「巨人への道」記念碑をバックにジェッターをパチリ。色はマットナイト(写真)とネイビーブルーの二色から選べます。

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徐々に市民権を得てきた電動アシスト自転車。子育て世帯を中心に街中でママチャリタイプを見かける機会も増えてきました。一方ここ数年でスポーツタイプの電動アシスト自転車がぐぐっと市場を拡大中。筆者もこの春、パナソニック「ジェッター」を購入しました。そこそこ良いお値段(希望小売価格:16万6千円)だけに、選択理由も含めてレビューをしてみます。

筆者と自転車


10年くらい前に入門用のロードバイク(アンカーRA800)を購入し、自宅の調布市から都心まで往復するのに使ってます。ただ、やっぱり辛いんですよ強風が。自転車に乗るのに向いた、風が弱くて湿度の低い日って、そんなにないんですよね。

一方、不摂生が祟って健康診断はいつも基準値スレスレ。自転車もいい加減ガタガタ。整備を依頼したところ、思った以上に修理代がかさみそうだったので、一念発起して電動アシスト自転車の購入に踏み切りました。

電動アシストVS折りたたみ自転車


実は最後まで迷ったのが折りたたみ自転車です。ブログ「サイクルガジェット」を参考にダホンのMU-P8をネットオークションで探していました。

1:安い:スポーツタイプの電動アシスト自転車は10万円オーバー。一方MU-P8は本格的な走りが楽しめる上に売価が8万円程度と割安。

2:置き場所に困らない:最近増えてきたとはいえ、まだまだ少ない駐輪場。折りたたみ式自転車なら目的地で折りたたんで、先方の事務所などに置かせてもらえる。

3:折りたたんで帰れる:仕事で疲れたり、飲み会で酔っ払ったり、パンクしたりしても、サクッと折りたたんで輪行し、電車などで帰れる。

しかしFacebookでコメントを求めたところ、周囲から「電動アシスト自転車にしておけ!」の大合唱。一番多かったのが「絶対折りたたまなくなる」という意見でした。あと「強風の問題が解決できない」という声も。ごもっともです。

中には折りたたみ式の電動アシスト自転車を勧める声もありました。ただし重くて可搬性が低いものが多く、性能的にも中途半端なので、今回はスポーツタイプの電動アシスト自転車を本格的にリサーチすることにしました。もっとも、折りたたみ式自転車も機会があれば購入して、乗り比べてみたいと思います。

PAS Brace XL VS ジェッター


さて、スポーツタイプの電動アシスト自転車といえば、現在ヤマハのPAS Brace XLとパナソニックのジェッターの二強となっており、ネットでも「どちらを購入すべきか」という意見が目立ちます。XLも15万1千円(税抜)となかなかのお値段。両方買うわけにもいかず、かなり悩みました。

最終的に参考になったのがブログ「ヘリコプターを飛ばす」と、そこにリンクされていたwikiです。2011年モデルで更新が中断していますが、さまざまな自転アシスト自転車の長所・短所がよくまとめられています。

ジェッターについては「『 ホイール性能の高さから走行抵抗が少なく、アシストOFF域でも普通のクロスバイク的に使える』のが売りで、発進や坂等の必要な時だけアシストしてもらう、と言うスタイル」とあります。一方XLは坂道に強くパワーが期待できる反面、航続距離は短めという感じ。自宅から都心まで比較的平坦な道が続くため、ジェッターの方が相性は良さそうです。

またジェッターはフレームサイズが440mmと490mmと、大小二種類から選べる点も魅力でした(自分は身長173センチで490mmを選びました。サイズもピッタリで、440mmでなくて良かったと思います)。他にRA800のタイヤがジェッターと同じ700×32cなので、予備チューブなどを共用できるというセコい考えも。この3点が決め手となり、ジェッターに絞って購入店を探しました。

