中・韓による日本包囲網がヒートアップしている。
 竹島については、日本が仕掛けた問題ではないとはいえ、日韓が離反し合えば北朝鮮を利するだけだ。この竹島に関しては、実は北朝鮮も領有権を主張し続けている。北朝鮮の出版物や地図にある竹島の記載では、自国領を示す「(朝)」という表記で紹介されているのだ。
 ところで日中間に横たわる尖閣列島問題に関して、中国首脳部の日本に対する発言は、まるで北朝鮮のいつもの恫喝を聞いているかのようだ。次期“首領様”最有力候補である習近平国家副主席は、日本訪問に続き専用機で北京入りしたパネッタ米国防長官と会談し、日本の尖閣列島国有化を“茶番”とののしった。そして長官に対し、「米国は平和と安定の大局から言動を慎み、釣魚島(尖閣列島)の主権問題に介入しないよう希望する」と言ってのけた。

 私は、電車やバスの中で甲高い声を張り上げてしゃべりまくっている漢民族を見ると、北朝鮮を思い出し恐怖心がフラッシュバックしてくるのです。ただ日本に居住している中国人は、朝鮮系中国人が多く、従って出身は東北部、つまり旧満州です。かの地の中心都市は遼寧省大連市ですが、日本の尖閣国有化に抗議する反日デモで、中国全域が沸き立った際にもデモは起きず、日本企業は休業もなし。日本料理店もひらがなの看板をそのまま掲げて堂々と営業していました。
 大連地区はいわば“中国内日本特区”であることが大きな理由です。大連には日本語を話す人も多く、すべての大学に日本語科が開設されているなど中国内の日本語教育の拠点でもあります。この都市のランドマークである大連駅は、上野駅をモデルに建てられたほどで、ソウルにあった旧朝鮮総督府庁舎のように、日帝の象徴だからと撤去されていません。つまり“大東亜共栄圏”という過去の亡霊がはびこっている土地柄です。
 この大連を1990年代に統治していたのが、失脚した薄熙来(はくきらい)元重慶市党書記で、この人は多くの日本企業を誘致し、地元経済を発展させた人物として人気があります。現在中国は、次期主席を決める党大会をいつ開催するかも決まっていないほど、胡錦濤主席派と江沢民前主席派の権力闘争の真っ最中。そうした中で胡錦濤派は、反日デモが薄氏の再評価に転じることを恐れているとの分析もあります。
 さて、日本の領有権が明らかな竹島、尖閣を自国のものだと主張する中韓の態度に関して、日本人は「どうしてあんなに堂々とウソをつけるのだろう」とあきれ返っていますが、たとえばアメリカ人宣教師アーサー・スミスが著した『支那人(漢民族)の性格』の中で、彼は漢民族を「曲解の名人」と呼んでいます。これまで領海への関心があまりなかったのは、「中華思想」「華夷秩序」があるため、もともと優越感が強く、外の世界を知る必要がないと考えていたから「不誠実」という歪んだ性格が形成されてきたと述べています。
 領土というのは、どんなに嘘八百を並べようと「俺のものだ」と声高に叫んだ方が勝ち。対する日本は、錦の御旗である「過去の戦争責任」を持ち出されたら“青菜に塩”、一歩引けば相手は二歩攻めてくるのが世界の道理です。
 これまで日本では「愛国有罪」がまかり通ってきました。「韓国併合は良い部分もあった」などと発言した大臣のクビは飛ばされ、自国のために命を落とした人を祀る靖国神社に首相が参拝できないなんて国は、世界でも例がありません。既に政治が中韓に“実効支配”されているのですから、竹島が戻ってくるはずはないのです。

 尖閣列島に対する中国の視点は次の2つだ。(1)中国は日米安保条約の防衛範囲に釣魚島が含まれるという解釈に断固反対する。(2)中国は米国が当該諸島の帰属に関して米国は関与しないという立場を理解し、この見解を維持することを望む。
 米国は尖閣を防衛するという言明を巧妙に回避しており、さらに列島の帰属については中立だと言っている点を突き、米軍に対し「尖閣に口を出すな」とたしなめているのだ。

 太子党出身の習副主席のお坊ちゃんにありがちな暴言癖はつとに有名ですが、満州事変に言及した際には、「日本の軍国主義は、中華民族に深刻な災難を引き起こしただけでなく、米国を含むアジア太平洋国家に巨大な傷跡を残した」と強調しました。中国は米国といっしょに日本を倒したのだから仲良くやって行けるというわけです。
 北朝鮮の先軍政治が、ことあるごとに日本軍国主義を持ち出すのとまったく同じ構図と背景が、習副主席にはあります。今後10年間は続くであろう習体制とジョンウン(正恩)体制は、日本という敵を威嚇し続けてカネを引っ張り続けていくことでしょう。中朝韓にとって「敵」である日本は格好の標的なのです。
 実は中国の先軍化はすさまじいほどの支配力を持っています。中国ではレアアースなどの希少鉱物は国有資産であり、歴史的な背景から軍部の管轄下にあります。物流、人間両面の税関業務の現在の担当部署は、直接的に軍部ではありませんが、上層部は軍幹部と密接な関係を持っています。だから通関遅延や過去のレアアース禁輸という日本への圧力は、軍部をバックとする連中がやっているのです。このような、北朝鮮と相似形となるであろう中国の出現は、日本と中朝韓の間に横たわる諸問題をより解決不能へと追い込むことになるのです。

 石川昌司(いしかわ・まさし)氏は、1947年2月16日神奈川県川崎市生まれ。父は在日韓国人、母は日本人である。1960年13歳のときに一家で北朝鮮に渡り、その後36年間北朝鮮に居住していた。
 1996年、金正日体制の圧政に耐えかねて北朝鮮からの脱出を決意する。鴨緑江を越えての決死の脱出に成功し、外務省の保護下、密かに日本に帰国した。
 日本人脱北帰国者第1号である石川氏に、北朝鮮の最新情報を聞く!