日本の「新幹線」技術が導入された台湾高速鉄道。車両は東海道・山陽新幹線の700系がベース(2014年11月、恵 知仁撮影)。

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アメリカ・カリフォルニア州で高速鉄道が起工されましたが、車両などは未決定。日本の「新幹線」はその受注を目指していますが、世界にはライバルが多数存在しています。ただ日本にはある意味、弱点を逆手にとった大きな武器があります。「地震対策」です。過去にそれが「新幹線」受注に結びついた例もあります。

整いつつある「新幹線」輸出体勢

 2015年1月6日、アメリカのカリフォルニア州で高速鉄道の起工式が行われました。ロサンゼルス〜サンフランシスコ間の約520マイル(約840km)を3時間以内で結ぶ計画で、2029年までの完成が予定されています。

 このカリフォルニア高速鉄道は車両や運行システムの詳細がまだ決定しておらず、世界の高速鉄道先進国によって受注競争が繰り広げられている最中です。

 日本の高速鉄道「新幹線」も、このカリフォルニア高速鉄道の受注を目指しています。国土交通省によると「カリフォルニア州政府は高速鉄道計画を進めるにあたり『新幹線』に大きな関心を有している」といい、2014年9月5日には日本政府とカリフォルニア州とのあいだで環境や投資、鉄道などの分野で協力する覚え書きを交わしました。

 また2014年4月1日には、「Crash Avoidance(衝突回避)」の原則に基づく日本型高速鉄道システム(新幹線)の国際標準化推進を目的にJR東日本とJR東海、JR西日本、JR九州が共同で一般社団法人「国際高速鉄道協会」を設立。川崎重工業や日立製作所、三井物産、三菱商事なども加わり、「新幹線」をオールジャパンで売り込む体勢が整ってきています。2014年10月にはアメリカのほかマレーシアやインドなど高速鉄道計画のある国々の関係者を招き、東京で「高速鉄道国際会議」を開催しました。

 またJR東海の葛西敬之名誉会長は2014年12月、日本とアメリカは経済でも安全保障でも同盟国の間柄であり、「新幹線」の輸出もいずれ実現するという見通しを示しています。

 しかしカリフォルニア高速鉄道では「TGV」のフランス、「ICE」のドイツ、中国や韓国なども受注を目指して活動中。「新幹線」の大きなライバルになっています。

大地震発生直後に起きた台湾での逆転劇

 強力なライバルがひしめくなか、「新幹線」はそれらにはない、かつカリフォルニアで重要な意味を持つ大きな武器を持っているのも事実です。

 台湾の高速鉄道建設にあたり「新幹線」がフランスやドイツなどと受注合戦を展開していた1999(平成11)年9月21日、台湾中部でマグニチュード7.6の大地震が発生しました。そしてこの直後、台湾側から日本に対し地震を中心とした新幹線の防災体制についてセミナーを開いて欲しいとの要望があり、当時はJR東海の社長だった葛西氏らが地震警報システム「ユレダス」など、「新幹線」の充実した地震対策などについて説明しました。

 そして同年12月、欧州連合が有利だとされていた状況を逆転し、日本の「新幹線」に優先交渉権が与えられます。台湾高速鉄道の劉社長はその理由として、システムとしての「新幹線」のメンテナンス性、そして地震などに対する安全性を挙げました。台湾で発生した大地震について、読売新聞中部社会部『海を渡る新幹線』では「この地震が不幸な出来事であったことは間違いない。だが、新幹線を売り込む日本側にとっては思わぬ追い風になった」と述べられています。

 北米プレートと太平洋プレートの境界付近に存在するアメリカのカリフォルニア州は台湾と同様、地震多発地帯です。そして日本も地震多発地帯で、それに悩まされてきました。しかしそれによって「新幹線」は、地震対策技術を磨いてきました。その長年の努力が「地震」という日本の「弱点」を「武器」に変え、カリフォルニア州でも受注の鍵になるかもしれません。