■ ロンドン五輪出場が決定!!!

ロンドン五輪出場を目指す「なでしこジャパン」は、4試合目で北朝鮮に引き分けたものの、同日の夜に行われた中国とオーストラリアの試合で、中国が0対1で敗れたため、最終戦を待たずにロンドン五輪出場が決定した。日本は4度目の五輪出場で、前回の北京五輪を上回るメダル獲得が目標となる。

予選前は、普通ではあり得ないくらいのタフな日程になっていて、さらに、実力のあるライバルも多いということで、「予選敗退もありうる。」と言われていたが、終わってみると、1試合を残して「2位以内」を確定させた。W杯で盛り上がった女子サッカー界としては、ここで五輪出場を逃すというのは「致命的なダメージ」になりえたので、選手も、スタッフも、一安心と言ったところである。

■ アジア予選のMVPは?

まだ、最終戦の中国との試合を残しているが、過密日程で戦ってきていて、主力を使う必要が無いため、中国との試合はタイ戦と同様に、サブ組がメインになると思われる。タイ戦では、思うようなパフォーマンスが出来ない選手が多かったので、奮起を期待したい。

ということで、これまでの4試合を振り返って、アジア予選のMVPを選ぶとすると、FW川澄を選びたい。初戦のタイ戦は先制ゴール、2戦目の韓国戦は決勝アシスト、3戦目のオーストラリア戦も決勝ゴールを記録しており、4試合で出場して2ゴール1アシストの活躍。守備でも手を抜かず、献身的な動きを繰り返した。

3試合目、4試合目と、試合が進むにつれて「キレ」が落ちていった印象もあるが、攻撃陣では、唯一、4試合連続スタメンを果たした。「もう少し大事に使うべきだったのでは?」という気もするが、今予選では代えの利かない選手だった。W杯では「シンデレラ・ガール」になったが、今回の予選を経て、「なでしこの攻撃の軸」となった。

■ チームを引っ張ったMF澤

次点は、MF澤の名前を挙げたい。キャプテンとして3試合に出場。ゴールやアシストといった目立つシーンはなかったが、献身的なプレーを続けた。

北朝鮮との試合ではマン・マークは付かなかったが、MF澤に対しては、徹底マークしてくるチームも多い。その中で、過剰なマークを受けたときは、上手に試合から消えて味方にフリーのスペースを作るような動きも見せており、消えているようなときでも、チームには貢献している。

また、MF澤というと「攻撃力」に注目が集まるが、今回は、守備での貢献度も非常に高かった。押し込まれる試合も多くなっているが、MF澤の「危機察知能力」に助けられたシーンは数知れず。ドイツW杯のときは、前戦に上がり過ぎてチームバランスを崩すこともあったが、今予選は、しっかりと試合の流れを読んだプレーできており、攻守両面での貢献度を考慮すると、大会のMVPを受賞したW杯に優るとも劣らない活躍である。

■ GK海堀とDF岩清水

ほかに活躍が目立ったのは、GK海堀とDF岩清水の二人である。ともにW杯で自信を得たのか、堂々とプレーしていた。DF岩清水はW杯決勝のアメリカ戦で受けたレッドカードの影響で、初戦のタイとの試合は出場停止だったが、その後はフル出場。危ないシーンでは体を張ったプレーを見せてピンチを防ぐとともに、正確なパスで攻撃でも存在感を示した。

一方のGK海堀は、W杯のGLは不安定だったが、ドイツ戦、スウェーデン戦、アメリカ戦と見違えるような動きを見せた。そのいい流れを維持しており、最初の試合となった韓国戦から、安定したプレーを見せた。GKとしては、それほど大きな選手ではないが、ハイボールの処理は確実で、不安定さは感じられなかった。

DF近賀、DF鮫島という両サイドの二人も、タフな日程の中で奮闘した。DF近賀はタイ戦、韓国戦はうまく攻撃に関与できない時間帯もあったが、オーストラリア戦は好プレーを見せて、北朝鮮もロスタイムのクリアミスを除くと、悪くなかった。

■ 復調してきたFW永里

フォワードの選手では、W杯のときは本来のプレーを見せられずに悔しい思いをしたFW永里もまずまずのプレーを見せた。初戦のタイ戦では、きちんとボールをおさめられなかったが、3戦目のオーストラリア戦では決勝アシスト、4戦目の北朝鮮ではオウンゴールを誘発するプレーを見せてゴールにもからんだ。何度かゴールチャンスがありながらも決められずに、自身のゴールはなかったが、前線でしっかりとボールをキープして攻撃の起点になった。

今回は、FW安藤がコンディション不良ということで、精彩を欠く試合があったが、FW永里は逆にコンディションは良さそうで、相手DFにマークされても体を張ってプレーし、フィジカル勝負では負けていなかった。W杯で対戦した相手と比べると、アジア予選の相手は質も落ちるので、一概に比較はできないが、FW永里が自信を回復して、気持ちよさそうにプレーできるようになっていた。パワーのある選手は貴重なので、FW永里の活躍は、なでしこジャパンにとって、今予選の収穫の1つといえる。

■ 中盤の3人 やや低調

一方、あまり良くなかったのは、MF宮間、MF大野、MF阪口の中盤の3人で、疲労のためか、ミスも多かった。MF宮間のタイ戦のプレーは見事だったが、その後は、ミスが多くなって、完全に消えてしまう試合もあった。「MF宮間のところでチャンスを作ってゴールする。」というのが、なでしこジャパンの形であるが、今回はあまり期待に応えられなかった。

また、フォワードの軸として期待されたFW安藤も、オーストラリア戦、韓国戦では、スタメンの座をFW永里に譲るなど、思うような活躍は見せられなかった。W杯のときも、結局、FW安藤にゴールは生まれなかったが、W杯本大会、五輪のアジア予選と、ゴールに直結しないプレーが多くなっている。FW永里、FW川澄の2トップは、コンビネーションも良くて、いい感じでプレーできているので、ポジション争いを考えると、FW安藤としてはピンチである。