韓国の古里原発1号機が2月9日に全電源喪失事故を起こした際、最後の非常手段とされていた代替交流ディーゼル発電機(AAC)が稼働しなかったことについて、韓国で議論を呼んでいる。韓国のメディアは19日に報じた記事で、「AACは稼働しなかったのか、それとも稼働できなかったのか」と原発の管理体制を批判した。

 報道によると、古里原発には停電などが起きた際に、原発に電力を供給する非常用ディーゼル発電機(A、B)と手動の非常電源であるAACの合計3台の発電機が用意されていた。9日に事故が発生した当時、発電機Aは故障しており、発電機Bも空気供給バルブに異物が入ったため稼働せず、12分間に渡り全電力が喪失する「ブラックアウト」状態に陥った。

 発電機2台が稼働しない「非常中の非常事態」の時に稼働するのがAACだが、事故当時、現場の職員はAACのスイッチさえ入れなかった。古里原発1号機の関係者は、「マニュアルには非常用ディーゼル発電機2台がすべて作動しない場合はAACを使わなければならないとは書いていない」とし、当時はAACを稼働させるよりも外部電源を復旧されることの方が早いと判断したと述べた。

 AACは手動で稼働するため、電力供給まで10分ほど必要となる。職員らは問題を10分以内に解決できると判断し、AACの稼働を見送ったという。

 しかし、韓国メディアは古里原発の対応はとても安易だとする原子力専門家の見解を伝えた上で、「AACも故障していたのではないか」「職員がAACの稼働方法を知らなかったのではないか」という疑惑も浮上していると指摘。AACが故障していたという証拠はないが、安全だったという証拠もないと批判した。

 韓国水力原子力は2011年に福島原発事故が発生したことを受け、「韓国の原発には、日本にはない非常用電源がある」と述べ、AACの存在を誇っていた。韓国の原発専門家は「韓国原発だけの安全装置だと自慢していたAACが無用の長物になった」と発言。韓国メディアは、「日本と比較し自慢したのに…韓国の屈辱」などの見出しで伝えた。(編集担当:新川悠)