近畿地区は長田。1995年の阪神大震災を乗り越え、県内屈指の進学校として毎年、多くの生徒を国公立大学に送り出す同校ですが、具体的にどんな取り組みをしているのか、選考状況を振り返りました。

学校紹介ベスト8の原動力となったエース・園田 涼輔投手(長田)

 長田高校は1921年(大正10年)に兵庫県立第三神戸中学校として設立され、1948年(昭和23年)に現在の兵庫県立長田高等学校に校名が改称された。今年度で創立95周年を迎える伝統校である。兵庫県内屈指の進学校として、毎年東京・京都・大阪・神戸大学をはじめとして、総計200名以上の者が国公立大学へ進学する。

 生徒は学業と部活動の両立を目指し、積極的に部活動にも参加しており、兼部も含めると入部率は100%を超える年もある。どのクラブも熱心に活動しており、今年度は陸上競技部・水泳部・山岳部・卓球部が全国大会に出場するなど、好成績を残している。高い水準での文武両道を実践している学校である。

 学校がある神戸市長田区は、阪神・淡路大震災で最も被害が大きかった地域である。震災当時は校舎の一棟が全壊するなど、学校自体も大きな被害を受け、長田高校には約2000人の避難者が訪れた。このように大震災を目の当たりにした経験から、防災教育にも力を入れており、地域防災力の強化と地域に貢献できる人材の育成を目的として、震災から20年目を迎えた今年、7月9日に神戸市初の全校生徒による「震災対応シミュレーション」を実施した。

 また同校音楽部は毎年、東日本大震災で被災した小・中・高等学校の児童、生徒と交流するイベントに参加しており、平成23年5月には代表9名が福島県を訪れ、岩手・宮城・福島の高校生と共に夏の高校野球大会歌を歌うなど、復興支援にも積極的に取り組んでいる。

 長田高校は夜間定時制課程の長田商業高校と通信制課程の青雲高校の2校と同じ敷地内に併設されており、そのためグラウンド等の使用が制限されることも多い。特に通信制課程の青雲高校は日曜日にスクーリングを実施することが多く、年間を通じて日曜日は使用できない日が多い。またグラウンドではサッカー部・陸上競技部・ハンドボール部・野球部の4つのクラブが活動しており、平日のみならず、土日も含めて全面使用できる時間が少ない。

 さらに週に2〜3日は7時限目の授業があり、その日は2時間程度の練習しか行えない。このような施設面や時間的に厳しい条件を克服するために、班別練習や空いているスペースの有効活用など、練習の合理化を図っているが、何よりも練習の質の向上を追求している。その手段としてミーティングの機会を多く持ち、試合の結果を分析し、チーム・個人の課題を明確にし、優先される課題を共通理解することで、課題克服のための練習に対する目的意識を徹底的に高めている。

「日本一伸びた高校球児になろう」を合言葉に努力を積み重ねている長田高校では個々の能力を上げることも重要視しているのだが、チームとして成果を上げるために、適材適所に役割分担を行い、レギュラー以外の選手にも責任ある仕事が任されている。野球部員の多くはクラスで幹事を務め、学校生活や行事等においても中心的な役割を果たし、一般生徒や教員からの信頼も厚い。卒業後は国公立大学を中心に体育会の野球部で活動を続ける者も多く、現在も10名以上が活躍している。

 近年の成績では全国高等学校野球選手権兵庫大会で平成17年、22年、24年にベスト8に入り、平成22年と24年は敢闘賞を受賞している。今秋の兵庫県大会では準々決勝で神港学園に2対3と惜敗したものの、それまでの3試合で1失点とエース園田 涼輔を中心とした堅い守りで接戦を制してきた。過去にさかのぼると、昭和25年に秋季県大会で優勝したが、選抜大会(甲子園)には出場できなかったという悔しい経験を持つ。

 数多くの卒業生や、その保護者や地域の方々の甲子園初出場に対する期待は大きい。復興支援という意味でも、長田高校が交流している被災した県外の方々にも、甲子園でひたむきにプレーする姿を通じて勇気を与えることができると確信している。以上のことから21世紀枠候補校として、まさに最適の学校である。

地区選考状況

 各府県の理事長・専務理事より推薦校について候補決定に至った状況及び推薦理由に関するプレゼンテーションを行った。6府県ともに、「21世紀枠」の理念に基づいた推薦であり、また各校の教育目標を十二分に達成された模範校であるとの認識で一致した。今回は私立2校が推薦されているが、公立・私立の垣根無く選考が行われるべき推薦内容であることを確認して協議に入った。推薦項目の一つ一つについて議論の結果、兵庫県立長田高等学校と滋賀県立長浜高等学校の2校に絞った。

 兵庫県立長田高校について、定時制・通信制高校との併設によるグラウンド使用の困難性、また阪神・淡路大震災より20年が経過し、最も被害の大きかった同地において、地域防災の強化と地域貢献に寄与する人材育成に努め文武両道を達成している点。および投手を中心とした粘り強い試合運びでまさに高校生らしいチームであるという評価にて、最後は満場一致で近畿地区「21世紀枠」候補校として推薦することが決まった。

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