ユニクロ失速の原因は・・・(写真は柳井正・ファーストリテイリング会長、2012年9月撮影)

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カジュアル衣料店の「ユニクロ」が失速している。運営するファーストリテイリングの2016年8月期決算の第1四半期(15年9〜11月期)の業績は、本業の儲けを示す営業利益が759億円と前年同期を16.9%も下回り、この期間としては4年ぶりの減益となった。

暖冬で冬物衣料の売れ行きが振るわなかったことが減益の要因というが、度重なる値上げの影響も指摘されはじめた。

15年11月から一転してマイナスに

ユニクロの既存店売上高は、2015年9月が前年比2.6%増、10月5.5%増と秋冬商品の出足が好調で前年を上回ったが、11月が8.9%減、12月は11.9%減と一転して大幅な減少で推移。期初からの累計は5.5%減となり、厳しい状況がうかがえる。

客数をみても、15年9月が4.2%減、10月3.6%減、11月12.9%減、12月は14.6%減と、2か月連続で2ケタの減少。これで7か月連続で前年を下回った。

客数の減少は痛いが、商品の値上げが功を奏して、客単価は15年9月が7.1%増、10月は9.4%増、11月4.6%増、12月は3.1%増で推移。ただ、よく見ると月ごとにジワジワと増加率は下がっている。

値上げによる客単価の上昇で客数の減少を補うという狙いが、「空振り」となる可能性が出てきたようだ。

ユニクロは既存店売上高の減収について、「想定を超える、世界的な暖冬」が原因という。「冬物が売れなかったことはありますが、一方で品番が多くなったことで1点1点の商品のよさを、しっかりと伝えきれていなかったことはあったと考えています」と、反省点をあげる。

ネットでは「安いことが売りだったのに......」

ファーストリテイリング全体としても、第1四半期(9〜11月期)の売上収益は5203 億円で前年同期比8.5%増えたものの、営業利益は759 億円で16.9%減と減益だった。

足を引っ張ったのは、ユニクロの国内事業が大幅な減収減益になったこと。その要因として浮上しているのが、円安に伴う原価コストや人件費の上昇などを理由に実施した2年連続の値上げだ。14年秋冬の新商品を5%前後、15年秋冬は平均で10%程度値上げしたことで、割高感が強まったとみられている。

インターネットには、

「なんだか中途半端な値段になっちゃったね」
ユニクロのものは一通り買ってあるし、今の段階で買うあれこれ必要性がない。買った服が耐用期間過ぎたらまた売れ出すんじゃないかね」
「安いことが売りだったのに、安くなくなったら終わりだろ」
ユニクロって、『そこそこ品質がよく、低価格』がよかったのに・・・」
「イメージ戦略でよく見せても、客の目はごまかせない!」

といった声が寄せられている。

ただ、ファーストリテイリングは、「9、10月の客数は戻ってきていましたし、(値上げの)影響はないとみています」と話す。

グループの「GU」との客の争奪戦

ユニクロの魅力が薄れた」との声もある。ユニクロ商品の代名詞ともいえる「フリース」や「ヒートテック」「エアリズム」などの高機能商品が出そろい、最近はそれらをマイナーチェンジした商品アイテムが陳列棚を埋め尽くしている。過度に高機能になった商品が出回った結果、価格は上昇。商品価値と価格のバランスが崩れてきているとの指摘もある。

お客としてみれば、「下着の値段じゃない」「ユニクロで高い値段を出すなら、もっといい服がいっぱいある」という気持ちが働いてもおかしくないだろう。同業他社でも、「機能性の高い、安価な商品」が発売され、お客が流れているとの見方もある。

一方で、同じグループ内でも、グローバルブランドの格安カジュアル「GU」は、第1四半期が計画を上回る大幅な増収増益となった。ワイドパンツやボリュームセーター、ニットボトムスといったキャンペーン商品の販売が好調で、既存店売上高は2ケタの増収だ。

GUは国内に319か店(15年8月末)を出店。「GU」に足を運ぶと、最近はかつてのユニクロを思わせるような格安な商品が目につく。品質と価格を上げてブランド化が進むユニクロとは対照的に、これまでユニクロが担っていた「安くて、品質のよい商品」をGUが提供するようになってきたようだ。ユニクロと「GU」とで、お客の奪い合いが起っているとみる向きも多い。

こうした状況に、ファーストリテイリングは「そもそも、ユニクロとGUとではコンセプトが違います」という。「GUのコンセプトは、『トレンド』をつかんで届けることです。デザインも、かわいい服を考えています。一方、ユニクロは『ライフウェア』がコンセプト。トレンドを追っているわけではありません」と説明。両者の「同質化」を一蹴する。