯弱がうかがえ、一流アスリートでも一度覚せい剤に手を出してしまうと、薬物をやめることができなくなり、最終的に谷底に突き落とされてしまうのか……と恐怖を感じた人も多いのではないか。


■シビアな問題だけに、「節度ある情報」が多い

覚せい剤はどうして恐ろしいのか、なぜ中毒から抜け出せないかなどといった「覚せい剤」の恐怖は、本やテレビなどが分かりやすく説明してくれる。しかし、それだけで本当に覚せい剤の恐怖を完全に理解できるかというと、おそらくそうではないという人もいるはずだ。

やはり、実際の経験者の生々しい証言はインパクトがある。恐怖を点と点を結ぶようにしてつないでいくため、その先にどんな苦痛が待っているのか、分かりやすくなるのだ。

■犯罪モノ、未成年モノなら下手なルポタージュよりケータイ小説

『夜のケータイ小説サイト「ホスラブ小説」』には、水商売や風俗など、ナイトワークを生業とするユーザーが書いた「ケータイ小説」が日夜アップロードされている。「小説」と言っても、実体験を小説風にアレンジした「自分語り」が多いのが特徴だ。



その中には、自称・経験者による、それは生々しい小説――いわば、「ドラッグノベル」が大量にアップされているのだ。その中には「実話」と銘打っているものもある(もちろんそれが本当かどうかは分からないが)。当然、ケータイ小説には編集者などは存在しないので、「これは世の中に出して良いものか」などは一切考慮されない。投稿者が書き綴ったものがそのままアップロードされるため、ある意味、最上級にストレートな文章を読むことができる。

■『首輪のカラス』― 連載中に覚せい剤使用の噂も…

女子高生だった「舞」が覚せい剤に手を出したのは、「クラブで男に誘われて」というありきたりな理由だった。キメSEXに溺れ、筋モノの愛人となり、逮捕。出所後はソープランドで働きながら社会復帰を目指していく人生を歩む。

最愛の恋人を事故で亡くし、生きる希望を失って一人さまよい、「自殺するために」と、大量の覚せい剤を体内に入れていく描写はなんとも生々しく、恐ろしい。2009年に始まった本作は、予告なく5年ほど更新が止まったことがあり、「また覚せい剤を使用したのでは」と噂され読者レビューが騒然となる事件もあった。
http://book.hostlove.com/novel/4190/

■『痩せたかった。。』― 覚せい剤で友達を助けようとする、歪んだ友情…

17歳の「葵」は、年齢をごまかして風俗で働き、月に100万円以上もホストに貢ぐ生活をしていた。同じ風俗店で働く瑠美に、「絶対痩せる」と誘われて、覚せい剤に手を出す。若くして風俗で働き、秘密を共有する2人の友情は、「覚せい剤」を通して固いものになっていく。

友情とは相手を思いやり、時には自分を犠牲にしても手を差し伸べて助け合うものと言えるだろう。葵と留美は、お互いに友情を感じていたことに違いはないのだろうが、相手が悩んでいたり、困っていたりすると、すべて「覚せい剤」に頼り、薬で解決しようとするのだ。言うならば、ピンチのときに、いかに「覚せい剤」を運んでやれるかが友情の表現になっているようにも見えるから恐ろしい。
http://book.hostlove.com/novel/3667/



■『その先にあるもの。』― 自分の主導権を握れなくなる恐怖

彼氏と同棲を始めた女子大生の「mimi」は、生活費が足りずに欲しいものも買えない彼氏を思い、AVに出演する。その事実を知って彼氏は泣くが、「2人の生活を守るため」と、mimiは夜の世界に染まっていく。そんなとき、彼氏の幼馴染の「愁」に誘われ、遊び感覚で覚せい剤に手を出す。夜の仕事のストレスもあってか薬なしでは働けなくなり、やがて抜け出せなくなっていく……。

mimiは、「彼氏との生活を守るために」という決意で、AV出演や、覚せい剤をしながら夜の仕事をこなすという選択をする。常識的には考えられないかもしれないが、一度覚せい剤に手を出してからは、「私の主導権を握っているのは私じゃなかった」と、冷静な判断ができなくなっていたことを綴っている。
http://book.hostlove.com/novel/6691/

■覚せい剤は「死ぬまで」やめたとは言えない

紹介した3作品は、どれもノンフィクションの実体験として書かれ、現在も公開されている。

『痩せたかった。。』の作中で、「葵」が警察に逮捕されたときに言われた「覚せい剤は死ぬまで止められて、はじめて止めたと言える」という言葉が、依存症から抜け出す難しさを物語っている。

また、『首輪のカラス』にある、

 「シャブも切れた身体は鉛のように重く、強烈な睡魔にも襲われた。 やり場のない苛々感と妄想が私を追い詰めても… 消えないシャブへの欲求に虚しさを覚えた。」(475ページより)

という言葉は、覚せい剤への依存がどこまでも続いていくことをシンプルに表している。



紹介したケータイ小説の主人公たちは、いずれも覚せい剤から離れて社会復帰を果たしている。しかし、ふとしたときに「キマった記憶」が呼び起こされるフラッシュバックや、「勘ぐり」に心がザワつく苦しみから解放されるには、一体どれほどの時間が必要なのだろうか。

体験を小説として綴った彼女たちの行動は、たった一度の好奇心が、一生を掛けて付き合っていかなければならない、深刻な問題になることを教えてくれた。

(新刊JP編集部)