その中でほぼ最安値だったのが、東京・四ッ谷の電動アシスト自転車専門店、東京自転車(http://tokyo-bicycle.net/)です。仕事での移動に使用するつもりだったので、オプションパーツに前カゴと荷台をつけました。いろいろ割引がききましたが、それでもコミコミで合計17万円弱という見積もりにクラクラ。もっとも毎月1万円以上を交通費に費やしているため、順調にいけば2年で元が取れる計算です。清水の舞台から飛び降りるつもりで購入しました。

試乗


注文から納品まで約1週間。RA800に乗って店舗に向かい、受領ついでに廃棄して、そのままジェッターに乗って帰ってきました。

第一印象は、なんだかふわふわしてるなーというものでした。発進時にすーっとアシストしてくれて、ぐいぐい加速してくれます。一方で時速24キロでアシストがなくなり(これは日本の法律のため)、その後は自力で走ることに。もっとも、一度スピードに乗るとそこまでペダルを漕ぐ力は必要としません。

ただし重量が21キロにも及ぶため、なかなか前に転がらない感じです。入門用のRA800と比べても、この違いが顕著に感じられました。結果として外装10段のギアを適時切り替え、アシストの恩恵を受けつつ、必要最小限の体力で、時速20キロ強を保ちながら長時間巡航する・・・という印象です。

もちろん下り坂だとアシスト域を越えて、ずんずん加速していきます。平坦な道でも力を入れて漕げば時速30キロオーバーも余裕です。ただしアシストという媒介物が加わることで、クイックな感じがしないのは否めません。なんとなくスポーティでないというか、マニュアル車とオートマ車の違いというか・・・。

もっとも信号で止まって走り出すとき、最小限の力でトップスピードまで加速できるのは、やっぱり快適でした。また試乗した日は風が少なかったのですが、向かい風の中でも比較的、楽に走行ができそうです。

結局、電動アシスト自転車とスポーツ自転車を比べること自体がナンセンスで、同じ自転車でも両者は違うカテゴリーの乗り物だということがハッキリしました。かたや極限まで自重を軽くして人体の力をダイレクトに伝える。かたや重たい車体をモーターの力でぐいぐいアシストする。通勤・通学に使うなら、前カゴや荷台が使える後者に軍配が上がるでしょう。

ちなみにジェッターではアシストの効き具合をパワーモード・オートマチックモード・エコモード・オフから選べます。四ッ谷から自宅まで13.5キロの道のりをオートマチックモードで走ったところ、バッテリーの消費は10%でした。

仮にこのままのペースを維持すると、充電なしで100キロ以上走れることになります。オートマチックモードの場合、カタログスペックでは平坦な道で59キロ走れると記載がありました。この分だと、かなりの長距離ライドも期待できそうです。

補足〜ヒルクライムに挑戦


XLに比べると坂道に弱いとされたジェッターですが、実際はどうなのでしょうか。自宅からほど近い、よみうりランド(東京都稲毛市)まで往復してみました。

よみうりランドは多摩丘陵の上にあり、最寄り駅の京王よみうりランド駅からゴンドラの「スカイシャトル」でつながっています。つまりそれだけ急斜面なんです。ジャイアンツの練習施設が併設されていることから、「巨人への道」階段(全283段)で昇ることもできますが、大人でもけっこう大変です。

実際、坂道を上りながらアシストを切ると車重がモロにかぶさってきて、時速も7〜8キロにダウン。まるで油の中でペダルを回している感じで、漕いでも漕いでも前に進まず、いつギブアップしてもおかしくないほどでした。

これがアシストをオンにすると、急に後ろからぐいぐい押される感じで、一気に時速15キロ強までアップ。まったく足をつくことなく登り切ることができました。疲労感もほとんどなく、坂道を下って、もう一度別のルートで往復してしまったほどです。ただし、いくら電動アシストといっても、必ず時速24キロまでアシストしてくれるわけではないこともわかりました。

とはいえ、総じてアシストの効き具合には満足できました。これで強風に負けることなく、都心まで移動できそうです。
(小野憲史)

ライター小野憲史による動画でレビュー