使いすぎ症候群を防ごう

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 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 皆さんは「使いすぎ症候群」という言葉を聞いたことがありますか?同じ競技を長期間にわたって続けると、体のある一定部位に負担がかかって痛みを生じるようになる、いわゆる慢性的なスポーツ障害のことを指します。身体の使いすぎ=オーバーユースが原因といわれ、野球は特にこの使いすぎ症候群が原因とみられるケガを起こしやすいことが特徴としてあげられます。

使いすぎ症候群はどうやって起こる?

過去に痛めた部位は特に注意が必要

 毎日練習をしていると同じ部位に負荷がかかりやすく、練習強度や練習量、頻度などが増すにつれて痛みを生じることがあります。こうした使いすぎ症候群の要因は自分自身に関連する内因性のものと、自分自身には直接原因がなく環境などその他の要因による外因性のものとに分けられます。

■内因性の原因によるもの・過去にその部位を痛めたことがある・筋力や柔軟性などが練習量、強度に見合うものではなく、不足している・筋力や柔軟性などに左右差が見られる・負担のかかるフォーム、技術面での習熟度が達していない・左右の足の長さやO脚、X脚、偏平足など骨の形態や、配列に特異性がある 等々

■外因性の原因によるもの・練習強度や練習量、頻度などが急激に増えた・用具やウエア、シューズなどが身体にあっていない・練習を行う地面(サーフェス)が硬すぎる等適切な状態ではない 等々

 特にO脚、X脚、偏平足など骨の配列に関することについては、競技を行う前に医師などによるメディカルチェックを受診し、ケガのリスクを把握してあらかじめ対処しておくことが望ましいところです。しかし実際にメディカルチェックを受診する機会が少ないことや、普段の練習では特に大きな問題とならないことも多いため、少しくらい痛い状態でも競技を続けてしまうことが可能です。

 こうした使いすぎ症候群は急に痛みを発症するものではないのですが、時間をかけて痛みが出る傾向にあり、そのまま放置しておくと長期間の休養を余儀なくされることも少なくありません。高校野球のプレー期間は2年半程度ですので、こうした事態はなるべく避けるようにしなければなりません。

[page_break:オーバーユースを未然に防ぐ]オーバーユースを未然に防ぐ

 使いすぎ症候群は主に3段階に分けられます。

第1段階:練習や試合後に痛みを感じる。スポーツ動作に支障はない。第2段階:練習中や試合中に痛みを感じる。スポーツ動作に支障がある。第3段階:普段練習をしていないときにも痛みを感じる。スポーツ動作ができない。

 第1段階のレベルであれば、運動前のウォームアップで身体を温めてからプレーを行うと気にならないことが多く、プレー後のクールダウンやRICE処置などを入念に行うと特にスポーツ動作に支障が出ることは少ないと考えられます。この状態から軽減していくようであればそのまま様子をみることも可能ですが、こうした段階を経て、プレー中にも痛みが継続する場合は練習強度や練習量、頻度などを軽減する、もしくは負担のない範囲で別の練習を行う等、対策をとることが必要です。また同じ動作を何度も繰り返して行うと、同じ部位に負担がかかりやすくなるため、練習内容に変化をつけて同じ部位に大きな負担がかからないように工夫することも大切です。

投げた後などに自分で痛みを確認してみよう

 また自分で見つけられる使いすぎ症候群のチェックとしては、「普段押しても痛くない部位なのに、押すと痛みを感じる」ことが挙げられます。特に投げすぎによる肘の痛みや肩の痛みは、こうしたセルフチェックを行うことで予防することも可能です。特に痛みを生じやすい肘の内側や肩の前面、後面部、肩甲骨の周辺などは自分でも普段から軽く押して確認する習慣をつけ、痛みが強くなっていないかどうかをチェックすることをオススメします。

「これくらい大丈夫だろう」と思いながらプレーを続けていると、思わぬケガをしてしまうことがあります。自分の身体は自分で守ることを前提に、痛みというセンサーを上手に活用して、ケガを未然に防ぐようにしましょう。

※参考図書:自分で見つけるスポーツ障害(ナップ)

【使いすぎ症候群を防ごう】●使いすぎ症候群とは長期にわたって同じ部位にストレスがかかるオーバーユースが原因●野球は特にオーバーユースによるケガが起こりやすい●使いすぎ症候群の原因は内因性のものと外因性のものに分けられる●使いすぎ症候群は主に3段階に分けられる●「普段押しても痛くない部位なのに、押すと痛みを感じる」のは使いすぎ症候群の予兆●自分で肘の内側や肩、肩甲骨周辺部などを押して痛みの変化を確認する習慣をつけよう

(文=西村 典子)

次回コラム公開は2月29日を予定しております。

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