森永氏はこの構想をズバッと斬り捨てる。

「東京都のようにしたいだけ。橋下さんが(都知事の)石原慎太郎さんになりたいんです。当初掲げた政策にも、大阪市が事業主体となっていてできなかったことがたくさんあった。大阪市をつぶし、思いどおりの大阪を作るんですよ」

 森氏も同感だ。

「結局、大阪市民が何をしてほしいのかというと、景気をよくしてもらいたいだけ。区割りして区長を公選制にしたら景気がよくなるのか。なるわけがない。関係ないんです。では、橋下氏は何をしたいのかというと、強烈な権限を握り、金も使いたい。まさに石原都知事のように。権力集中です」

 橋下氏が放言して物議を醸した「政治に必要なのは独裁」の実現である。

 どちらかといえば橋下氏にエールを送る立場の川条氏も、これには渋い顔だ。

「独裁というのはおかしい表現のしかただと思います。民意を反映した表現方法をとるべきで、この発言は取り消してもらいたいですね。あと、仮に大阪都構想が実現した際の混乱にどう対処すべきか、危機管理マニュアルは考えておくべきだと思います」

 橋下氏の過激な物言いは、みずから力を入れた教育改革にも飛び火した。成立を狙った教育基本条例案である。教職員を人事評価し、5段階で最低ランクの評価が連続した教職員を免職の対象にする。学校での国歌斉唱時に起立する職務命令に3回違反した場合も同様に、免職とする。3年連続定員割れの府立高校は統廃合─などという内容なのだが、 「教員に相対評価で点数をつけ、低ければ辞めさせる。教員たちが一つのチームを形成し、教職員の輪があって、子供たちを教育できるんです。企業の営業マンのように、各人の成績が歴然とするならいいですが、そういう仕事ではありませんから」

 前出の木村氏はこう言って反対しつつ、この教育改革の行き着く先について、次のように解説するのだ。

「結局、要領がいいといいますか、生徒に対してではなく、自分を評価する人にいい顔をする教員が増える。教員みずからがいい点数を取るためだけの教育になると思うんです。評価する人にはアピールしますから」

 さらに「起立斉唱」についても、

「人の内心の問題にまでズカズカと入り込むのはどうかと思いますね」(木村氏)

 こうした強引な手法をとってきた橋下氏が大阪市長選に出馬するにあたり、森永氏はこう警告した。

「今後は橋下さんが(政治を)やらないほうがいい。危機の時と平時のトップは(求められる資質が)違う。橋下さんは倒産寸前の企業に乗り込んでバサバサやった人。緊急時の必要悪みたいなものであり、完全な独裁主義、市場原理主義ですから」