やっぱり生は危険? 魚や肉にいる寄生虫ってどんなの?「肉の寄生虫は怖い」

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食中毒の原因の一つに、寄生虫の存在があります。では、どんな寄生虫が魚や肉などに寄生しているのでしょうか? 国立感染症研究所の寄生動物部・八木田健司先生に話を伺いました。

寄生虫による食中毒が管理され始めたのはつい最近

●―魚や肉など、食品の寄生虫についてお話を伺いたいのですが……。

八木田先生 食品を介して寄生虫が感染することはよく知られています。ですので寄生虫による食中毒は実際に起こりうることなのですが、実際にどれくらいの件数が発生したのかというデータは、実は明らかになっていないのです。

というのも、食中毒の統計ではこれまで「その他」というカテゴリーに入れられており、年間何件あったのか分からないのです。ただ、平成23年から寄生虫による食中毒の認識が変わりまして、少しずつ実例が報告されるようになっています。

●―行政的が管理したのは、最近になってからなのですね。

八木田先生 そういった背景があることを覚えておいていただきたいです。次に、 魚や肉にはどんな寄生虫がいるのか、ということですが、恐らく一番有名なのはサバなどに寄生している「アニサキス」でしょう。アニサキス感染による患者は年間2,000件くらいでているといわれています。

●―アニサキスはよく耳にする名前ですね。他にはどんな寄生虫がいるのでしょうか?

八木田先生 魚ですと、

・裂頭条虫……サケやマスに寄生し、サナダムシとも呼ばれている。
・旋尾線虫……ホタルイカの内臓に寄生する。
・横川吸虫……アユなどの皮の部分にいる。
・肺吸虫……モクズガニやサワガニに寄生。

などがいます。また、近年ではヒラメに寄生する「クドア・セプテンプンクタータ」という寄生虫も問題になっています。

●―刺し身でよく食べるヒラメにもいるのですね!? こうした魚にいる寄生虫による食中毒はどんな症状が出ますか?

八木田先生 これらの寄生虫によるものは、ほとんどが熱や嘔吐、下痢くらいです。めったに死ぬということはありませんが、旋尾線虫は腸閉塞を引き起こすので注意が必要です。対応策としましては、70度以上の熱を加えて調理する、どうしても生で食べたいのならいったん凍らせるといった処置を行うことで寄生虫は死にます。

●―焼き魚などは、寄生虫に対しても理想的な調理法なのですね。

■肉の寄生虫は重篤な症状を引き起こすものも……

●―次は、動物の肉にいる寄生虫について教えてください。

八木田先生 食肉に寄生している寄生虫につきましては、

・旋毛虫……ブタやシカなどに寄生する。日本では主にクマの肉に寄生。
・有鉤条虫……ブタやイノシシなどの筋肉に寄生する。
・無鉤条虫……ブタなどの肝臓部分に寄生する。
・マンソン裂頭条虫……カエルやヘビなどに寄生。
・トキソプラズマ……ブタ肉などに寄生。
・サルコシスティス・フェアリー……ウマの筋肉に寄生。近年になって食中毒の原因と特定。

などが代表的です。食肉の場合も重篤な症状を引き起こす寄生虫がいるので注意が必要です。日本の場合、一般的な食肉は衛生管理が徹底して進められていますので、先進国で処理されているブタやウシは寄生虫学的にはきれいな部類に入ります。

●―安心して食べることのできるよう管理されているのですね。

八木田先生 家畜の場合は管理できるのですが、野生動物の場合はそうはいきません。最近では、捕まえてきたシカやイノシシを育成して食肉にする、「家畜と野生の中間的動物」というのもあるので、気を付けたいところです。

●―食中毒にならないためには、魚と同じように加熱や冷凍が大事になるのでしょうか?

八木田先生 そうです。加熱・冷凍することで寄生虫のタンパク質が変質し、人体に影響がなくなります。

●―ジビエ(野生肉)がはやっていたりする昨今、より気を付けないといけませんね。

八木田先生 生産者も冷凍して出荷するなど頑張っていますが、消費者もどんな寄生虫がいるのか知り、対策することが大事です。

肉や魚にはこうした寄生虫がいる場合があるとのことです。基本的には、どれも加熱や冷凍で影響がなくなるものばかりです。調理の際には、こうしたことを心掛けましょう。また、野菜や果物にも表面に寄生虫がいる場合があります。

国内生産のものは可能性が低いそうですが、輸入ものはしっかりと洗って使うようにしましょう。
(貫井康徳@dcp)