テリー その後の生活はどうでしたか。

伊集院 あの時いちばん困ったのはまず暖房、食料、水、そして車なんですよ。全部流されたから。だから被災地に誰か行って後ろに金庫置いて、「20万の中古車を10万で売るから持っていけ」とやればよかったんだけど、しなかったから、20万の車が50万まで上がった。

テリー そうでしたね。

伊集院 ところが、なぜ文句を言わなかったか。それは、1カ月後に3000人の保険屋が入ったからですよ。阪神大震災で保険の払いが悪くて生命保険の加入者が5%も下がったのを教訓として。何が起こったかといったら、40分ぐらい話して、2000万から5000万ぐらいのお金をパッと決めて、10日後には振り込む。だから、お金がなくて困ってますって誰も言ってないでしょう。あまり報道されないけど。

テリー 伊集院さんの家はどうだったんですか。

伊集院 うちも家は半分壊れました。それで保険屋が来て、「何なさってるんですか」って聞いてきて。家の中に仕事場はあるし、かみさんはどこかで見たことがあるなと。査定をしてもらって半壊でした。

テリー 向こうもビビったんじゃないですか(笑)。

伊集院 今、仙台市は景気がよくて、空いてるホテルが1軒もないの。でも、うちの家を直しに来てくれってもう8カ月言ってるのに、儲かるほうから優先的にやるから。

テリー まだ来てないんですか。

伊集院 地震が起きる3日前まで「工事をさせてください」って言ってた人がスーッと引いていった。電話しても担当は出ないし。それはまあ、しょうがないよ。

テリー 震災後、初めて東京に来た時はどんなことを感じましたか。

伊集院 あの時は水がなかったんだ。コンビニから水が消えたとかいって。

テリー みんな買い占めしてね。情けなかったですよ。

伊集院 今はなるべく在庫を少なくするという流通システムだから、すぐなくなったんだけど。昔だったら例えば味噌がなくなるっていっても、味噌屋は「奥さん、うちの蔵に味噌はたくさんあるから買い占めなくて大丈夫ですよ。2日ぐらいで運んできますから、今10日分買ってもしょうがないでしょう」って言えるんだけど。

テリー そうですね。

伊集院 コンビニはアルバイトだから、言われたら売らなきゃいけない。例えばコンビニのアルバイトの子が並んでる人に、「すみません、お客さん。あちらの人は赤ちゃんを抱いているので、あの人に先に2本ぐらいいいですか」って言っても、こっちの老人が「俺だって孫に買うんだ」って言ったら、どうしようもない。

テリー お互い知らない同士ですからね。

伊集院 コミュニティというか、共同体になってないから。東京の 70%以上の人が地方から来てるから話もしない。イギリス人の女の子を殺した若者や、秋葉原で通り魔事件を起こした若者とかは地方出身なんだけど、ほとんど家に帰ってないんだよ。でも、年に2回帰ってたら親はすぐに息子がおかしいとわかるからね。

テリー そうですね。

伊集院 なぜそうなったかといったら、親が怒らないから。「帰って来いって言ってるだろ」って言った時、息子が無視すると、そこで終わっちゃう。しつこく言わないと。我々の頃は息子のほうが大きくなっても、あのお父さんしつこいねってあったんだけど。

テリー 東京でも下町だとそうですよ。