相次ぐスター選手の国外流出 もはやセリエAはカンピオーネの楽園ではなくなった
かつてのセリエAはカルチョ・メルカートの世界で絶対的な支配力を持ち、かつてのイタリアは世界にその名を轟かすカンピオーネたちの楽園そのものだった。
ジダン、クレスポ、トレゼゲ、バティストゥータ、ネドベド、ヴェロン、シメオネ、ロナウド、チュラム、シェフチェンコ…。メルカートでは莫大な金額が飛び交い、そうしてイタリアにやってきたスーパースターたちも皆、セリエAから脱出しようとは考えていなかった。
しかし放映権料のバブルが弾け、カルチョポリが追い打ちをかけると状況は一変する。イタリアのクラブは常にレアル・マドリーやバルセロナ、マンチェスター・ユナイテッドの後塵を拝し、ロマン・アブラモビッチに買収されたチェルシーはメルカートでも覇権を握ろうとしていた。
ドイツのクラブに引き抜かれるカンピオーネたち
セリエA凋落の足音はドイツから聞こえてきた。ドイツ・ワールドカップが終わるとルカ・トーニはバイエルンに、それに続いてバルザーリとザッカルドがヴォルフスブルクへの移籍を決意し、2006年ワールドカップ優勝メンバー3人がイタリアを去った。
確かにイタリアはワールドカップでドイツを下した。しかしフォルクスワーゲンのバックアップを受けているヴォルフスブルクが、ワールドカップ終了後から更に積極的なチーム強化に乗り出したことを考えれば、結果的にはこの勝利がセリエAのレベル低下の引き金になったかもしれないとは何とも皮肉な話である。
2009年にはイブラヒモビッチがバルセロナ、カカがレアル・マドリーに移籍。インテルとミランはそれぞれ莫大な移籍金をスペインのクラブから得たものの、クラブのシンボルと呼べる2人の”国外流出”は、メルカートの王者として君臨していたイタリアにとって「栄光は過去のものである」と痛感する象徴的な出来事だった。
セリエAは晴れ舞台から実験場に
ロナウジーニョに代表されるように、セリエAはピークを過ぎた選手がふらりと立ち寄るリーグに成り下がり、未来のスター選手がセリエAという確かな”実験場”で自らの実力をビッグクラブに披露する場へと変貌していった。
数日前にサンチェスは慣れ親しんだウディネーゼに別れを告げてバルセロナ移籍を決め、クリシートはロシアへ、パストーレはメネズの後を追うようにパリ・サンジェルマンへと去っていった。以前にはアズーリに選出されるアクイラーニまでもがリバプールに移籍している。
憂慮すべきなのはスター選手の国外流出だけはない。イタリアのクラブはアグエロやネイマール、コパ・アメリカで活躍したスアレスの獲得にも失敗しているのだ。
ロシアにも豊富な資金力を持つクラブが
スター選手がイタリアから姿を消した原因は、圧倒的な資金力を持ったアラブやロシア人オーナーのバックアップを受けるクラブが国外に次々と現れたことにもある。それはイングランドのマンチェスター・シティやスペインのマラガのような華やかなリーグのクラブだけではなく、ロシアにも存在する。
スパレッティが監督を務めるゼニト、ロベルト・カルロスを獲得したアンジ・マハチカラは数カ月前にもミランのガットゥーゾに1000万ユーロのオファーを出し、現在はサラテとエトーに対して驚異的な金額で獲得に乗り出すほどロシアの数クラブは潤沢な資金力を持つ。
巨万の富を持つ外国人オーナーたちがクラブに莫大な資金を投じることで、これまで手にしていたメルカートにおけるイタリアの支配力は風前の灯となった。イタリアはこの状況を黙って見ているしか手はないのだろうか？ひとつ確実なのはアラブ人にもロシア人にもイタリアのクラブは眼中に無い。
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