古川雄輝が大胆告白 30歳を前にイメージを「ぶち壊したい」
クールさと母性本能をくすぐる子どもっぽさ、ドキッとさせるSっ気をも併せ持つイケメン? いやいやこの男、ただの王子様ではない。その引き出しにはもっと深い苦味や闇、狂気が隠されている。ドラマ『イタズラなKiss〜Love in TOKYO』など少女漫画原作の作品で見せてきた甘いイメージをバッサリと捨て、古川雄輝は映画『ライチ☆光クラブ』で、新たなステージへと歩みを進めた。デビューから約6年。映画、舞台、そして月9ドラマと目覚ましい活躍を見せる28歳は、冷静に未来を見据えている。

撮影/平岩亨 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

「どうしてもやりたかった役」は狂気の悪役!



――『ライチ☆光クラブ』で演じた、少年たちによる秘密結社の冷酷な王・ゼラはダークな魅力と妖しさにあふれていて衝撃的です。

正直、これまでで一番強く「やりたい!」と思った役でした。狂気的な一面を持っていて、しかも悪役。僕のファンの方たちや、これまで少女漫画原作の作品で僕を見てくださった人たちに違う一面を見せられる役であり、どうしてもやりたかったんです。



――映画初出演作『高校デビュー』以来、『イタKiss』、『脳内ポイズンベリー』など少女漫画原作の作品が続きました。

どうしてもひとつのイメージがついてしまい、同じタイプの役が続いていました。その壁を壊したかったんです。このタイミングでできて嬉しかったし、すごく大事な作品になりました。古川雄輝はこういう役もやれるんだってことを多くの方に知っていただきたいです。

――狂気や残虐性を持つゼラを演じる上でどのようなアプローチを?

もともと、舞台から始まり、古屋兎丸さんの漫画、そして歌劇にもなってますが、まずは漫画のイメージから攻めてみようと思いました。ただ、漫画の世界観を舞台にするなら成立しますが、漫画から映画となると、よりリアリティが必要とされて難しいんです。

――漫画や舞台ならではの非現実感が映画では邪魔になってしまう?

不自然じゃない程度にリアリティを保ちつつ、ゼラというキャラクターを前面に出していく。そのギリギリのラインを狙いました。後半、物語が進むにつれて、より狂気を増していくので、そこをきちんと逆算して、どこから壊れかけていくのかというアプローチも必要でした。

――具体的に、ゼラという人物の内面について、古川さんはどのように受け止めましたか?

まず、強く感じたのは「孤独」ですね。うちに孤独を抱えているからこそ、自分を恐怖でまとって周囲を支配しようとする。「ゼラ、弱いな」というセリフがありますが、実際に弱い人間なんだと思います。父親がいない家庭で育ち、母は醜い大人たちと薄汚れた工場で働いていて、それを見て「大人になりたくない」と考えるに至ったんだろうと。



――内藤瑛亮監督とはどんなお話をされたんですか?

監督からは「こうしてほしい」という話ではなく、映画をいくつか…『独裁者』や、ナチスの党大会を記録した『意志の勝利』、あとは宗教をテーマにした映画などを紹介していただきました。

――作品によって、役柄へのアプローチのやり方は違うんですか? それとも独自の共通メソッドのようなものを持っているんでしょうか?

作品ごとに違いますね。もっと言うと、監督のタイプによってガラリと変わります。今回の内藤監督は「絶対にこうしてくれ」というタイプではなく、こちらがまずリハーサルで見せて、問題なければそのままという感じでした。自由に切り取ることができたので、ゼラのようなタイプの役を演じる上ではありがたかったですね。

――監督によっては正反対のアプローチも?

『脳内ポイズンベリー』では、監督の指示が「ここで止まる」「ここで振り向いてセリフを言う」という感じで、非常に細かく具体的だったので、頭を空っぽにして臨んでいました。個人的に苦手なのは「こういう感情でここにいて」というタイプの演出。多少の縛りがある上での自由って難しいんです(苦笑)。

『イタKiss』ブレイクがもたらしたもの



――今回のゼラ役は、オーディションで勝ち獲ったと伺いました。既に数多くの作品に出られてますが、いまでもオーディションを受けられるんですね?

この映画のオーディションは2年前でした。何より僕は俳優としてのスタートが22歳と遅めで、当然ですが「22歳演技経験なし」の俳優をいきなり使ってくれる現場はありません。それ以来、当たり前のこととしてオーディションを受け続けてます。実際、映画も1〜2本を除いてすべてオーディション。何もしないで仕事をいただける立場ではないんですよ(笑)。



――デビューからここまでの約6年の歩みを振り返っていただくと、いかがですか?

ちょっと、スタートダッシュで遅れちゃいましたね。デビューが遅かったのに加えて、僕は事務所の新人オーディション(キャンパスター★H50withメンズノンノ)でこの世界に入ったんですが、グランプリではなかったんですよ。

――審査員特別賞ですね。

グランプリじゃないと「事務所に入れます」という感じで、最初からたくさん仕事が用意されているわけじゃない。そこから下積みがあって、周囲と同じ土俵で戦えるようになるまで3〜4年かかったので、その分いま、ダッシュが必要だなと感じます。

――2013年放送の『イタKiss』の大ブレイクがもたらした影響はいろんな意味で大きかったのでは?

中国で仕事をすることになるとは思ってなかったですね。ネイティブの英語を話せる俳優は日本では決して多くないので、海外で仕事をしたいって思いはあったんですが、まさか中国でここまで受け入れられるとは…。



――“入江直樹の古川雄輝”が大好きという熱烈なファンの方が多いですね。

アイドル的な感じで入江直樹と僕を重ねて応援してくださるファンが増えたなと思います。とはいえ、僕は本業のアイドルではないので、その期待にお応えできないところもあって心苦しいのですが…(苦笑)。ありがたくもあり、一方でやはり、違う面を見せていかなくちゃという思いもあり…。