控え選手の逆襲
控え選手が主力に変わるタイミングはどのような時なのか・・。今控えに甘んじている選手は、チーム内の競争を勝ち抜こうと必死で頑張っていることでしょう。私の数々の経験から言えることは、控え選手は主力選手と同等に見てくれていないということです。選手の立場からすると同じように見てくれていると思いたいのですが、実際には主力選手の方を指導者は甘めに見ています。
小さな驚きでイメージを上げていくことが大事指導者にインパクトを与えよう(写真はイメージ)
指導者は、同じくらいの実力ならば経験のある主力選手を使います。控え選手は「俺だろ」と思っても、指導者は使いたいと思えるまでなるには強烈なインパクトがないとダメなのです。
まず、控え選手は、「主力と同じ程度になっても使ってくれない」と考えておいた方がよいでしょう。同じボーダーラインで「よし」と思ってはいけないのです。この最初の考え方を誤ると、「なんで」と不平不満に繋がりもうひと押しで行けるところにいても、自ら失速していく流れになります。
主力選手 → 甘めに見られている 控え選手 → 厳しく見られている
控え選手のスタートラインを考えてみましょう。主力選手と同じ感じでスタートしていては絶対に抜くことは不可能です。例えば、年末年始の休みからスタートするときに、主力選手は三月の練習試合に向けて徐々にという感じで調整していきます。控え選手は同じような感覚で「徐々に」ではいけません。主力選手が休んでいるときに身体を作り上げ、スタートのときに「おっ」と指導者に思わせるのです。
トレーニングで息が上がっている主力選手に対し、控え選手は息ひとつ上がらないようにするのです。小さな「おっ」の連続がイメージを上げていきます。試合で活躍していきなり席が与えられるのではなく、徐々にイメージアップさせておいてチャンスを与えられたときに「おおお!!!」と思わせるのです。
休みの期間が与えられたならば、主力は休むはずです。控え選手は差を縮めるチャンスです。私が現役のときは、元旦からランニングしていました。ライバルが休んでいるときに自分が厳しいことをすることで自信に繋げていきます。正月休みにスイングなどしている選手は多くいると思いますが、私は否定的です。技術練習を重ねるよりも、体力強化を中心に鍛え上げる方が良いのです。
[page_break:ライバルと比較し自分の強みを生かす]ライバルと比較し自分の強みを生かす体力強化が心身を鍛える(写真はイメージ)
体力強化をする理由は、合同練習のときに息が上がらないようにすること。それが「おっ」に繋がるからです。厳しい体力強化をすることで自分の心も鍛えていきます。控え選手に甘んじている理由のひとつは、本番に弱いことが考えられます。チャンスを与えられても「むむむ」という結果しか出せずに主力選手との差が広がっていたことでしょう。
本番で力を発揮できる選手になるためには、自信がみなぎり「大丈夫」と常に思える心が必要です。強靭なメンタルを作るためには、自ら厳しい練習をして体力強化をしながら心を強くしていくことです。
スイングよりも体力強化・・もうここまで読めば、体力強化練習をする理由を理解したと思います。
技術練習・・1割体力強化・・9割
良いスタートダッシュを切ってイメージアップをしていきましょう。小さなことの積み重ねが大きなことに繋がっていきます。自分の見せ方も戦略的に行っていくと良いでしょう。
高校二年生のある選手が聞いてきました・・「今まで何度かチャンスをもらってきましたが、なかなか生かせずに最後の年になりました。何とかレギュラーになろうと頑張っていますが、どうしたらアピールできますか?」
今までの生かせなかった状況を詳しく聞きました。打撃は主力と同等なのですが、守備での失敗が多くチャンスを掴めなかったそうです。「夏までで高校野球は終わり。時間との勝負で、三月の練習試合スタートのときに活躍してアピールしないと実質の高校野球は終わるぞ。ライバルとの兼ね合いを考えると、何が足りない?」
「ライバルはどちらかというと打撃が弱く、守備で使ってもらっているような感じです」
「で、あれば、守備はライバルより少し劣るくらいでもいいね。ライバルの弱点は打撃なのだから、君の打撃が良くなれば監督は使いたくなるかもしれないね」
ライバルと自分を比較し、何をどのように改善していけばいいのかを考えるのが大切です。現実的にライバルを追い抜かなければ試合に出られないのですから、現実的にどうしていくのかを明確にすべきです。同じようなタイプの選手になれば、主力選手の方は経験があるので指導者は選択してくれません。ライバルの弱点を突いていけば勝機が見えてくるかもしれません。
彼に言いました・・
「もう時間がないのだから、監督にストレートに聞いてみるといい。自分に求めているものは何なのか。何があれば使ってくれるのかを聞けばいい」
[page_break:主力選手を追い越すために大事なのは「積極性」]主力選手を追い越すために大事なのは「積極性」主力を追い越す積極性を持とう(写真はイメージ)
指導者には指導者なりの野球があります。攻撃型なのか守備型なのか、何を大切にしているのか。指導者が思い描く方向にハマれば登用されていきます。でも、方向性を誤ると自分が良いと思っていてもスルーされるのです。
ストレートに勇氣を持って聞く・・
怖い指導者であれば聞くのは勇氣が要りますが、夏までで高校野球が終わりなのにそんなことを言っている場合ではありません。玉砕覚悟で、ストレートに求めているものを知ったほうが良いのです。
控え選手は待っていてもチャンスは巡ってきません。自分から積極的に動いて、チャンスを与えられたならば一発で決めないといけないのです。一発で決めるためには用意周到な準備が必要です。控え選手はチャンスを与えられたら「ここでやらないと」と力みます。極度の緊張感で身体を動かなくします。今までも結果を考え過ぎて結果を出せなかったはずです。
常に試合(本番)のような感覚で練習をする・・
控え選手の本番は、最後の夏大会じゃありません。練習試合スタートのときです。そこでチャンスをもらったときを想定して、今から練習するべきです。チャンスをものに出来て自分が主力になったならば、次は夏大会を意識して練習です。控え選手は、最初のチャンスを掴むことにまずは集中です。
どこで勝負をかけるのか・・
三月から試合が始まりますが、控え選手の勝負はすぐそこです。のんびりやっている主力選手を抜かすために、今から勝負が始まっています。体力強化して心を鍛え、三月を意識しながら技術練習を重ねることです。
「チャンスを与えられましたが、守備でミスをしてしまい・・」誰にでもミスはあります。そのミスをいつまでも引きずって、次のチャンスも生かせないことが控え選手には多いのです。
「一度のミスなんて指導者はすぐに忘れているものだよ。いちいちくよくよしても始まらない。ミスをしたときに堂々として、次に切り替えること。控え選手は切り替えられなくて、結局消極的になってしまう」
主力に追いつき追い越すためには積極性が不可欠です。消極的な考え方をしていては抜くことは不可能になります。ミスの原因を考えて修正するのは当然ですが、次に意識することを頭でまとめたならば即座に切り替えることです。
この春、控え選手の逆襲が全国で起きていくことでしょう。主力選手はうかうかしていられません。チーム内の競争が激しくなれば結果的にチーム力が上がっていきます。私がチーム指導するときに、控え選手に「主力を追い越すための方法」を教えます。主力には「抜かれないための方法」を教えます。両方にスイッチが入ったときに爆発的に強くなるのです。
控え選手の逆襲・・
控え選手は圧倒的な力を持って、生き残りレースに勝ち残って欲しいと思います。
(文=遠藤友彦)
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