ロンドンから帰国して一週間経ち、思うこと。
いつの間にか日本にフィットしてしまった。落ち着いた頃合で観戦旅行を振り返るのも乙なもの。写真や動画を整理しながらいろいろ思い出してくる、ロンドンの美しい街並みや大歓声のウェンブリー。
何より悔しかったのは、準決勝でのふがいない戦い。日本からはるばるロンドンへ向かわせたのは、他でもない、新しい歴史を目撃するため。グループ1位突破したらメダルが見えてくる、と自分に言い聞かせ、旅支度をした。
いつもの弾丸ではなく、思い切って5泊7日の旅。8月4日のオールドトラフォードを勝ち抜き、8月7日の準決勝・ウェンブリーでメダル確定の瞬間を見届けて、帰国するはずだった。そんな歓喜のシナリオを思い描いていた。
44年ぶりに歴史が塗り替えられるかもしれない、この先、何十年も語り継がれるであろう歴史的瞬間に立ち会えるかもしれない夢は、残念ながら叶わなかった。スタンドで頭が真っ白になって卒倒するような熱く煮えたぎるゲームを期待したのに、そうはならなかった。試合後、雨のロンドンで繁華街をぼう然と徘徊した足の重さは忘れまい。
帰国して観た3決もしかり。何も出来ずに目の前のメダルを逃す無念さ。かけがえのない財産を手元からこぼしてしまったかのような痛恨の敗戦。
悔しさだけがいつまでも残り、虚無感がぬぐえない。この思い、いつかたどってきた道だよね。2000年シドニー五輪でのアメリカ戦、2002年日韓W杯でのトルコ戦、2006年ドイツW杯でのオーストラリア戦、2010年南アフリカW杯でのパラグアイ戦。
大きな大会の節目節目で何度も苦汁をなめてきたのに、またか、と。
いや、この思いは高みを目指す国にとっては宿命なのかもしれない。勝って歓喜で終われるのは、優勝チームと第3位の2チームだけ。残りは、常に涙をのむ運命にある。
考えてごらん。今や、こんな高いレベルの話をしているよ。かつて80年代は、オリンピック、ワールドカップにギリギリで出場を逃してしまう悩みでもちきりだった。いつの間にか本大会でどう勝ち抜いていくかの話をしているよ。
今回のロンドン五輪では、優勝候補のスペインを破り、金メダルのメキシコには、テストマッチで一度勝ってる。紙一重の力の差に過ぎないとつくづく思うよ。
ただ、自分たちのサッカーを貫くだけのサッカーではトーナメントを勝ち抜いていけないんだ、と思い知らされた。時に、攻撃的にインファイトし、時に、相手の出方を伺いながらアウトボクシングをする。
場面場面に応じた柔軟な戦術が必要なんだね。走って走って一辺倒のサッカーでは、とてもじゃないが勝ちきれない。
急速に忘れ去られてゆく感のあるオリンピックだが、消化して終わり、ハイ次頑張ろうではなく、世間の関心に逆行してもいいから、しつこく、粘っこく、この敗戦の検証を続けてほしい。
この悔しさはずっと消えないだろうし、次の何かで帳消しになるものでもない。だが、間違いなくいいところまで来ている日本サッカー。少しずつ前進している手ごたえはある。自信をもっていこう!
今大会、現地へ勇敢に向かった僕らサポーターたちの経験はかけがえのないもの。間違いなく一生モノ。あの時、ウェンブリーに行ったぜ! は少なくとも10年は自慢できる。勝ち組どころか、見えない金メダルに値する。僕らは、応援の金メダルを獲得したはずだよ。悔しさと引き換えだったけどね。
おわり