新国立競技場建築計画見直しにあたって望むこと
建設費高騰が大きな非難を集めている新国立競技場に関して、安倍総理大臣が「ゼロベースで計画を見直す」ことを明言しました。キールアーチと呼ばれる特徴的な構造を残したまま費用を削減するのか、あるいはデザインコンペで選から漏れた別案に変更するのか、多方面から計画の見直しを図っていくのだとか。
現状の建設計画に関してはさまざまな意見があることでしょう。反対の声が大きいということであれば、それをないがしろにできないのは民主主義の国として当たり前のことでもあります。このまま計画を進めても反対の声によって立ち行かなくなる、あるいは強引に推し進めたときに東京五輪そのものへの悪影響を及ぼすということになるならば、みなの賛同を得られる案を模索するのは悪いことではありません。
ただ、計画を見直すにあたって忘れてはいけないことがあります。それは「イイものは高い」、言い換えれば「安物買いの銭失い」という、人間社会のひとつの真理です。現状の新国立競技場計画は、誰かが私腹を肥やすためにこの額になっているわけではありません。必要な機能と、望ましいクオリティをすべて実現しようとしたら、こうなったということ。「とにかくエエやつ」を求めたらお代が掛かったという話です。
天然芝フィールドを備えたスポーツ競技場と、雨天時でも安定してイベントを開催できる全面屋根。その両立はそもそもが相反する要求です。それを実現するために可動式屋根(※現行の計画では膜状の構造のため開閉式遮音装置という扱い)を備え、その屋根を支える構造としてキールアーチという発想があった。まずこの時点で、既存の競技場と同列には評価できない大がかりな計画なのです。
国内最大となる8万人規模の客席、そのうち15000席あまりは可動式となり、用途ごとに座席配置を変更することができる。延床面積は国内最大規模スタジアムである日産スタジアム(約17万平米)をさらに上回る21万平米あまり。どこまで実現できるかは測りかねますが、各座席に空調を備えるという話もあります。デカイ、スゴイ、何でもできる、そうした夢空間として計画を進めたところ、このような高額商品になったのです。
建築家の槇文彦氏が提案した1000億円削減計画も、デザインとしてのキールアーチを止めれば1000億円が浮くという意味ではなく、「全体を屋根で覆う」ことを止めて客席だけを覆い、「8万人規模」を止めて常設6万人規模の会場とすれば1000億が浮くという提案です。これではコンサート・イベントホールとしての用途を十分に満たすことはできません。コンサート・イベントホールの用途に適さないものにしても、総工費が300億円とか500億円の規模にまで減るわけではないのです。
東京都にはすでにJリーグ・FC東京がホームグラウンドとする味の素スタジアムがあります。陸上競技会、サッカーなどのスポーツイベントを開催するには十分な要件を備えた会場です。極端な話、新国立競技場があってもなくてもスポーツイベントは困らない。むしろ問題なのは、世界有数の大都市でありながら8万人から10万人を集めることができる大会場がないことのほう。五輪のためだけではなく、あの絶好の立地を活用していくためにも、屋根ナシの純スポーツスタジアムはあり得ない。その意味で、「屋根をなくして予算を減らす」という提案には賛同しかねます。
もし止めるならば天然芝フィールドのほうでしょう。これを止めれば、屋根はそもそも可動式にする必要もなく、遮音性や空調などの効率も格段に上がります。芝の養生という維持管理の足かせからも解放され、稼働日を増やすことができ、ランニングコストも抑えられます。サッカーやラグビーの用途にはベストではないかもしれませんが、先日なでしこJAPANが準優勝した女子ワールドカップでは全試合が人工芝フィールドで行なわれており、天然芝でなければダメという話はありません(気づかずに観戦していた人もいるでしょう)。
現状の建設計画に関してはさまざまな意見があることでしょう。反対の声が大きいということであれば、それをないがしろにできないのは民主主義の国として当たり前のことでもあります。このまま計画を進めても反対の声によって立ち行かなくなる、あるいは強引に推し進めたときに東京五輪そのものへの悪影響を及ぼすということになるならば、みなの賛同を得られる案を模索するのは悪いことではありません。
天然芝フィールドを備えたスポーツ競技場と、雨天時でも安定してイベントを開催できる全面屋根。その両立はそもそもが相反する要求です。それを実現するために可動式屋根(※現行の計画では膜状の構造のため開閉式遮音装置という扱い)を備え、その屋根を支える構造としてキールアーチという発想があった。まずこの時点で、既存の競技場と同列には評価できない大がかりな計画なのです。
国内最大となる8万人規模の客席、そのうち15000席あまりは可動式となり、用途ごとに座席配置を変更することができる。延床面積は国内最大規模スタジアムである日産スタジアム(約17万平米)をさらに上回る21万平米あまり。どこまで実現できるかは測りかねますが、各座席に空調を備えるという話もあります。デカイ、スゴイ、何でもできる、そうした夢空間として計画を進めたところ、このような高額商品になったのです。
建築家の槇文彦氏が提案した1000億円削減計画も、デザインとしてのキールアーチを止めれば1000億円が浮くという意味ではなく、「全体を屋根で覆う」ことを止めて客席だけを覆い、「8万人規模」を止めて常設6万人規模の会場とすれば1000億が浮くという提案です。これではコンサート・イベントホールとしての用途を十分に満たすことはできません。コンサート・イベントホールの用途に適さないものにしても、総工費が300億円とか500億円の規模にまで減るわけではないのです。
東京都にはすでにJリーグ・FC東京がホームグラウンドとする味の素スタジアムがあります。陸上競技会、サッカーなどのスポーツイベントを開催するには十分な要件を備えた会場です。極端な話、新国立競技場があってもなくてもスポーツイベントは困らない。むしろ問題なのは、世界有数の大都市でありながら8万人から10万人を集めることができる大会場がないことのほう。五輪のためだけではなく、あの絶好の立地を活用していくためにも、屋根ナシの純スポーツスタジアムはあり得ない。その意味で、「屋根をなくして予算を減らす」という提案には賛同しかねます。
もし止めるならば天然芝フィールドのほうでしょう。これを止めれば、屋根はそもそも可動式にする必要もなく、遮音性や空調などの効率も格段に上がります。芝の養生という維持管理の足かせからも解放され、稼働日を増やすことができ、ランニングコストも抑えられます。サッカーやラグビーの用途にはベストではないかもしれませんが、先日なでしこJAPANが準優勝した女子ワールドカップでは全試合が人工芝フィールドで行なわれており、天然芝でなければダメという話はありません(気づかずに観戦していた人もいるでしょう)。