國學院大学【後編】「自律とは日常生活での自分との勝負」

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 東都大学野球を代表する強豪大学・國學院大。その秘密は4年生を主体にしたチーム運営にありました。後編では國學院大が考える「自律」とは何か?に迫っていきます。

鳥山 泰孝監督が掲げる「4年生野球」に迫った前編はこちらから!

「自律」とは日常生活での自分との勝負

久保田 昌也主将(國學院大学)

 小学時代からずっとキャプテンだった久保田 昌也主将は、チームを昨年のチーム以上に“自立したチーム”にするために「自分が先頭に立っていくつもりですし、苦しいことにも自ら飛び込んでいかなければならないと思っています」と意気込む。だがその一方で「高校時代は“根性論”が優先して強い言葉で伝えることもありましたが、大学生は大人なので、どうすれば伝わるか、考えながら話すようにしている」という。

 また久保田主将は「自立」するには、「自律」も必要だと考えている。「人から言われるのではなく、自分の中でルールを作って、それをいかに妥協しないで実行するか。これは自分との勝負だとも思います。たとえば“ゴミが落ちていたら拾う”と決めたら、どんな時も拾う。まあいいか、と見て見ぬ振りをしたら、自分との勝負に負けたことになりますからね」

 久保田主将の母校である、甲子園最多出場回数(72回)を誇る龍谷大平安高では「たとえ野球が上手でも、人間性が伴っていなければレギュラーになれなかった」という。「ですから野球以外の部分が大事だと、高校時代から認識していますし、コンスタントに力を出すためには、日常生活こそがカギになると思っています」

 野球とは直接関係ないことの積み重ねも、試合でのビッグプレーを生む要因になる―。そういえば甲子園30勝監督で、國學院大の一部定着の礎を築いた竹田 利秋総監督はこんなことを言っていた。「一見野球とは関係ないところ、それが野球では一番大切なんですよ」その意識は脈々と現在のチームにも受け継がれている。

[page_break:大学野球を通じて「投資」を「還元」できる人間になる]大学野球を通じて「投資」を「還元」できる人間になる

練習風景(國學院大学)

 大学野球には、高校野球にはないものがある。その1つが「時間」だ。鳥山監督は「高校野球よりも1年数か月多いですからね。自分で気付いて、自分で成長していく時間があるのが大学野球だと思います」と話す。

 その傍ら、大学野球は、親に経済的な負担をかけてしまうところもある。「高校を卒業してすぐに就職したら、仮に年収250万として4年間で1千万円稼げます。しかし大学で野球をしようと思えば、4年間で学費と合わせて1千万かかる。つまり、大学で野球をする、ということは、親御さんに2千万円分の“投資”をしてもらっているわけです」

 だからこそ、半端なことはできない。鳥山監督は節目々々で「君たちは親御さんの仕送りがいかに大変かわかっているのか?君たちの取り組みに2千万の価値があるのか?」と選手たちに問いかけるという。

 金銭的な負担に加え、大学には全国から選りすぐりの選手が集まって来る。特に日本一レベルが高いとも言われる東都リーグでは、レギュラーになるのも、ベンチに入るのも至難の業だ。レベルが高い大学で野球を続けることを躊躇している高校球児も少なくないだろう。しかし「大学で野球をするのは、それなりの高い価値があります」と鳥山監督はキッパリ。

「好きな野球で自分を鍛えてもらえるのですからね。その代わり卒業したら、親御さんの金銭的な投資はもちろん、これまでの指導者からしてもらった(目には見えない)投資を、野球を続けるなら野球人として、社会に出るなら社会人として、世の中に還元していくのが、われわれの使命だと考えています」

「投資」を「還元」できる選手になるため、國學院大では(1)人間的な成長 (2)日本一になること (3)希望進路の獲得、の3つを野球部の大きな柱とし、その3つ全てを獲得するために日々精進している。鳥山監督は「たとえ(2)と(3)は得られても、人間がでたらめだとしたら、大学で野球をした意味が薄れるでしょう。3つのうち1つでも欠けてはいけません」と語る。

 ところで大学で野球をやりたいのなら、高校時代、技術以外で、どんなことを身に付ければいいのか?取材の最後に鳥山監督に訊ねると、こんな答えが返って来た。「高校野球を通して“強い心”を作ってほしいですね。そしてチームのために何かができて、チームから必要とされる人間になる。これが高校でも、大学でも、野球をする上での必須条件になると思います。自立のためにも目標を持ち、1日1日を大切に過ごしていってください」ぜひこの年明けに、まずは自律の第一歩として、一日の目標計画から今月、半年後、一年と長期の目標計画まで立ててみてはいかがでしょうか?

(取材・文=上原 伸一)

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