来季大きく変貌へ― 中日、稀に見る大物の引退&退団ラッシュ
急激な世代交代迫られる中日、名球会プレーヤー4選手が同時に現役引退
中日は今オフ、長いプロ野球の歴史でも稀にみる大物の引退ラッシュとなった。山本昌投手、谷繁元信捕手、和田一浩外野手、小笠原道大内野手と名球会プレーヤー4人に4度の2桁勝利を記録した朝倉健太投手が一挙にユニホームを脱ぎ、かつてのエースの川上憲伸投手も退団を表明している。
さらに球団から現時点で自由契約選手として発表されているのは育成の1人を含めた3選手にとどまっているが、この中には2012年に10勝を挙げた山内壮馬投手も含まれている。
ここまで名前を挙げた4投手の通算勝利数は418、3打者の通算安打は6278にも上る。来季、専任となる谷繁監督は、急激な世代交代を迫られる中で新たなチーム作りに取り組むことになる。
改めて、チームを去る主な選手の実績を振り返ってみよう。
◯山本昌(引退)
プロ32年目。通算581試合に登板。219勝165敗5セーブ、防御率3.45。
未勝利で迎えたプロ5年目に米国に野球留学し、代名詞となったスクリューを習得。帰国後から先発ローテに定着した。93年から2年連続最多勝、94年には19勝を挙げて沢村賞を受賞。97年に18勝で3度目の最多勝に輝いた。
その後も長年にわたってチームに貢献し、08年に通算200勝に到達。41歳でのノーヒットノーラン、49歳での勝利など、数々のプロ野球最年長記録を打ち立てた。晩年は故障に苦しんだが、現役最後の登板となった10月7日の広島戦で、プロ野球史上初となる50歳での登板を達成した球界の「レジェンド」。通算219勝は「フォークボールの神様」杉下茂の記録を塗り替え、中日の球団最多勝利数となっている。
現役最終年も高い打撃技術を見せた和田、小笠原は2軍監督に就任
〇谷繁元信(引退)
プロ27年目。通算3021試合出場。打率2割4分、229本塁打、1040打点。
ドラフト1位で入団した大洋(現DeNA)で、高卒1年目から開幕1軍入り。球団38年ぶりの日本一に大きく貢献した98年にはベストナイン、ゴールデングラブ賞に加え、「大魔神」佐々木主浩と最優秀バッテリー賞を受賞した。
02年にFAで中日に移籍し、強肩と強気のリードで球界を代表する捕手として君臨。岩瀬仁紀、川上憲伸、吉見一起らとのバッテリーで常勝時代を支え、4度のリーグ優勝と07年の日本一を導いた。ゴールデングラブ賞6度。13年に捕手史上3人目の通算2000安打を達成。14年に選手兼任監督に就任した。初年度から積み重ねた27年連続本塁打はプロ野球最長記録。今季、野村克也の持っていた3017試合を上回り、通算試合出場数の日本記録を達成した。来季は兼任が外れ、指揮官として3年目のシーズンに挑む。
〇和田一浩(引退)
プロ19年目。通算1968試合出場。打率3割3厘、319本塁打、1081打点。
独特のオープンスタンスの構えから鋭い打球を放ち、05年に打率3割2分2厘で初の首位打者を獲得するなど、西武で主軸を担った。08年にFAで中日に移籍。リーグ優勝した10年には打率3割3分9厘、37本塁打、93打点でMVPに輝いた。ベストナイン6度。
昨季は通算2000安打まで残り15本で故障により離脱したが、今季、史上最年長となる42歳11か月で達成。大学、社会人を経由した選手では史上3人目の快挙だった。8月には落合博満以来のセパ両リーグ1000安打を達成。現役最終年も234打席で打率2割9分8厘を残すなど、高い打撃技術は健在だった。
〇小笠原道大(引退)
プロ19年目。通算1992試合出場。打率3割1分、378本塁打、1169打点。
日本ハム時代の99年に「バントをしない2番打者」として25本塁打を放ち、初めて規定打席に到達。02年から2年連続首位打者に輝き、06年には本塁打、打点の2冠。初のMVPも受賞した。FAで巨人に移籍した07年には史上初の2年連続MVP。両リーグでの受賞は江夏豊以来2人目だった。
巨人ではアレックス・ラミレスとクリーンアップを形成し、リーグ3連覇を牽引。11年には名球会入りも果たしたが、出場機会の激減を受けて14年に2度目のFAで中日に移籍。代打で9打席連続出塁を記録するなど存在感を放った。ベストナイン7度。ゴールデングラブ賞6度。持ち味のフルスイングを貫き、「ガッツ」の愛称で親しまれた。来季からは中日の2軍監督として、後継者の育成に取り組む。
川上は退団、朝倉は引退、来季求められる若手の自覚
〇川上憲伸(退団)
プロ18年目。NPB通算275試合に登板。117勝76敗1セーブ1ホールド、防御率3.24。MLB通算50試合に登板。8勝22敗1セーブ、防御率4.32。
ルーキーイヤーの98年に14勝6敗、防御率2.57を挙げ、巨人・高橋由伸との熾烈な争いを制して新人王を受賞。04年には17勝でMVP、最多勝、沢村賞に輝き、その後もカットボールを武器に4年連続2桁勝利とエースにふさわしい成績を残した。
09年にFAで米大リーグに挑戦。ブレーブスと3年契約を結んだが、右肩の違和感などで通算8勝にとどまった。12年に中日に復帰し、昨季は球団最多となる7度目の開幕投手を務めた。今季は9月に右肩を手術するなど1軍登板なしに終わったが、現役続行への強い意欲を持ち、退団を表明している。
〇朝倉健太(引退)
プロ16年目。通算236試合に登板。65勝70敗1セーブ2ホールド、防御率4.11。
プロ初勝利を挙げた02年に11勝11敗。落合博満監督時代の06年に13勝、07年に12勝とローテーション投手として優勝争いを支え、特に地方球場での登板に強さを発揮。09年には血行障害を克服して4度目の2桁勝利をクリアした。
以降はリリーフでの起用も試されたが、右肘の手術や度重なる故障の影響でかつては150キロ前後を計測していた直球の球威が戻らず、不本意はシーズンが続いた。それでも14年に4年ぶりの復活勝利を挙げた。
〇山内壮馬(戦力外)
プロ8年目。通算56試合に登板。17勝15敗1ホールド、防御率3.02。
11年に降雨コールドによる珍しい形でプロ初完封勝利を記録するなど、3勝をマーク。飛躍のきっかけをつかむと、手元で微妙に変化する独特のボールでゴロの山を築き、翌年には10勝7敗、防御率2.43とキャリアハイの成績を残した。
だが、2勝4敗、防御率5.54だった翌13年以降は不振とけがに見舞われ、今季は1軍登板がなく、自由契約となった。まだ30歳と年齢は若いだけに、低めを突く丁寧な投球スタイルが戻れば、再び数字を残す可能性はある。
長年に渡り、中日のみならず球界を引っ張ってきたベテラン選手たちが退団し、在籍3年間で通算打率3割1分6厘を残しているエクトル・ルナの残留も微妙な状況だ。来季は大きくチームの色が変わることは間違いない。投手では大野雄大、若松駿太、野手では平田良介、亀澤恭平といった、今季一定の成果を収めた若手や中堅の選手には来季以降、チームの柱となる自覚を持つことが求められる。