30日、2016年夏季五輪大会の国内候補都市に決定、破顔一笑記者会見に臨む石原都知事。(撮影:吉川忠行)

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「ありがとうございました」。東京都の石原慎太郎都知事は、満面の笑顔を浮かべながら選定委員会後に開かれた記者会見場に現れた。上機嫌の知事の口からは、「これから一番大事なのは、国際オリンピック委員会(IOC)で選んでもらうこと」「北京でもロンドンでもできない21世紀型のオリンピックを実現する」と、今後展開される招致レースに向けた意気込みが、笑みとともに次々と語られた。

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 一方の福岡市。この日も選定委員会の開始直前から「福岡・九州オリンピックをよろしくお願いしまーす」と懸命に声を振り絞っていた、数多くの福岡市スタッフの姿がよみがえってくる。「東京優勢」の報道などを受けて、最後の巻き返しを図っていただけに、余計にその落胆ぶりが伝わってくる格好だ。

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 これまで、東京都と福岡市はそれぞれ、4月に立候補意思表明書を、6月に開催概要計画書を日本オリンピック委員会(JOC)に提出。7月には評価委員らによる現地調査などを受け、8月には選定委員会に評価報告書が提出された。

 評価報告書では、東京はコンパクトな会場と選手や観客の輸送能力、福岡は国際大会開催の経験の豊富さなどがそれぞれ評価されたが、東京の交通渋滞、福岡の須崎埠頭(ふとう)の再開発計画の実現性という問題が指摘されていた。

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 国内候補都市が、東京と発表された瞬間、東京の関係者席からは大きな拍手と歓声が上がった。一方、福岡市関係者の席からは一斉にため息がこぼれ、悔し涙を流す福岡市関係者も。しかし、会場では、福岡が東京を相手に“善戦”したことへの賞賛の言葉も聞かれた。

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 「票読みが違っていたな」。現在の心境を尋ねられた石原都知事は、33対22という票差についてこう語り、福岡の“善戦”に本音をこぼした。時間をずらし、会見場に現れた福岡市の山崎広太郎市長は「地方と中央の争いに敗れたことは残念でならない」と疲労困憊(こんぱい)の様子で、ボソボソと語るのみ。応援に駆けつけていた麻生渡福岡県知事も「日本の地方の力を世界に示すことができずに残念」と深い失望感を示した。

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 東京都は今後、開催都市が決定する2009年10月のIOC総会に向け、計画を練り上げていく考えだ。JOCの竹田恆和会長は「JOCも東京と一緒に、開催計画を磨き上げ、世界に通用するレベルに高めていかなければならない」と今後の招致合戦に意欲を見せた。また、石原都知事は福岡について「リアリティーのある計画が必要だったのでは」と述べたものの、「今後は、東京にオリンピックを招致するために、福岡市の知恵もお借りしたい」と協力を要請する余裕も見せた。IOC総会はコペンハーゲンで開かれ、東京オリンピックが実現すれば、1964年以来、アジアで初めて2度目の夏季五輪開催となる。【了】

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