火山活動が活発化し、一時入山規制が行われた箱根山(神奈川県)。警戒レベルは2015年11月に「1(活火山であることに留意)」へと引き下げられたが、いまでも火山ガスが充満することもあり、大涌谷(おおわくだに)周辺は立ち入りが規制されている。


日本屈指の観光地である箱根。噴火から半年がたち、観光への影響は残っているのだろうか。小田急ロマンスカーに乗って、神奈川県箱根町へ向かった。

「箱根ロープウェイ」は10月に一部再開

ロマンスカー車内には、中国や韓国からの観光客がチラホラ。車窓に富士山が見えると、みな一斉に振り返り、カメラのシャッターを切っていた。箱根湯本、強羅と乗り換え、「箱根ロープウェイ」の始発駅である早雲山駅へと向かう。



早雲山駅では本来、ロープウェーに乗り換えて、芦ノ湖畔へと向かう。しかし、大涌谷周辺への立ち入り規制のため、早雲山駅から大涌谷駅を経由し、姥子(うばこ)駅までの区間は、現在も運休となっている。



改札は閉ざされている

ロープウェーの運休区間には、代行バスが設定されている。大涌谷付近は通らないが、早雲山駅から姥子駅経由で、ロープウェーの終着・桃源台駅まで運行する。姥子〜桃源台間は10月30日に運転再開したが、その区間にも今なお代行バスが設定されている。


「代行バス」と「路線バス」の説明が書かれていた

代行バスに乗るには、ロープウェーの乗車券か、小田急の周遊券「箱根フリーパス」が必要。どちらも持っていなかったため、同じ区間を走る路線バスに乗ることにした。係員いわく「路線バスの方が、断然安いです」。ロープウェー正規運賃だと姥子まで1050円だが、路線バスだと310円。たしかに安い。


安いからにはデメリットもある。路線バスにおける早雲山〜姥子は、ある路線の1区間にすぎないのだ。代行バスは10〜20分間隔なのに対し、路線バスは1時間に2本程度。数十分待ってやってきたのは、小田原からリゾート施設「箱根園」へ向かうバスだった。


バスに乗ると、「箱根園」の広告が目に入る。「感謝!噴火レベル1(平常)箱根園フェア」......大胆なネーミングだ。ほぼ満員のまま10分ほど乗って、姥子バス停に到着する。車内には外国人観光客が6割ほどいたが、アナウンスは日本語のみだったため、アラブ系らしき観光客は「Last stop?(終点じゃないの?)」と困惑していた。


ロープウェーから見えた火山ガス



バス停から5分ほど、道なき道を歩き、ロープウェーの姥子駅へ。ゴンドラが動き出すと、遠くに火山ガスらしきものが見えた。警戒レベルは下がったとはいえ、まだ噴火はおさまらないようだ。


桃源台の駅には、ロープウェーを模した、スタッフたちの寄せ書きボードが置かれていた。「営業再開に向け頑張ります」、「いつでもお客さまを迎える準備は万全です」、そして「今年中に営業できますように」。切なる願いに、目がうるむ。


桃源台からは「箱根海賊船」こと箱根遊覧船で、元箱根港へむかった。駅直結の乗り場へいくと、中国人のツアー客が大挙として押し寄せた。日本人は寒さが苦手なのだろうか、甲板へいくと、彼らツアー客がほとんど。自撮り棒を使って、記念写真を撮っている。日本には海賊がいないはずなのに、船尾には日の丸がはためいていた。


「元箱根には、大涌谷の名物だった『黒たまご』のアンテナショップがある」との情報を仕入れていたが、すでにそれらしき店舗は閉店していた。あわてて調べ直すと、「スポーツ報知」ウェブ版が9月23日時点で、黒たまごの製造元による「現在はすべての営業活動をストップしています」とのコメントを伝えていた。


アンテナショップ跡地と思われる場所

箱根の新名物「三島大吊橋」

港の前にあるセブンイレブン元箱根店では、地場のお土産に加え、箱根駅伝グッズも売られていた。次回(2016年)は92回大会だが、90回や91回のグッズも販売。50%以下のお値打ち価格でワゴンに並んでいた。


そろそろ、帰ろう。JR三島駅へ向かうバスに乗ると、運転手とバス停係員の会話が聞こえた。「きょうは平日なのにたくさん来てたよ。関西からも」「(静岡)県とか三島市とか、なんか(プロモーション活動)やってるのかね?」――ふたりの話題は、12月14日にオープンしたばかりの「三島スカイウォーク(箱根西麗・三島大吊橋)」。全長400メートルで、日本最長の歩行者専用吊り橋だという。



もらったパンフレット

それならばと、箱根峠を越え、スカイウォークへ。ここはオープン直後とあって、外国人観光客は見かけなかった。これからガイドブックに掲載されれば、たちまち大人気スポットになるのだろう。絶景をパシャパシャ撮影したが、「施設内で撮影した写真や映像を許可なく営利目的で使用しないでください」との注意書きがあったので、残念ながら橋の様子は掲載はできない。かわりに、近くの高台から撮った夕日をお届けしよう。


キレイだなあ...

観光地として大きな痛手を負った箱根。しかし外国人観光客を中心に、いまなお人気は衰えないようだ。このまま「爆買い」ならぬ「爆旅(たび)」需要を保ちつつ、一日でも早い規制解除を願いたい。